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① 天使降臨

この宇宙や大自然の頂点の意識は地球人にとってどうなのかを天使が語る

 青空が広がっていた。校舎内のじめじめした環境を抜け出して誰もいない屋上で昼の弁当を食べる。

 真夏の暑いこの時期、昼休みとはいえ好んで屋上で昼をとろうなどという者はいない。それでも少しは風が吹く時には涼しさを感じるし風通しは良いから気持ちがいい。


 高校3年生になった長嶋美月はここしばらく平和な日々を送っている。年上のいじめっ子たちはもう卒業をしていなくなった。

 入学をした時は女子校だから、いじめっこがいてもさほど大したことはないだろうと思っていたが、女子校ならではの陰湿なものがあり、従わなければ数人で暴力に変貌をしていた。


 前の3年生から受け継いだオカルト部の部長にもなった。部活動といってもまだ部員が3人くらいのオカルト研究会のようなものだが。

 部員3人は怖いものが好きだが、美月は怖いものというよりも天界の不思議なことに興味がある。特に美月が強く信じているのが天使という存在だ。守護天使とかは大好きな響きだ。美しい白い羽を背中で広げ優しい微笑みで人々を愛して守ってくれる天使様。

 そんな天使に一度でいいから会ってみたいと思っている。

 そして、その夢が突然叶った。


 空から突然大きな光がゆっくり降りてきた。

 やがてそれの光は人型になり大きな翼を広げたように見えた。


 何と美しいのか!美月はその輝かしい姿を目に焼き付けんばかりに瞼を全開にして見ようとしたが、眩しさが勝って目を細めてしまった。

 空中にその完全なる姿が現れた。


 すべてが白い。白い羽衣のような薄いドレスが風になびいていた。そして顔は白い肌?いや、まるで白金のお面をつけたような顔だがその美しさがわかる。時折見えるその素足はまるで長身のモデルのように長くこれもまた美しかった。


 そしてその天使が学校の屋上に降り立った。

 ハッと、走り寄ろうとした美月はピタリと足を止めた。

 その天使が女子高生の姿に変化をした。

 これもまた長く美しい足のモデル体型のようだ。

 そして同じ学校の制服を来ているボブヘアの美少女。


 エルム沢井。違うクラスだが、どこかの海外とのハーフらしいがその美しさでとにかく目立つ同級生だ。

 そしてクールな子だった。笑ったところを見たことがない。

 エルムが美月の方をチラリと見て立ち去ろうとした。

 美月はこのまま行かせていいか、考えあぐねて一瞬で答えが出た。行かせていいわけがない。

 美月はエルムの名前を呼んだ。

「沢井さん!」


 エルム沢井が立ち止まり、美月はそこに走り込むようにその前に立った。

「私、今のこと見てしまったの!このまま行っちゃって大丈夫なの?」

 エルム沢井の目は澄み切っている。まるで、そこに広がる青空のようだ。

「別にかまわないけど、それがどうかしたの?」

 何と言う淡白な物言いだろう。やはりここは敬服をするしかない。

 美月は片膝をついて祈るように手を組んでエルムを見上げた。


「まさか、あなたが天使さまだったとは思いもしませんでした。お会いしたかったです、天使さま」

「言ってる意味がわからないのだけど」

 あんな光景をまざまざと見せつけてそんなウソをつくのか。それはそうだ。他人に自分が天使だなんて知られてはいけないのだろう。

「どうして、私の前でお姿を現したのですか?」

 エルムはちょっと考える仕草をした。

「さあ、どうしてかしら」

 そして、間をおいてからようやく理解したように頷いた。


「ああ、もしかするとあなたなのか…。」

 え?何か天使さまに選ばれた感じ?

「わかりました。すべてを話します。でも、今は無理」

「いつならいいですか?エルムさま」

「今夜、あなたの家で待っていて」

 エルムさまが私の部屋に来る!天使さまが我が家に…。これで我が家も幸せハッピーだ、と心の中でバンザイをしていた。


「ところで、どうして膝をついてるの?」

 エルムに言われて、咄嗟に無意識にしてしまった敬愛のポーズを美月は解いた。すると、エルムは何事も無かったように屋上を去って行った。

 それと入れ替わるように、ざわざわと他の生徒たちが屋上に来た。


 夜、家で夕食を摂っている美月は気が気ではなかった。エルムさまは何時頃に来るのだろうか。そういえば不思議なもので、屋上であんな奇跡のような光景を見たにも関わらず、それから帰宅するまでクラスメイトにもオカルト部のみんなとも顔を合わせてるときには、そのことはすっぽり抜け落ちたように忘れていた。覚えていたらきっとこんなすごいことがあった、としゃべっていただろう。もしかして、これが天使さまの力なのだろうか。

 だが、今はあのことを覚えている。帰りの遅い父親は別として目の前にいる母親と中2の妹が夕飯を食べているのに、なぜかあのことについて話す気がまったく起こらないのも不思議だ。


 エルムは天使さまだ。きっと私が自分の部屋の中にいるときに神々しく現れるのかもしれない。それなら、ここは早くご飯を食べ終えて部屋に戻ろう。

 やっとご飯を食べ終えて「ごちそうさま」と立ちあがった、その時だった。


 家のインターホンが鳴った。

 母親が「今頃だろうだろう?」と言いながら玄関に向った。

 美月は「まさか…?」とは思ったがそのまさかが当たった。

 天使様が家の玄関から来る?普通に…?

 母親の後ろについて行くと、そこには制服のエルム沢井が立っていた。


 エルム沢井は美月の母親に「一緒に勉強をする約束をしていたので来ました」と言って、美月の部屋まで上がり込んだ。

 美月の部屋で、ドアを閉めて2人になりやや緊張をした。

 エルムをじっと見つめ続ける美月。

「何をそんなに見てるの?」

「あ、いや…。天使の姿にならないのかなと思って

…。」 


 このエルム沢井も女子高生としても申し分ないくらい美しいのだが、やはりあの光り輝く天使の姿をもう一度見てみたいと美月は待っている。

「こんな狭い部屋のこの距離であれになったら、あなたの目は潰れるわよ」

 確かにそうかもしれない。あの屋上でさえあの目映い光は眩しくて目を細めていたくらいだ。

「ところで、昼間すべて話すと言っていたけど、それって…?」

「座って」

 美月の部屋でエルムが主導権を握ったのは間違いがなかった。




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