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第8話 志姫、冒険者ギルドで爆破騒動を起こす

本日2度目の投稿です。

「お待たせしました、こちらがギルドカードになります。お受け取り下さい。」


 手渡されたギルドカードは、ユミールと同じブロンズタイプのカードだった。だが、表面には何も文字が浮かんでいない。


「これはどうやって文字を表示したらいいんだろうか?」


「あ、失礼しました。カードに向かって魔力を込めてください。そうすれば貴方専用のギルドカードとして機能します。込める魔力は10程度で十分ですよ。」


「志姫、志姫、ちょいちょい。」


 ユミールが横からつついてくる。くすぐったいではないか。


「ギルドカード作成の時に伝統があってね、初回の魔力を込めるときに思いっきり注ぎ込むんだよ。過去それでブロンズカードでは魔力に耐えきれなくて爆発させて、いきなりCランクから始めた人がいてね。まあ、最終的にその人はSランクまでいってるんだけど。」


「へえ、過去の人の伝説にあやかりたいということかな。受付のお嬢さん、いきなりCランクとか、そんなシステム本当にあるのかい?」


「は、はいっ、一応、ではありますが、ブロンズカードで受けきれない魔力の持ち主であればCランクからのスタートでも問題ないとのことです。」


「そうか、それでは私も挑戦してみよう。」


「ふっ、貴方もこの伝統に参加して伝説の壁の高さを実感するといいわ。」


 まあ、町中だったら危険もないだろうし、使い切る勢いで魔力を注いでみよう。カードに向かって魔力を注いでみるが、銅は魔力の通りが悪いのだろうか、いまいち注ぎ込む速度が遅い。


 魔力切れまで注ごうとしたらあまりにも時間がかかりそうなので、少し気合いを入れてみることにした。すると、カードがぶるぶる震えだし、少しずつ亀裂が入ってきた。ああまずい、カードから光まで漏れ始めてるし、このままだと魔力を注ぎ終わる前にカードが壊れてしまう。


 こうなったら壊れる前に出来るだけ注いでくれるわ! 叩き込むように魔力を注ぐと3秒も持たずにカードが爆発してしまった。破片が私と受付嬢とユミールに襲いかかる。私はHPが大幅に上がったからか全然ダメージは感じないけど。


「ぎゃあああ、目がまぶしい、破片が痛い!」


「痛い痛い、破片がおでこに刺さってます、抜いてください。まぶしくて見えないんです!」


 ぎゃあぎゃあ騒ぎ立てている2人の破片を取り除いてから、小ヒールをかけてやることにした。結局MPは半分も使うことはなかったのでヒールくらいならいくらでも大丈夫だ。とはいえ、ダメージは大したことはなかったのだろう。二人ともLv1小ヒール一回で完治した。


「ああ・・・とんでもない目にあったわ。」


「うむ、私にこんなことをさせた君の自業自得というものだね。」


「うぐっ、まさかこんなことになるとは思わなかったけど、言い返せないわ。んぐぐぐっ」


「そういえば、私はこれでCランクと言うことになるんだろうか?」


 カウンターの向こうで呆然としている受付嬢に話を振ると、はっと我に返り、「しょ、少々お待ち下さい!」といいつつ慌てて奥へと走っていってしまった。途中、こけて何かを倒したのであろう音とかが聞こえてきたが、大丈夫だろうか。


 しばらくすると、眼鏡をかけた長髪を後ろ髪でまとめている青年を連れて戻ってきた。眼鏡・・・そうか、眼鏡があるのか。眼鏡ショタとかもいるのかな・・・・ふふ、ドゥフフフ。


「お待たせしました。ブロンズカードが爆発をしたとのことで、応対を私が代わりに行わせていただきます。あの、どうかなさいましたか?」


「ジーク眼鏡! ジーク眼鏡! ジーク眼鏡!」


「ちょっと志姫、帰ってきなさい!」


 はっ、ユミールからの渾身のパンチで我に返った。しかし、私よりもユミールの方がダメージを受けたようで、手を押さえてもがいている。まったく、落ち着きのない娘だ。また小ヒールをかけてあげた。


「失礼。ギルド入会時の伝統と言われたもので、カードに魔力を注いだら爆発してしまいました。対応をお願いします。」


「そうでしたか。伝統と言うより、カードが扱えきれない魔力保持者の場合、カードに不具合が発生する恐れがありますので上位のカードをお渡しする、と言うのが正しい表現なんですが。」


「なるほど。力だけあっても討伐以外で依頼を受けることがあったときに役に立つかは分からないだろうしね。」


「ご理解いただけてありがとうございます。とはいえ、Lvも相当に高いと思われますので、Dランクスタートの、Cランク昇格試験参加資格保持の状態から開始させていただきます。試験を早速お受けしますか?」


「いや、せっかくだが、おもしろい人材と巡り会えたものでね。しばらくDランクの依頼をこのユミールと受けてみることにするよ。」


 私の言葉にユミールは喜びと恐怖と絶望の顔を次々と浮かべる。ちょっと負の感情を浮かべすぎではないだろうか? さすがに少しばかりへこむのだが。


「そうでしたか。石橋を叩いて渡るのは悪いことではありません、ご自由になさって下さい。ただ、クラスがアコライトとのことですので、ひょっとしたら大規模な討伐依頼等が発生した場合に招集をかけさせていただくことがございますので、その際はよろしくお願いします。」


「了解した。おえらいさんの顔色伺いとかのくだらない用事ではなく、本当の緊急依頼ということであれば参加させてもらうよ。」


「・・・そうですね。あらかじめくぎを差していただいたのはよかったです。言質は取らせていただきましたので、そのような依頼はこちらが受け付ける段階で拒否させていただきます。」


「懇切丁寧な対応に感謝する。貴方の対応は素晴らしかったのでこちらも出来るだけ便宜を図らせてもらうことにする。」


「ありがとうございます。では、シルバーカードを発行しますのでもうしばらくお待ち下さい。」


 そう言って職員の青年は奥に下がってしまった。素晴らしい対応だった。あの中指で眼鏡をくいっくいっと上げる姿。いや、本当に素晴らしい。


 しばらくしてシルバーカードの発行手続きが今度は滞りなく済んだ。カードに情報を表示させようとしたところで、全部はまずそうなのでステータスやスキル、位階の部分を非表示にして置いた。



名前:志姫

種族:人族

クラス:アコライト

宗派:ヴィエル

所属クラン:無し

冒険者ギルド発行:ランクD(Cランク昇格試験参加資格取得済み)


アピールポイント:我は全ての愛を肯定するものなり。悩み相談、いつでもお受けする。



「おや? クラスの表示がおかしいですね。」


 受付の青年がカード情報を拝見してそんなことを言い出した。


「何かおかしいところがあるのかい? ちゃんとアコライトと表示されているようだが。」


「いえ、確か通常ですと、宗派名のアコライトと表示されるはず何ですが。この場合、ヴィエル教アコライトと表示されるはずなんですよね。」


「そうなのか。まあ、宗派欄にヴィエルとちゃんと表示されているから問題ないであろう。もし不具合が出たらその際はまた相談させていただくよ。」


「そうですね、現状特に問題はないようですし、気にされないのでしたらそれでお願いします。」


 ゲームの時は宗派なんてなかったから、表示はアコライトで問題ないはずだ。ということは、この時代の聖職者というものは私のとは違うかもしれないな。


 受付の青年にお礼を言った後で、ユミールを伴って今度は依頼完了報告のカウンターに向かう。この時間は空いているようで、今度は並ばずに済んだ。今度は学生ではないようだ。依頼関連はトラブルも多そうだし、クレーム対策とかかな。


「失礼。依頼完了の報告を行いたいんだが、ちょっとごたごたがあってね。」


「はい、どのような内容でしょうか?」


「こちらのユミール=ディ=パリィがシルバーウルフの討伐依頼を受けてね。その時点ではまだギルド未登録であった私と共闘をすることになって討伐を行ったんだが、どう処理したらいいだろう?」


 実際には私が一人で倒してしまってるのだが、あらかじめ二人で話して、共闘と言うことにしてその見返りにこの街のことをいろいろと教えてもらうと約束を済ませていた。


「現在はもう登録は済ませてあるのですよね? それでしたらパーティでの討伐と言うことで処理させていただきます。討伐証明はユミールさんのカードに表示されていますか?」


「いや、とどめは私が刺しているので、死体はそのまま持ってきてるんだ。彼女も私も討伐証明部位がわからなかったのでね。」


 そういいつつ、シルバーウルフを腰に差している袋からにゅっと取り出す。相変わらず不気味な光景だな。


「アイテム袋をお持ちでしたか。・・・これは確かにシルバーウルフですね。表面に傷もなく、状態もいいです。素材買い取りカウンターにお持ちいただければ買い取りさせていただきます。」


「了解した。それでは、完了の手続きをお願いする。」


「分かりました。それではお二人とも、カードの提出をお願いします。」


 ギルドカードを渡し、依頼完了の手続きを済ませた。その後素材買い取りカウンターでシルバーウルフを売却した。状態が良かったからか結構高値で売れ、討伐依頼達成分も会わせたら金貨2枚と銀貨40枚で売れた。


 ユミールと折半しようとしたがさすがに遠慮されたので、金貨1枚を彼女に渡した。それでも遠慮していたようだが、私が獲物を横取りしたような形だし、これくらいは問題ない。これでこの建物での用事も終わったことだし、後は出るだけなのだが。


「おいねえちゃん、あんたアコライトなんだってな。しかも有能そうな。どうだい、俺たちとパーティー組まないか?」


「お断りする。私はこのユミールと組んでいるんだ。」


冒険者というものは、新人だとやっぱり絡まれるものなんだろうか。




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