第四話 「運命の取引 〜命令?協力?同居?〜」
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本作は
「中華風後宮ファンタジー」
「年上攻め×主人公受け」
を詰め込んだBL作品です。
シリアスになりすぎず、基本はコメディ寄りで進みます。
どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。
「は……?」
状況が掴めず、オレの口から乾いた声が漏れた。
玄曜はフッと鼻で笑い、そのまま部屋の奥へ進む。
オレは呆気に取られながらも、仕方なく後に続いた。
チラリと辺りを見渡す。
家の中は必要最低限の家具や装飾品が置かれ、落ち着いた色合いに統一されていた。
「今、ちょうどいい手駒を探していたんだ」
「手駒……?」
――それって、オレのこと……?
ドキリ、と心臓が跳ねる。
手汗を衣で拭う。背中にしっとりと汗がにじみ、気持ちが悪い。
玄曜は厨房で湯を沸かし、茶器を並べ出す。
お茶の葉の香りを確かめ、慎重に湯を注いだ。
目線で座れと指図される。
オレは近くの椅子に腰掛け、緊張を必死に抑えた。
「オレは訳あって、この後宮内で問題を起こす工芸品の仲介と管理をしている」
玄曜は話ながら、茶杯を差し出す。
フワリと香る茶の香りと味に、喉の渇きが癒やされ、少しだけ緊張が緩む。
「後宮内は男子禁制の場所が多いだろう?
今までは下女たちに内部に侵入してもらっていたが、どうにも限界がある」
玄曜は一服し、静かに息を吐いた。
「倉庫に配属される下女は――どうしても問題児のイタズラで辞めていく。
しかも今、後宮は下女の人手不足だ」
「問題児……」
さっきも言っていた、工芸品のことか。
「その点、オマエはとても良い。“見た目”は下女そのもの。それに……」
「オマエの力……運命だとは思わないか?」
「う……運命……?」
急に、大それた話になってしまった。
「オマエ、オレの管轄になって、今日からここに住め」
「ぶふっ! はあっ!?」
思わずお茶を吹き出すオレ。
「汚ねぇな」
苦々しい顔で、容赦なく言う玄曜。
「ちょっ! ちょっと待って! 大体――!」
オレは真っ直ぐ玄曜を見て、大声をあげた。
「あんた、キャラ変わりすぎだろ……!!」
ああ、スッキリした。
一番言いたかったことを、ようやく言えた気がする。
「オマエだってそうだろ」
玄曜の瞳に、鋭い光が宿る。
何を言っているのか睨まれると、オレの心臓はギュッと締めつけられた。
「さっきまで爽やか文官だったのに…!」
思わず口から漏れる。
なんで、こんなに口の悪い意地悪キャラになるんだよ!
「うるせーな。オレは元々こうなんだよ!
さっきも言ったが、後宮内は女しか入れない場所ばかりだ。
女の協力がいる。女ウケを利用して何が悪い?」
挑発するような笑み。顔がいいだけに、腹立たしさ倍増だ…。
「ここはオレの離れだ。他は誰も来ないし入れない」
「なんで、ただの文官がこんな所に住んでるんだよ」
「オマエには関係ない」
玄曜に言われ、オレはしゅん、と小さくなる。
そんなオレを見て、玄曜は少し気まずそうに口を開く。
「…オレは末端だからな」
「末端……?」
「いいんだよ、そんなことは。住むなら倉庫内より、ここが快適だ。
男の姿になっても、他の奴にバレることはない」
確かに……。
後宮に入って初日で、玄曜にバレたぐらいだ。
危険は避けたい。
でも……。
「あんたの管轄になるって……それって……」
「オレに忠誠を誓い、命に従え」
玄曜はイスにふんぞり返り、意地悪く笑った。
「なんでオレが」思わず声が出る。
「バラすぞ」
「うっ!」
「後宮内に許可なく男子が入ったら……当然、死罪だろうな」
「!」一瞬で背筋が冷たくなる。
「家族もただじゃ済まないだろうな」
「……!!」オレの目が不安で揺れる。
玄曜はそんなオレを見つめ、ゆっくりと言った。
「取引してやる。
オマエが男だとバレたくなければ、オレに協力しろ」
天青色の瞳が、楽しそうに揺らめく。
「協力するなら、オマエの安全は保証する。
たとえ他の奴にバレたとしても、守ってやる」
「………」
断れるはずがない。
オレは俯き、視線を彷徨わせる。
なんでこんなことに……。
いや、オレが自分で決めてここにきたんだ!
こいつの言うことを聞いていれば助かるなら……!
オレは迷いも恐れも振り払い、真っ直ぐ玄曜を見つめた。
「わかった。協力する」
「それは良かった」
玄曜は満足そうに呟く。まるで、ずっと欲しかった
おもちゃを手に入れた子供のようだ。
「オマエ、名前は?」
「知ってるだろ。星鈴だよ」
「違う。本当の名前だ」
本当の……?
男のオレの名前か。
「流星。白流星だよ」
「流星……流れ星か。面白い」
玄曜は笑った。
文官モードの笑顔とは違い、少し無邪気で子供みたいな表情。
そのギャップに、オレは少しドキッとした。
こうして、オレ――白流星――と玄曜の、秘密を共有する
奇妙な同居生活が始まったのだった。
※作者より
ここから、後宮での生活がさらに賑やかになり、
二人のやり取りも増えていきます。
第一章は毎日更新します。
ご都合のいいタイミングで、気軽にお付き合いいただけたら嬉しいです。




