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『龍霊雨器 ― 脅迫から始まる両片想いの後宮事件録 ―』 〜女装して後宮に潜入したら、正体を見抜いた俺様文官(次期皇帝候補)に囲われました〜  作者: 麻倉ロゼ
第二章 「脅迫同居の次は、強制バディですか?」

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第四話 「愛が重すぎ!対の簪」

ご覧いただきありがとうございます。


本作は

「中華風後宮ファンタジー」

「年上攻め×主人公受け」

を詰め込んだBL作品です。


シリアスになりすぎず、基本はコメディ寄りで進みます。

どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。

“ずっと好きだって言ってくれたのにぃぃー!!”


後宮内・装飾品保管庫に、悲鳴にも似た鳴き声が響き渡る。


“私だけだって言ってくれたのにぃぃぃ!”


「……なに!? どういう事っ!?」


今日から本格的に、玄曜と後宮内の龍霊雨器トラブル対応。

そう意気込んでやって来たはいいものの——。


玄曜に連れられて後宮内の保管庫に入った瞬間、

オレは状況をまったく把握できず、あたふたしていた。


「昨日から、ずっとこの調子なんです……」


傍に控えていた上位宮女が、心底困り果てた表情で言う。


「こちらは比翼簪ひよくのかんざしと申しまして。代々、後宮の由緒ある儀式に

使われてきた吉祥の簪なのですが……」


“若い簪に目移りしてぇ!! 絶対、許さない!!”


怒りを爆発させているのは、その比翼簪ひよくのかんざしだった。


「……ん? 何がどうしてそうなった?」


ますます分からない。


「はあ……それがですね。この度、儀式に使う

新しい簪を加えたところ……」


“だって! 私たちは二対で一つなの!”


“箱にも刻まれてるのっ!

『比翼簪、二心を結び、永く離れず』って!!”


「つまり——」


玄曜が文官モードの落ち着いた口調でまとめる。


「今まで対で寄り添い、仲睦まじく過ごしてきた比翼簪ひよくのかんざしの間に、

新しい簪が加えられた。それに嫉妬している、ということですね」


「その通りです……。新しい簪は、後宮でも

力のある家からの献上品でして。無下にもできず……」


“あの簪を見つめる、あのひとの目!

うっとりしてて……許さない!!”


……簪に、目ってあったっけ?


「対になっている簪は、今どちらに?」

玄曜が静かに尋ねる。


「現在、手入れ中です。儀式は二日後……。

どうか説得していただけませんか?

比翼簪ひよくのかんざしがなければ、儀式が

成り立たないのです」


もっと大惨事を想像していたオレは、思わず肩透かしを食らった。


「……そんなに、番の簪が好きなんですね」

素直に感心してしまい、そっと比翼簪ひよくのかんざしに触れる。


すると——

対の簪が、長い年月を共に過ごしてきた記憶が、

静かに流れ込んできた。


「……ずっと、一緒なんですね」


何百年も、寄り添い続けてきたのだろう。


“…ふふふ。いいでしょう?”


比翼簪ひよくのかんざしは、少し落ち着いた様子で語り出す。


“貴方は、結婚は?”


「えっ!? ま、まだです!」


“お付き合いしている方は? 心に決めた方は?”


「いませんっ!」


突然の質問攻めに、完全に動揺する。


“どんなタイプがいいの?”


「え!? えーと……明るくて、一緒にいると楽しい子、です」


“私のカレもね、明るくて……一緒にいると楽しいの。

ずっと、この想いは変わらないと思っていたのに……

私だけだったのかしら……”


今にも泣き出しそうだ。

簪に目はないけど、情緒は人間並みにある。


「だ、大丈夫ですよ! 絶対、番の簪も同じ気持ちですって!

ねえ、玄曜様!」


オレは助けを求めるように、玄曜を見た。


「そうですね」


玄曜は穏やかに微笑む。


「長い年月、対で過ごされてきたのです。

お二人の絆は、若い簪一つで揺らぐものではございません」


“でも……魅力的な殿方なら、女性の方が寄ってきてしまうわ……”


比翼簪ひよくのかんざしは、ぽつりと呟く。


“そちらの貴方は、どう?”


今度は、玄曜を見上げた。


「私は、その他大勢の女性に興味はありません」


玄曜は迷いなく、きっぱりと言う。


「添い遂げるなら——、一人だけです」


……おお。

そういうタイプなんだ。


「他には考えられない。ただ一人の方に、

巡り会いたいものです」


へぇ……玄曜って、意外とロマンチックだな。


「自分が焦がれるほど好きになった方ならば、

他の人間には見せたくありませんし……

当然、触れさせたくもありません」


ん?


「自分だけのものにして、閉じ込めておきたいですね」


……んんん??

重すぎない!?


“わかるわぁ〜!”


比翼簪ひよくのかんざしが、心底共感したように声を上げる。


「手に入れたら、絶対に逃しません」


玄曜は爽やかな笑顔で言った。

——目は、まったく笑っていない。


怖い!!

執着が、重い!!


“わかるわぁ〜!”


比翼簪ひよくのかんざしは、再び深く頷いていた。


オレはそっと後ろを振り返り、宮女を見る。


「……わかるわ」


頷いてる!

え!? みんな愛が重いな!?


そんな空気の中——。


“お待たせ。どうしたんだ?”


手入れを終えた番、もう一対の比翼簪ひよくのかんざしが戻ってきた。


“新しい簪の話をしてたのよ……”


“ああ……あの若い簪か。綺麗だよな”


——ピリッ。


空気が一気に張り詰める。


ちょっ……何言ってんの!!

せっかく機嫌直ってきたのに!?


“あの簪に輝く琥珀……君と初めて顔を合わせた日の、

夕陽の色だ”


“……え?”


“忘れるはずがない。あの日から、ボクには君だけだ”


“……私もよ”


寄り添い、うっとりとする二対の簪。


その様子を眺めながら——

オレは思わず呟いていた。


「……なんのために呼ばれたんだ?」



離れへの帰り道。


「結果的に……良かった、んだよな?」


なんだかどっと疲れて、背伸びをしながら玄曜に聞く。


比翼簪ひよくのかんざしの機嫌が直ったなら、

それでいいだろ」


玄曜は前を歩いたまま、静かに答えた。

離れが近いせいか、すっかり素の口調だ。


「龍霊雨器のトラブルって聞いてたから、この前の

香炉みたいなの想像してた」


「あれは特別だ。大体は、今日みたいなのばかりだな」


「そうなんだ……」


オレは空を見上げる。

陽は傾き、空は琥珀色に染まっていた。


「あんなふうに……誰かをあそこまで好きになれるのって、すごいな」


ぽつりと零す。


「オレには、まだわかんないや。恋とか、愛とか……」


あれほど焦がれる相手に、いつか出会えるんだろうか。


「はっ。お子様のオマエには、まだ早い」


玄曜は鼻で笑った。


「なんだよ! お子様って!

オレは十六だぞ! ……そういえば、玄曜はいくつなんだよ」


「十八」


ぶっきらぼうな答え。


「いや、十八であの恋愛観はヤバいだろ!!」


思わず突っ込む。


あの独占欲と所有欲……

相手ができたら、束縛がえげつなさそうだ。


玄曜は足を止め、振り返らずに言った。


「閉じ込めておかないと……すぐ、どこかに行きそうだからな」


小さく、そう呟いて——

また、ゆっくり歩き出す。


「……ん? 今、何か言った?」


「別に」


夕陽が沈みかけ、二人の影が長く伸びる。


こうして、オレたち二人の——

初めての後宮内・龍霊雨器トラブル対応は、

無事(?)に終わった。


……はずだった。


「明日は、別の龍霊雨器トラブル対応だぞ」


「!?」


嫌な予感しかしない。


——次は、一体どんな問題児なんだ。

※作者より

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

後宮での生活は、まだまだ続きます。


第二章は【火・木・土】の週3回、

21時頃の更新予定です。

引き続き、気軽にお付き合いいただけたら嬉しいです。

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