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『龍霊雨器 ― 脅迫から始まる両片想いの後宮事件録 ―』 〜女装して後宮に潜入したら、正体を見抜いた俺様文官(次期皇帝候補)に囲われました〜  作者: 麻倉ロゼ
第一章 「嘘と脅迫から始まる俺様文官との最悪で最低な始まり」

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第七話 「補佐官の癖、ちょっと強すぎ問題」

ご覧いただきありがとうございます。


本作は

「中華風後宮ファンタジー」

「年上攻め×主人公受け」

を詰め込んだBL作品です。


シリアスになりすぎず、基本はコメディ寄りで進みます。

どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。

朝、離れの厨房には、海鮮粥のいい香りが漂っていた。

オレは鼻歌まじりに、まな板の上でネギを刻む。


そのとき――コンコン、と扉を叩く音がした。


玄曜げんようはまだ二階で寝てるし……誰だ?)


「はーい!今、開けます!」


ガチャリ、と扉を開けた瞬間。

そこに立っていたのは、玄曜と同じ黒服の衣を着た――文官だった。


突然の来客に、オレも相手も同時に目を丸くする。


「ど……」


どちら様ですか?

そう口を開きかけた、その瞬間――


「玄曜様の!!彼女ですかっ!!!!?」


あまりの大声に、庭の鳥たちが一斉に飛び立った。

オレの耳がキーンとなり、思わず目をつぶる。


「かっ!? 彼女!? ち、違いますっ!」


慌てて否定しようとするが、


「この慎言しんげん!玄曜様の世話を押し付けられ!いえ、任され早十三年!!

ついに!ついに玄曜様に!!彼女が!!!!」


玄関先で歓喜の声を上げたかと思うと、

そのまま膝から崩れ落ち、感極まった様子で泣き始めた。


「え……? え? えぇ……?」


な、なんだこの騒がしい人……。


オレ、彼女じゃないんですけど……。

どう返せばいいのかわからず、ひとり固まっていると――


「朝からうるせぇ」


低く不機嫌な声が背後から落ちてきた。


振り向くと、二階から降りてきた玄曜が、眠そうな目で立っている。

完全に寝起き。機嫌も最悪だ。


「こいつは倉庫係の、新しい下女だ」


一言で切り捨てるように言う玄曜。


(あ、この人の前では素なんだ……)


「こいつは慎言。オレの補佐官だ」


顎でクイッと示され、オレは改めて文官を見る。

……なんだか、すごく苦労してそうな顔だ。

慎言は玄曜を見て、胃のあたりをさすっていた。


「あの……とりあえず、中に入ります?

お茶、入れますので」


なぜか居候のオレが気を使い、そう声をかけていた。

 

 

周慎言しゅうしんげんと申します。」

食卓を囲み、慎言が名乗る。普通にしていれば、爽やかな

お兄さんといった雰囲気だ。顔も悪くない。


一応、下女の名前を名乗っておくか……。

白星鈴はくせいりんです」オレはニコリと笑った。


玄曜は我関せずとばかりに、朝ご飯のお粥を黙々と平らげる。

あっという間に腕は空になった。


「ん」


「ちゃんとおかわりくださいって言ってください」

「…おかわり」ぶっきらぼうに返す玄曜。


おお!? 「バラすぞ」と言わない!

玄曜はギロリと目で何かを訴えている。


(あ、この人にはオレが男だって、秘密にしておいたほうがいいんだな)

オレは小さく頷き、粥のおかわりをそっと渡す。


「玄曜様。お味はどうです? 美味しいですか?」

オレは星鈴を演じながら聞いた。


「普通」

玄曜は淡々と食べ続ける。


「はあ…」慎言はそのやり取りを信じられないという顔で、

二人を見つめていた。


「あの……星鈴さんが食事の準備まで?」


「一昨日からこの離れにお邪魔していますので……」


「ええ!!? 星鈴さんがここに!? 住み込みで!?」

慎言は茶杯を握りしめ、まるで粉砕しそうな勢いで叫ぶ。


あああ……熱々のお茶が揺れてる!こぼれる!火傷しちゃう!

オレは思わず手を止め、ハラハラと見守る。


「星鈴さんが、玄曜様のお世話をされていると……!

そうですか! それはそれは! ははは……うぅっ」

慎言は手で顔を覆い、また泣き出してしまった。

この人……情緒、大丈夫だろうか……。


「いやぁ。玄曜様は大変気難しいお方で、日頃から胃を

痛めておりましたが……これで少しは回復しそうです」

安堵の表情を浮かべ、慎言は袖から薬の包みを取り出して飲み干す。


なんだろう、あれ。胃薬?

 

(確かに、玄曜の補佐官なんて絶対気苦労ばかりだろうな

……可哀想に)

オレはそう想像して、思わず同情してしまった。


玄曜は食べ終わり、食後のお茶をすっかり楽しんでいる。


「さあさあ、玄曜様。えーと……その……そろそろ、

定期会議のお時間ですよ」

慎言は言いにくそうに告げる。


「ちっ!」

大袈裟に舌打ちする玄曜。あからさまに不機嫌だ。


「定期会議?」

文官の会議かな……。オレは小さく呟く。


「月に一度あるのです」慎言がこそっと教える。


「はあ……」

玄曜は嫌々とため息をつく。文官の仕事も、大変そうだな。


「玄曜様」

オレはそっと声をかける。


「お仕事、頑張ってください。大切な会議なのでしょう?」


慎言は目をまん丸にしてオレを見つめていた。


「今日の夜は、玄曜様の好きなものをお作りして

お待ちしておりますから」

ニコリと笑うオレ。オレはなんて、いい下女なんだろう!


「……ふん」

玄曜は不機嫌そうなまま立ち上がり、衣を整えて扉へ歩き出す。


その様子を、慎言はポカンと口を開けて見送った。


「夜は海老の蒸し餃子、作っとけ」

ぶっきらぼうに命じると、乱暴に扉を開けてスタスタと

歩いていく玄曜。


「〜〜〜! 星鈴さんっ!! ありがとうございます! このご恩は必ず!!」

慎言は大袈裟に手を振り、足早に玄曜の後を追った。


玄曜といい、慎言さんといい……。

「癖が強い人たちだなぁ……」

オレは小さく呟いた。



「いやはや! 随分と気に入られているようで!」

玄曜に追いついた慎言が、ご機嫌に声を上げる。


「倉庫の問題児ともうまくやっているみたいですよ。」

玄曜は文官モードで淡々と返す。


「それは、それは! 素晴らしい!」

慎言はますますご機嫌になり、話を続ける。


「食事もさぞかし美味しいのでしょうね。

貴方様が“普通”と言われるとは……」


「……慎言。星鈴さんが離れにいることは、他の親族には

絶対に言わないでくださいよ」

玄曜は穏やかな表情を崩さずに釘を刺す。


「わかっておりますとも。しかし、あまり気を許してはいけませんよ。」

慎言は目を細め、真剣に答える。


「貴方様は末端とはいえ、次期皇帝候補のお一人なのですから。」


風が玄曜の髪と髪飾りを揺らす。


「…そうですね。気をつけます。」

玄曜は文官モードでニコリと穏やかに笑ったが、

その目は笑っていなかった。

※作者より

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

後宮での生活は、まだまだ続きます。

引き続き、気軽にお付き合いいただけたら嬉しいです。

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