表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/27

第4話『観測領域の壁』

その扉の向こうにあった空気は、別物だった。静かではない。重い。音が吸い込まれているような感覚。(ここが……上位領域)久瀬灯真は一歩踏み出す。その瞬間、視界の“流れ”が乱れた。(見えない……?)いや違う。“情報が多すぎる”。


「入るな」


低い声。目の前にいた男は、評価値78とは違う“階層の人間”だった。だが灯真の視界では輪郭が安定しない。(流れが崩れている)


男が一歩踏み出す。その瞬間――視界が飛ぶ。「ぐっ……!」反応できなかったのではない。“認識した時には終わっていた”。床に膝が落ちる。


「今のが上位領域だ」


男は淡々と言う。「お前が見ていた流れは下位の世界の法則だ。ここでは意味が違う」灯真は息を整える。(違う……何が違う)


視界に何かが浮かぶ。だがそれはいつもの“線”ではない。ぼやけている。揺れている。(これが……上位の流れ?)【認識不能領域】【未定義の才能】(解析できない)


その時だった。「やめてください」声。空気が一瞬だけ戻る。天道澪。評価値998。彼女は男の前に立つ。


「ここは観測試験区画ではありません」静かな声。その一言で空気が変わる。男が舌打ちする。「……邪魔か」澪は動かない。だが灯真は気づく。(この女……強い)流れが安定している。つまり見える側の人間だ。


澪は灯真に視線を向ける。「あなたはまだ流れの種類を知らない」一拍置く。「観測できるものは二種類ある。奪える流れと、奪えない流れ」


(奪えない?)


男が言う。「ここから上は継承対象外も出てくる。つまりお前の能力は万能じゃない」その言葉が重い。(万能じゃない)初めての制限。


澪が一歩下がる。「今は引いてください」だが灯真は動かない。視界の中に、わずかに“見えるもの”がある。(まだある)さっきまで見えなかった流れ。ほんの一部。(取れる……?)


一瞬の衝動。だが男の気配が強くなる。「やる気か?」灯真は気づく。ここで奪えば危険だ。だが同時に理解する。(今しか見えない)初めての矛盾。


澪が小さく言う。「まだ早い」その言葉で、灯真は一歩下がる。


男は興味を失ったように背を向ける。「次は試験で会う」そう言い残して去る。空気が戻る。だが重さは残ったまま。


澪が灯真を見る。「今のは序列上位ではない」「管理側です」


灯真は拳を握る。(管理側……?)


視界の奥で、また“流れ”が揺れる。今度はさっきより深く、さっきより危険に。そして初めて気づく。(まだ見えてない世界がある)

読んでいただきありがとうございます。

感想・評価励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ