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『龍霊雨器 ― 脅迫から始まる両片想いの後宮事件録 ―』 〜女装して後宮に潜入したら、正体を見抜いた俺様文官(次期皇帝候補)に囲われました〜  作者: 麻倉ロゼ
第三章 「これは恋じゃないと、思っていた」

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第十話 「運命の双六」

ご覧いただきありがとうございます。


本作は

「中華風後宮ファンタジー」

「年上攻め×主人公受け」

を詰め込んだBL作品です。


シリアスになりすぎず、基本はコメディ寄りで進みます。

どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。

最初は、宝石や金、土地や財産だった。

それが地位や名誉になり、最後には人間になった。


“ははは!!

今度の相手は、随分と若いな!!”


部屋中に、機嫌のいい笑い声が響き渡る。

太く、ずっしりと重い声。

空気そのものを震わせるような威圧感があった。


オレは玄曜と並んで部屋に足を踏み入れる。

中では、宦官かんがんたちが壁際に整然と並んでいた。


(……宦官?

なんでこんなにいるんだ……?)


妙に張り詰めた空気。

喉の奥が、ひりつく。


(何が始まるんだ……)


部屋の中央には、漆塗りの双六盤が堂々と据えられていた。

派手で、異様な存在感。


(……あれか)


間違いない。

声の主は――龍霊雨器りゅうれいうきだ。


選命定運賽盤せんめいじょううんさいばん……

命賽めいさい殿、ですね」


玄曜が、静かな声でそう告げる。


“そうだ!!お前様は?”


「玄曜と申します」


“玄曜!!良い!良い名だ!!”


命賽めいさいと呼ばれた龍霊雨器が、楽しそうに笑う。


“オレはな! 双六だ!

ヒトはオレを《命運双六》とも呼ぶ!

好きに呼べ!!”


「承知しました。では、命賽めいさい殿と」


“お前様は変わり者だと聞いた!!

オレの相手は、もうお前様しかいないとな!”


命賽は賽子さいころで盤を叩き、声を弾ませる。


“双六は!?どうだ!?”


「あまり遊んだことがございません」


“そうか!ではオレと遊ぼう!!”


「かしこまりました。

その代わり――私が勝ったら……」


“わかっている!!

お前様が勝てば、もう二度と人間を賭けさせることはしない。賭けた人間も、元に戻す”


(……人間を、賭ける?元に戻す……?)


胸の奥が、ざわりとする。


“だが――オレが勝ったら……”


命賽めいさいが、にやりと笑った。


“賭けたものは、オレがいただく”


得体の知れない気配が、部屋を満たす。

背筋に、冷たいものが走った。


“それで?お前様は、誰を賭ける?”


「星鈴さんを」


「ふわぁ!?」


思わず声が漏れた。


(なんで!?)


そう言おうとした瞬間――


身体が、ふわりと宙に浮いた。


「――え?」


次の瞬間。


オレは、双六盤の上に立っていた。


(……えええええ!?)


意識はある。

でも、身体がまったく動かない。


(なにこれ!?

どうなってるの!?)


視線を落とすと――

そこには、駒のようなオレ。


(まさか……)


(オレ、双六の駒になってる!?)


(賭けるって……そういう意味!?)


“さあさあ!!準備はできた!!”


命賽の声が、愉快そうに響く。


“お前様の『運』――見せてもらおうか!!”



「玄曜……!!」


叫んだはずの声は、届かない。

双六盤の上のマス目には

進、戻、止、奪、振……などの文字が刻まれている。


(……これ……)


「マス目に止まったら……どうなるの……?」


盤の隅に、視線が吸い寄せられる。

そこには、オレと同じような駒が一列に沢山並んでいた。


「……文官服?」

「……あれは、宦官服……?」

「……女の人に……子供……?」


駒はどれも、人の姿をしている。

けれど――生きているようで、生きていない。


異様な気配が、盤の上に澱んでいた。


――人間を賭けさせることはしない。

――賭けた人間も、元に戻す。


(……まさか)


(……あれ、全部……)


人間、なのか……?


ぞくり、と背筋が粟立つ。


(負けたら……オレも……)


“さあ!!始めよう!!”


命賽の声が、盤上を震わせる。


その瞬間。


玄曜の指が――

駒になったオレに、そっと触れた。


「玄曜!!」


届かないはずの声で、叫ぶ。


「流星」


玄曜の声が、直接、頭の中に響いた。


「この双六は……お互いの“覚悟”が、勝敗を分ける」


「ええーっ!?」


「ビビるな。流星、覚悟決めろ」


「そんなこと言われてもっ!

双六の龍霊雨器相手に、勝てるの!?」


玄曜は、ほんの一瞬、間を置いた。


そして――


「オマエが、かかってるのに」


低く。


「負けるかよ」


そう、言い切った。



「では……私から」


玄曜は、躊躇いもなく賽子を振った。


「三です」


「うわっ!?」


駒となったオレの身体が、勝手に動き出す。


三のマス目は――

『空白』


「……空白!」


“はは!初手から運がいいな”


玄曜と命賽は、交互に賽子を振り、駒を進めていく。


「五です」


五のマス目は――

『奪』


「……何を、奪われるの?」


“命だよ。お前様”


命賽がそう告げた瞬間、

心臓に針を突き刺されたような激痛が走った。


「――っ!!」


思わず息を詰める。

恐怖が、身体中を駆け巡る。


“ははは!!

怯えなくてもいい!勝てば、元通りだ”


玄曜が賽子を振る。


「次は……二です」


二のマス目は――

『止』


“おや?お前様は、一休みか”


“オレは五だ。はは。さらに二つ進む”


「……三です」


三は――

『戻』


思うように、進めない。


(早く……先に行きたい)


(でも……また『奪』に止まったら……)


盤上は、異様なほど静かだった。

響くのは、賽子さいころの転がる音と、駒が進む音だけ。


――二、四、一、五、三、三。

――奪、止、進、奪、奪、空白。


オレは、ゆっくりと深呼吸をする。


ふと、玄曜の視線を感じた。


(大丈夫だよ、玄曜)


(だってオレ――)


(玄曜の隣にいる覚悟、とっくに決めたから)


「五です」


『進』――もう一度、振れる。


「三です」


三は――

『空白』


“ほう……”


ゴールまで、あと六。

命賽は――あと一マス。


“ここまでくるとは…お前様は、『運』がいい”


「『運』ではございません」


玄曜が、賽子を振る。


出た目は――六。


「覚悟でございます」



――勝敗は、決まった。


ゴールした瞬間、

オレの身体は元の姿に戻り、玄曜の隣に立っていた。


盤上に並んでいた駒たちも、次々と人の姿へと戻っていく。


「……!」


側で見守っていた宦官たちが、一斉に駆け寄り、

それぞれの相手を強く抱きしめた。


(なるほど……)


(賭けられていたのは、宦官たちの家族や、恋人、同僚たちだったのか)


命賽めいさい殿。約束は、守っていただきます」


“わかった、わかった!”


命賽は大きく笑い、そして舌打ちする。


“お前様の覚悟は、重すぎる!

そんなもん、賭けに出すな”


そう言い残すと、

命賽めいさいは不機嫌そうに沈黙し、そのまま眠りについた。



宦官たちに取り囲まれ、礼と祝盃の誘いをどうにか断り――

ようやく、離れへと戻ってきた。


「玄曜って、運がいいんだなぁ」

オレは海老雲呑麺えびワンタンめんを啜りながら言った。

「双六の龍霊雨器に勝つなんてさ」


「運じゃねぇ」


玄曜は、すでにおかわりに手を伸ばしている。

……この海老好きめ。


「出るように、振ってんだよ」


「えっ!?そんなこと、できるの?」


「はっ」

玄曜は鼻で笑った。


「オレの賽子さばきはな、倉庫一の博打好き――

観流骰盃かんりゅうさいはい直伝だ」


「……あんな龍霊雨器に、負けるわけねぇだろ」


意地悪く、得意げな笑み。

――うわ、悪い顔!


「それなら最初から教えてよ!

『奪』のマス、オレめちゃくちゃ怖かったんだぞ!」


命賽めいさいはな」

玄曜は淡々と言った。


「自分が勝てると思った相手にしか、乗ってこねぇ」


「オレに余裕があるって、バレるわけにはいかなかった」


……なるほど。


「おかげで、宦官のジジィどもにも貸しができたな…くくく」


……本当に悪い顔だ。


「でもな」


「ん?」


「勝つって、わかってても」


玄曜は少しだけ動きを止めた。


「覚悟は、いるんだよ」


そう言って、

無言のまま、麺椀をオレの前に差し出す。


「……お互いにな」

※作者より


お読みいただき、ありがとうございました。

龍霊雨器と流星、そして玄曜の物語は、まだ続きます。


龍霊雨器は【火・木・土 19時頃】更新です。

続きを読みたいと思っていただけましたら、ブックマークで追っていただけると嬉しいです。


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