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『龍霊雨器 ― 脅迫から始まる両片想いの後宮事件録 ―』 〜女装して後宮に潜入したら、正体を見抜いた俺様文官(次期皇帝候補)に囲われました〜  作者: 麻倉ロゼ
第二章 「脅迫同居の次は、強制バディですか?」

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第十一話 「嗜血凶剣・饕血 後編」

ご覧いただきありがとうございます。


本作は

「中華風後宮ファンタジー」

「年上攻め×主人公受け」

を詰め込んだBL作品です。


シリアスになりすぎず、基本はコメディ寄りで進みます。

どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。

「今日はもう離れから出るな。

風呂にでも入って、部屋で休んでろ」


玄曜はそう言うと、オレを離れまで運び、慎言と共に再び後宮の奥へと戻って行った。


力が抜け、オレはそのまま寝台に倒れ込む。


眠ろうとしても、頭だけが冴えて眠れない。


「……オレ、何も出来なかったな……」


ぽつりと零れた言葉は、

誰に届くこともなく、部屋の中で静かに消えていった。


「……玄曜……」


その名を呼んだ囁きも、同じように闇に溶けていった。



「随分と、怖い思いをさせてしまいましたね」


慎言が静かに言った。


「……そうですね」


周囲に人が集まり始め、玄曜の声音は自然と文官モードに切り替わる。


「あまり気を許してはいけないと……申し上げました」


静かだが、慎言は強い口調だった。


「……わかっています」玄曜が呟く。


風が吹き、玄曜の髪飾りがかすかに揺れる。


二人は、被害が最も酷かった場所へと向かった。

あれほどの騒ぎだったが、犠牲者は想定より少ない。


「記録によれば、以前は千人以上……

今回は…二十人程度で済んだと、言うべきでしょうな」


現場を管轄していた武官が、苦しげに語る。


「腕の立つ武官も、龍霊雨器の前では赤子同然……

龍霊雨器とは……恐ろしい存在です」


玄曜は倒れた武官たちに、そっと祈りを捧げた。


事件が終息し、玄曜は離れへと戻る。


――もう、寝ているだろう。


そう思った、その時。


「……灯り?」

一階に灯る明かりに、玄曜は足を止めた。


「おかえり!」

扉を開けると、流星が顔を出す。

すでに食事の準備は整っており、一階は温かな香りに満ちていた。


「……何してる」


「何って、ご飯作ってたんだけど?」


流星は当然のように言い、

「食べるだろ?」と玄曜を食卓へ引っ張る。


卓の上には、玄曜の好物ばかりが並んでいた。

海老の蒸し餃子、餡かけ海老炒飯、

鶏と生姜のスープ、南瓜餡饅頭。


「……いただきます」


二人で向かい合い、箸を取る。


「……あんなことの後で……

よく飯なんて作って、食えるな」

思わず、玄曜は口にしてしまった。


流星は箸を止め、じっと玄曜を見つめる。


「……なんだよ」


「オレさ、考えたんだけど」


流星は真剣な表情で話し始めた。


「やっぱ、後宮はオレに合わない。

女装も……リスクが高すぎる」


玄曜の喉奥が、きゅっと締め付けられる。


「でも!」


箸が、椀にカチャンと音を立てた。


「オレは、しばらくここにいる!」


「……は?」


「しばらくいて、オレに出来ることをする。

だから、ご飯作った!以上!」


意味がわからない。

玄曜は呆気にとられる。


「……怖いなら、出て行けばいい」


ぶっきらぼうに。


「この後宮で、龍霊雨器に、オレに関わるなら……

これからも、危ない目にあう」


無愛想に。


「もっと酷い目にもな」


「だからだよ」

流星は海老の蒸し餃子を頬張りながら言う。


「今日ので思い知った。オレ、全然戦えない。

後宮に来てから、玄曜に守ってもらってばっかりだ」


「それなら――」


「オレが、ちゃんと覚悟してなかった」


流星は箸を置き、まっすぐ玄曜を見る。


「覚悟したから……いてもいい?」

 

「は?」


「玄曜と一緒に、龍霊雨器たちのそばにいてもいい?」

 

「……出ていかないのか」


「出ていかない」


「……なんでだ」


オレはほんの少し考え――

「玄曜の管轄ものだから」


オレはわざとらしく得意げに、ニヤリと笑う。


「オマエ……」


玄曜は思わず笑った。

少し無邪気で、子供みたいな表情で。


「……わかってんじゃねーか」

ニヤリと口角を上げる。


その瞬間、

玄曜の中に、今まで感じたことのない感情が渦を巻いた。


――ダメだ。


欲が、抑えられない。


誰にも渡したくない。

閉じ込めておきたい。

オレだけのものにしたい。

 

コイツは…この流れ星は――

捕まえたら、絶対に、逃さない。

※作者より


お読みいただき、ありがとうございました。

龍霊雨器と流星、そして玄曜の物語は、まだ続きます。


龍霊雨器は【火・木・土 19時頃】更新です。

続きを読みたいと思っていただけましたら、ブックマークで追っていただけると嬉しいです。

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