02 部員より部活ですよ
「部員、ですか」
うーん、とかざりは考えてみせる。
言われてみればこの部活、部員が少ない。
自分・夏目かざりと、と親友・雨宮那智の二人だけだ。
那智に至ってはただ所属しているだけで、ちゃんと活動しているのはかざりのみ。
「でも勧誘なら春にしましたし。そして来なかったのでもう仕方がないかと」
「そうだけどさぁ…」
その時。
コンコン、と部室の扉がノックされる。
かざりが扉を開けると、2人の女子生徒が立っていた。
「何の御用でしょうか?」
そう微笑みなら尋ねると、女子生徒は少し恥ずかしそうに言う。
「えっと…今月の新聞も、面白かったですっ。
それで…あのですね…来月の新聞に、取り上げてほしい人がいるんですけどっ…」
「取り上げてほしい人、ですか?」
かざりの顔がパアッと輝く。
こうして記事のことでリクエストをくれるのは、これが初めてだったからだ。
「とりあえず、どうぞ中へ!」
女子生徒2人を部室内へと促す。
かざりは那智の隣に座り、2人と向かい合うようになった。
そそくさとスカートのポケットからシャーペンとメモ帳を取り出す。
「えーと、じゃあ名前から教えてもらえますか!」
「よろしくお願いしますっ…!」
軽く頭を下げて、2人は部室を後にして行った。
再び2人になった部室で、かざりはメモを見返す。
「名前、黒羽棗。性別、男。
学年、高等部2年。身長、推定180くらい。
容姿、黒髪イケメン。所属部活、無し。その他……、不良」
「不良サンか。インタビュー頑張ってね、ナツメ同士」
「あっ本当。名前一緒ですね、私と黒羽さん。名前と名字だけど」
「気付いてなかったの。ワロス」
そう言うわりには無表情の那智を他所に、かざりはまたもや考え込んだ。今度は真剣な様子で。
「先輩で男で不良……取材しようにもなんか近づくことすら出来なくないですか、これ」
「下手すればヤバいことになるかもね、かざり」
「ヤバいこと…!?ってどんなことですか!?」
「女でも平気で殴れるような奴だったら怪我する可能性がある。
あとその黒羽くんってイケメンなんでしょ、近づいただけでファンの女子から嫉妬をされる。女子の嫉妬は本当に恐ろしい。何をされるか分からない」
ま、彼女がいるならまた別だし。ファンがいるかも知らないし。
…と付け足して、かざりを見やると。
「……」
かざりは放心していた。
想像してしまって怖くなったのだろう。
慌てて那智はフォローする。
「大丈夫だよ、かざりは先輩後輩関係なしに仲良いじゃん!嫉妬とかはされないよ」
「ええ…そうですね…。それは心配しないようにします。でも実を言うと男の先輩後輩とはあまり…」
「そうだったの」
「はい。霜月新聞を読んでくれてることは読んでくれてると思うんですけど」
会話はあまりしないんですよね。
かざりはそう言った。