表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『龍霊雨器 ― 脅迫から始まる両片想いの後宮事件録 ―』 〜女装して後宮に潜入したら、正体を見抜いた俺様文官(次期皇帝候補)に囲われました〜  作者: 麻倉ロゼ
第二章 「脅迫同居の次は、強制バディですか?」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/42

第六話 「女の嫉妬は蜘蛛より怖いかも」

ご覧いただきありがとうございます。


本作は

「中華風後宮ファンタジー」

「年上攻め×主人公受け」

を詰め込んだBL作品です。


シリアスになりすぎず、基本はコメディ寄りで進みます。

どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。

 穏やかな昼下がりだった。


後宮内の下位下女仲間とオレは、力仕事を手伝った

お礼にと、お茶に誘われていた。


その様子を――


「あの子ね。玄曜様にくっついてる下女って!」


「下女の服も特注らしいわよ……!

ちょっと可愛いからって。腹立つ!」


「大丈夫よ。気に入らない奴は、みんな“これ”で

追い出してるんだから……」


物陰から、星鈴を睨みつけるいくつかの影。


その視線に――

オレは、まだ気づいていない。


「蛇?」

茶をすすりながら、オレは話を聞いていた。


「入りたての下女が、泣きながら支度部屋から出てきたの。

蛇に襲われたって!」


「ええっ!」

それは……可哀想に。


「なんでも、上位下女が嫌がらせで蛇を放つんだって〜」


「ぎょええ……なにそれ!」

それ、嫌がらせの域を超えてない!?


女の世界って、怖すぎる……。


「ほら……被害にあった子、可愛かったから」

「イケメン武官と、いい感じになってたし……」


「ええー!?」

イケメンと、いい感じになったら蛇!?

嫉妬、怖すぎるだろ!


「星鈴も気をつけなよ。なんたって、玄曜様直属なんだから……」


えええ……!

なんで玄曜のせいで、オレが嫌がらせされなきゃ

いけないんだよ!腹立つー!


その時――


木の上から、

ふわりと一枚の紙が落ちてきた。


紙には、数匹の蛇が筆で描かれていて――

シャッ、と音を立てた次の瞬間。


描かれた蛇が、一斉に“実体化”した。


「きゃあああああ!!!」


近くにいた女の子たちは、悲鳴を上げて散り散りに逃げる。

恐怖で泣き出す子もいた。


この感じ……龍霊雨器りゅうれいうきか?


たぶん、筆に宿るタイプだな。

描いたものを一定時間、実体化させるやつだろう。


……いくらなんでも、ひどすぎる。


オレは辺りを見渡す。

少し離れた場所で、上位下女たちが身を隠すようにして――

ニヤニヤと、こちらを見ていた。


……あの人たちか。


オレは、素早く全ての蛇を――素手で掴む。


そのまま、上位下女たちの方へ走り出した。

足の速さには、ちょっと自信がある。


「お返しします」


軽やかな笑顔のまま、

蛇を――するり、と相手の袖の中へ。


次の瞬間。


「きゃああああーっ!!」上位下女達は腰を抜かし、

そのまま気絶してしまった。


……ちょっと意地悪だったかもしれないけど。

これで嫌がらせがなくなるなら、まあいいか。


後宮って、色んな所に龍霊雨器があるんだなぁ。

本当怖くて騒がしいところだ!

 


――その様子を…遠くから、一部始終を見ていた

玄曜げんようが、思わず呟く。


「……アイツ、蛇を!素手で……!」


完全に、素の口調だった。


「いやぁ。頼もしいですねえ」

慎言しんげんも笑っていたが――

その顔は、わずかに引き攣っていた。



――その夜。


「ぎょえぇぇぇー!!」


離れの家に、流星の悲鳴が響き渡った。


「うるせーな。なんだよ」


玄曜が顔をしかめた次の瞬間――

半泣きの流星が、勢いよく部屋に駆け込んでくる。


「く、蜘蛛!!蜘蛛がいるっ!!」


「……は?」


どうやら流星の部屋に、蜘蛛が出たらしい。


窓枠を見ると、小さな蜘蛛が一匹、ちょこんと

張り付いていた。


「蛇を素手で掴める奴が、何ビビってんだよ」


「蛇はいいんだよ!ニョロニョロしてるからっ!」


意味がわからない。


流星は玄曜にしがみついたまま、離れようとしない。


「蜘蛛を見ろ!足が……!足が六本もあるんだぞ!!」


「虫は大体、足六本だろ」


「とにかく!蜘蛛はダメ!!捨てて!

こっち持ってくるな!やめて!!」


ぎゃあぎゃあと、騒ぐ流星を一瞥し、

揶揄うのも馬鹿らしくなった玄曜は、蜘蛛を

指でつまみ――


そのまま、窓の外へポイっと放り投げた。


「……ほら」


「よかったぁぁ……!!」


途端に、ぱあっと表情を明るくする流星。


「玄曜ありがとっ!オレ、風呂入ってくる!」


そう言い残すと、あっという間に階段を駆け下りていった。


本当に、騒がしい奴だ。


突然現れて、

突然消えていく。


――まるで、流れ星みたいに。


「……名前そのものだな」


玄曜は、思わず小さく笑って呟いた。


だから――こんなにも、目が離せないのだろう。

※作者より

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

後宮での生活は、まだまだ続きます。

引き続き、気軽にお付き合いいただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ