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『龍霊雨器 ― 脅迫から始まる両片想いの後宮事件録 ―』 〜女装して後宮に潜入したら、正体を見抜いた俺様文官(次期皇帝候補)に囲われました〜  作者: 麻倉ロゼ
第三章 「これは恋じゃないと、思っていた」

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第九話 「誰かにとって記憶にない一日が、誰かにとって忘れられない一日」

ご覧いただきありがとうございます。


本作は

「中華風後宮ファンタジー」

「年上攻め×主人公受け」

を詰め込んだBL作品です。


シリアスになりすぎず、基本はコメディ寄りで進みます。

どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。

 朝日が窓から差し込み、スヤスヤ眠る流星をやさしく照らしていた。


「うう……ん……まぶし……」


流星はもぞもぞと身体を丸め、掛け布にくるまる。

意識はまだ夢の淵を漂っているようで、うとうとしていた。


(昨日の演奏……すごかったな……)


夢だったのではないか、と思えるほど――

神秘的で、幻想的で。

きっと神様の住む場所は、あんな綺麗な音と空気で満ちているのだろう。

昨日の出来事は、胸の奥でキラキラと輝いていた。

思い出すたび、自然と口元が緩む。


――あれ?


「……オレ、いつの間に帰ってきたんだ?」


意識が一気に覚醒し、流星は飛び起きた。


寝衣に着替えている。

身体もきちんと拭かれているし、装飾は外され、髪も整えられていた。


「ぎょえっ……化粧したまま寝てた!」


昨日、相当疲れていたんだろうな。

そう思いながら、鏡に映る自分を眺める。


そのわりに――

なんだか妙にすっきりしている。

なんでだろ?

 

「顔洗うか……」


そう呟いて立ち上がり、寝衣を脱いだ流星は、姿見の鏡の前で足を止めた。


「……ん?」


首元と、胸元。

そこに、赤い跡がいくつか残っている。


「……なに、これ」


いつ付いたんだろう。

まったく覚えがない。


しばらく考え込んでから、流星は首を傾げた。


「……虫に刺されたのかな?」



「はぁ……さっぱりした!」


化粧を落とし、いつもの後宮衣に着替える。


(今日は朝ご飯、何作ろうかな)


昨日はあれだけの演奏だったし、玄曜も疲れてるだろう。

鶏ガラだしのお粥にしよう。

生姜もたっぷり入れて。


(玄曜、これ好きなんだよな)


「普通」って言うけど、絶対おかわりするから。


部屋を出た、その瞬間――


「あっ!」


ちょうど向かいの部屋から、玄曜も出てきたところだった。


「おはよう!玄曜!」

流星はにこにこと手を振る。

「早起きだな!珍しい!」


玄曜は一瞬、目を見開き――

そして、なぜか気まずそうに視線を逸らした。


「ん?」


「いや……オマエ、昨日……」


「昨日!」

流星は被せるように声を上げる。

「玄曜の演奏、すごかったな!めちゃくちゃ上手かった!

オレ感動しちゃってさー!」


興奮気味に近づくと、玄曜はなぜか一歩、後ろへ下がった。


「何?何?どうした?」


「オマエ……昨日の事……」


「そうそう、昨日なんだけど!」

流星は全く気づかず続ける。

「演奏終わってから何があったか覚えてなくてさ!

玄曜が運んでくれたの?」


「…………」


「起きたら朝になっててさー!」

首を傾げながら笑う。

「もしかして、玄曜が着替えとかやってくれたの?」


「………………」


「それでさ!オレ、起きたらすごい虫に刺されててさー!

窓、開いてたのかな?」


「……虫じゃねぇよ」

不機嫌が、これでもかというほど滲み出ていた。


その後、なぜか玄曜はずっと不機嫌だった。


不機嫌なまま朝ご飯を食べ、

不機嫌なままおかわりをして、

不機嫌なまま仕事に行ってしまった。


「どうしたんだ、玄曜のやつ」



「なんで……覚えてねぇんだよ!! アイツ!!」


玄曜は、すぐそばの木を思いきり蹴り飛ばした。

鈍い音が響き、枝葉が大きく揺れる。


イライラする。

――いや、イライラなんてもんじゃねぇ。


「あの流星バカ……!!」


何が、虫だ。


覚えていたらいたでめんどくせぇけど……!

それでも……!


「昨日から、オレがどれだけ……」


言葉にならない苛立ちが、胸の奥で渦を巻く。


なんでオレだけ、

こんなにモヤモヤしなきゃいけねぇんだよ……!


腹立つな……!!


玄曜は最後にもう一度、地面を蹴りつけた。


その日一日、

玄曜の不機嫌は最後まで収まらなかった。


結果、慎言は八つ当たりを一身に受け、

静かに胃を痛めることになった。



“星鈴ちゃあああぁぁ〜ん!”

“キタキター!!星鈴たん!!”


天鳳瑞奏てんほうずいそう龍吟天響りゅうぎんてんきょう!」


後宮の楽器保管庫。

手入れを終えた天鳳瑞奏てんほうずいそう龍吟天響りゅうぎんてんきょうが、

オレを待っていた。


一夜明けても二人のテンションは高く、やたらとご機嫌だ。


“昨日はマジお疲れー!”

“本当にぃ〜楽しかったぁ〜!”


琴と二胡は身体を揺らしながら、ニコニコと笑っている。


「オレも!緊張したけど楽しかった!

龍吟天響りゅうぎんてんきょうの音色も感動しちゃってさ!」


“ま!?イェーイ!!”


龍吟天響りゅうぎんてんきょうは、花が咲いたみたいな勢いで跳ねた。


“それでねぇ〜!星鈴ちゃん!”


「ん?」


“うちら、マジで上がりまくっちゃったから!”


“私達とぉ、星鈴ちゃんとぉ、玄曜ちゃんでぇ”


““単独演奏の宴をやる事にしましたぁ〜〜!!””


……ん!?


んんん!!???


「どゆこと!!?」


“だあぁ〜ってぇ〜皇帝がぁ〜”

“マジでやってオケ〜って!”


こっ、皇帝!?


「えっ!?いつ!!?」


“第四章前半あたりでぇ〜”


「第四章前半って何!!?」

何言ってるの!?


“嫌なのぉ!?”

“まー!!?ショックなんだが!”


「嫌じゃないけど……」


否定しかけて、言葉が止まる。

なんだろう。

身体の奥が、むずむずする。

理由は分からないのに、

どこか落ち着かなくて、熱が残っているような感覚。


“えぇ〜!気分が上がらないならぁ”

““上げてこぉ〜〜!!””


““いえ〜〜い!!””


……あ、これダメなやつだ。


こうしてオレは、

またしても「断る」という選択肢を、

きれいさっぱり奪われたのだった。


ところで――

第四章前半って、何???


♦︎♢♦︎


“んふふふ……んふふふふ……”


静まり返った楽器保管庫で、

天鳳瑞奏てんほうずいそうが、ひどく楽しげに笑った。


天鳳瑞奏てんほうずいそう、わざとでしょ?”


“えぇ〜?なにがぁ〜?”


“星鈴たんの記憶、なくしたでしょ。

マジで何考えてんの?”


龍吟天響りゅうぎんてんきょうは、含み笑いを浮かべながら問いかける。


“んふふ……焦らしたらぁ、焦らした分だけぇ……

濃密になるでしょお?”


くすり、と艶やかに笑って。


“あの二人にはぁ……

絶対に、くっついてもらわないと”


その声音は、楽しげで、無邪気で――

だからこそ、

誰にも止められないと悟らせるものだった。

※作者より


お読みいただき、ありがとうございました。

龍霊雨器と流星、そして玄曜の物語は、まだ続きます。


龍霊雨器は【火・木・土 19時頃】更新です。

続きを読みたいと思っていただけましたら、ブックマークで追っていただけると嬉しいです。


もし物語を楽しんでいただけましたら、評価で応援いただけると励みになります。

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