01 人気の霜月新聞です
私立霜月学園。
サッカー、野球、バスケ、
軽音楽、美術、書道などの多彩な部活がある中、
意外にも“新聞部”が妙な人気を誇っていた。
人気といっても、入部希望者数が多かったわけではない。
むしろゼロだった。
ならば何故人気と言えるのか。
正解は、その部特有のあるモノにあった。
「はーい皆さんご覧あれ! 今月の霜月新聞ご覧あれ~!」
昼休み。廊下のど真ん中を歩きながら、A2サイズの紙――霜月新聞――をばら撒く。
決してその新聞は床に落ちることなく、生徒の手によって捕らえられる。
むしろ取り合いになるくらいだ。
そこまでして読もうとする理由は、簡単にいうと“本当に面白い”からである。
学園の人気教師の大スクープや、
生徒同士は勿論教師同士の恋愛事情まで赤裸々に書かれるのが特徴の新聞なので、
そういったものが大好きな生徒はいち早く読もうとして必死になるわけだ。
そんな絶大な人気を誇る霜月新聞の記者は、夏目かざり。
霜月学園高等部1年だ。
「夏目先輩、今回の記事もすっごく面白いですね!」
「ありがとうございますっ」
「あっ、かざりちゃ~ん。今月号ちょうだい」
「先輩! どうぞどうぞ!」
先輩後輩関係無しに慣れ合える彼女は、かなりの情報屋だ。
学園のことで彼女が知らないことはないとも言われている。あくまでも噂だが。
放課後。
生徒が部活動に励むこの時間は、かざりも新聞部の部室で活動をする。
大人気の新聞部。
大人気、なのだが。
「…ふう、今月号配布終了しましたね。お疲れ様です」
「配布はかざり一人でやってたけどね。乙。
やっぱ人気だねーかざりの霜月新聞。…人気なのはいいんだけどさあ」
「部員、もうちょっと増えない?」
部員は夏目かざりとその親友しかいなかった。