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『龍霊雨器 ― 脅迫から始まる両片想いの後宮事件録 ―』 〜女装して後宮に潜入したら、正体を見抜いた俺様文官(次期皇帝候補)に囲われました〜  作者: 麻倉ロゼ
第三章 「これは恋じゃないと、思っていた」

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第二話 「倉庫での、覚悟の話」

ご覧いただきありがとうございます。


本作は

「中華風後宮ファンタジー」

「年上攻め×主人公受け」

を詰め込んだBL作品です。


シリアスになりすぎず、基本はコメディ寄りで進みます。

どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。

 玄曜げんようが仕事へ向かった後、オレも倉庫へと足を運んだ。

今日は倉庫の掃除の日だ。


倉庫には――昨日、助けてくれた龍霊雨器りゅうれいうきの剣たちもいるはずだ。


曜守ようしゅさん! とどめさん!」


声をかけると、倉庫奥の武器保管棚から気配が返る。


“これはこれは。星鈴殿”

“もう、お身体は大丈夫なのですか?”


「はいっ! もう大丈夫です!

昨日は、本当にありがとうございました」


昨日は動揺していて、ゆっくり見る余裕がなかったけど。

曜守ようしゅは漆黒のさや

とどめは、対になるような純白の鞘。

装飾は一切ないが、黒と白が並ぶその姿は、静かな威厳を放っていた。


「二人とも、とっても強くて……!

本当に凄かったです! かっこよかった!」


“ははは。主人あるじ殿が、ようやく我らを

お呼びになったので。張り切りました”

曜守ようしゅは、どこか誇らしげに言う。


“久方ぶりの出番で御座いました”

とどめも、鞘をわずかに揺らして応じた。

“我らは普段、全く切れぬ剣ですので……お役目は少ないのですよ”


「え!? そうなんですか?」

思わず、二振りを見比べる。


剣なのに……切れない?


“我らは、主人あるじ――玄曜殿をお守りするためだけの剣”

曜守が、ゆっくりと告げる。

“血を嫌います。故に、普段は刃を持ちませぬ”


“我らが抜かれる条件は、ただ二つ”

止の声は、静かで優しい。

ぬし様――玄曜殿が危機に晒された時”

“もしくは……ぬし様が、誰かを守ると決められた時のみで御座います”


――誰かを、守ると決めた時。


その言葉に、胸の奥がトクン、と鳴った。


玄曜が助けに来てくれた、あの瞬間。

嬉しくて、身体が熱くなって……

なのに、どうしてか切なくて。


あれは……何だったんだろう。


「玄曜様とは……昔からのお知り合いなんですか?」


左様さよう

ぬし様がお生まれになった折、我らは前の持ち主より譲られました”


「生まれた時に……」


生まれながらに、龍霊雨器の剣を二振り託される存在――。


「玄曜様は……」


そう続けようとした、その時。


“星鈴殿”

曜守が、被せるように口を開いた。


“我らの口からは申し上げられませぬ”

主人あるじ殿は、ご自身のことを他者から語られるのを、酷く嫌われます故”


穏やかな声だが、そこには揺るがぬ意思があった。


「……そう、ですか」


“ですが…星鈴殿であれば、いつか必ず”


“左様。ぬし様ご自身の口から、語られる日が来るでしょう”


“星鈴殿と、主様――お二人が、同じ覚悟を持たれた時に”


「……同じ、覚悟」


玄曜と、龍霊雨器たちと一緒にいる。

そう決めたつもりだった。


……でも、それ以上の覚悟が、いるのだろうか。


「あの……玄曜様と一緒にいるために」

「側にいるために、強くなるには……どうすればいいですか?」


“おや”

“ほう”


「やっぱり、鍛えて……強い武器を持つことですか?」


“ふむ……星鈴殿は、中々に肝が据わっておられる”


“ははは! 左指に双燕守環そうえんしゅかんを従えさせておいて、なお強さを求められるとは!”


双燕守環そうえんしゅかん……この指輪のことですか?」


左手の薬指。

金色の指輪が、きらりと光った。


“左様。双燕守環そうえんしゅかんは、最強の守護と防御”


“如何なる龍霊雨器の武器であろうと、太刀打ちできませぬ”


「そうなんだ……やっぱり、すごい龍霊雨器りゅうれいうきなんですね」


“星鈴殿”

曜守の声が、少しだけ低くなる。


“物理的な強さでは、主人あるじ殿の側にはいられませぬ”


“貴方様は、すでに十分……ぬし様に踏み込まれております”


「……」


オレは、無意識に左手を握りしめた。

腰から下げた双蝶巡縁佩そうちょうじゅんえんはい――阿桃あとうが、静かに揺れる。


主人あるじ殿の側にいるためには”


“貴方様が、さらに踏み込むか、それとも、踏み込まないか”


“ただ、それだけで御座います”



倉庫内の掃き掃除をしながら、オレは曜守ようしゅさんととどめさんの言葉を、何度も思い返していた。


――さらに踏み込むか、踏み込まないか。


玄曜の側には、いたい。

それは確かだ。


……でも。


「なんで、そう思うんだろう……」


答えは、まだ出ない。

自分の気持ちなのに、はっきりしない。

それが、少し不安で……少し、怖かった。


「……ん?」


ふいに、空気が変わった。


澄みきっていて、ひんやりと冷たい。

肌を撫でるような、張りつめた気配。


気づけば、倉庫の奥まで来ていた。


視線の先――

倉庫の最奥、床下に、それはあった。


「……扉だ……」


重厚な、大きな扉。

表面には、蝙蝠こうもりの紋様が深く刻まれている。


――あ、この先だ。


理由はないのに、そう確信した。


この先に……

とんでもない龍霊雨器りゅうれいうきが、眠っている。


……でも。


足は、一歩も前に出なかった。


「……覚悟が、できたら……」


今は、まだ行けない。


その時が来たら。

その覚悟が、揃った時に。


きっと――

この扉の向こうへ。

※作者より


お読みいただき、ありがとうございました。

龍霊雨器と流星、そして玄曜の物語は、まだ続きます。


龍霊雨器は【火・木・土 19時頃】更新です。

続きを読みたいと思っていただけましたら、ブックマークで追っていただけると嬉しいです。

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