表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『龍霊雨器 ― 脅迫から始まる両片想いの後宮事件録 ―』 〜女装して後宮に潜入したら、正体を見抜いた俺様文官(次期皇帝候補)に囲われました〜  作者: 麻倉ロゼ
第二章 「脅迫同居の次は、強制バディですか?」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/42

第二話 「ようこそ!賑やかすぎる職場へ」

ご覧いただきありがとうございます。


本作は

「中華風後宮ファンタジー」

「年上攻め×主人公受け」

を詰め込んだBL作品です。


シリアスになりすぎず、基本はコメディ寄りで進みます。

どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。

「では、邪魔者は退散いたします。玄曜げんよう様。後ほど」


慎言しんげんはそう言うと、なぜか満足げな表情のまま、さっさと部屋を出て行った。


慎言さんを見送ったオレは、堪えきれず、

玄曜の前に立ち、もう一度新しい服を披露した。


「玄曜! 実際どう!? この服! 似合ってるだろっ!」

ジャーン! と効果音付きでポーズを決めてみせる。


「……普通だっつってんだろ」

ぶっきらぼうな返事。


もう少しくらい、褒めてくれてもいいじゃないか。


「結構、可愛いと思ったのに……」

オレは伏せ目がちにうつむき、髪飾りを

指先でくるりと弄る。


その様子を、玄曜は複雑そうな表情でじっと見つめていた。


「……お前……本当に男か……?」


「ふふっ! 可愛いだろっ!」


「普通だ。普通」


玄曜は、さっきよりも一層ぶっきらぼうに言い放った。


そのままお茶を飲み干し、衣を整えて出かける準備を始める。


「流星。今から倉庫に行くぞ」


「倉庫? 龍霊雨器りゅうれいうきの?」


「そうだ。倉庫の問題児ヤツらに紹介する」


問題児ヤツら……?」


下女失踪事件の後も、倉庫には何度か入ったことがある。

けど……“紹介”って、どういう意味だ?


「あいつらは問題児だが、協力者だ。せいぜい気に入られて、うまくやれ」


そう言って、玄曜は意地の悪い笑みを浮かべた。


……嫌な予感しかしない。


背筋に、ひやりとしたものが走った。



「入れ」


玄曜に促され、オレは倉庫の中へ足を踏み入れた。

さっきの言葉――“問題児ヤツら”が頭から離れず、自然と足取りが慎重になる。


倉庫の中を、ゆっくりと見渡す。


棚に整然と並ぶ、無数の工芸品。

壺、香炉、簪、器、飾り物……。


――玄曜が言っていた、“問題児”。


後宮に来てから何度か入ってはいたけれど、

改めてこうして見ると……やはり、普通の工芸品とは何かが違う。


「……これ、全部……」


思わず、声が漏れた。


龍霊雨器りゅうれいうき……一雫ひとしずくの奇跡……」


オレがそう呟いた、その時。


カタン。


どこかで、小さな音がした。

――まるで、返事をされたみたいで、思わず肩が跳ねる。


オレは、もう一度倉庫を見渡した。


ずっと昔から魂を宿し、生きてきた工芸品たち。

人の手を渡り、時を重ね、ここに集められた存在。


「おい」


玄曜が、工芸品たちに向かって声をかける。


「今日からお前達の管轄になった、星鈴だ」


その瞬間――


ざわり。


空気が、大きく揺らいだ。


“きゃあああー!! ようこそぉぉぉー!!!!”


倉庫全体が揺れ、あちこちから一斉に歓声が湧き上がる。


「……っ!?」


衝撃に、オレは呆然と口を開けたまま固まってしまった。


えええ!?

なに!? なにこれ!?


「な、何!? 龍霊雨器って……話せるの!!?」


しん……と一瞬、静まり返ったかと思うと――


“やだあー! 話せるに決まってるでしょー!”


“龍霊雨器のこと、知らないわけぇ?”


“随分と頭の悪そうなやつが来たものだな”


“可愛いー!!! 構いたーい!!!”


また一斉に、好き放題しゃべり始める。

声は耳ではなく、頭の奥に直接響いていた。


「ぎょえぇ……これは……大変だ……」


「静かにしろ」


玄曜が一言そう言うと、話し声はすっと落ち着き、

代わりに、くすくすと笑う気配だけが倉庫に残った。


(玄曜……ここの龍霊雨器の前だと、素なんだ)


星鈴コイツには、この倉庫のお前達の管理を任せる。

あとは、後宮内の龍霊雨器トラブル担当だ」


「ええっ!? 聞いてないんですけど!?」


「今、聞いただろ」


「えぇー!!」


なんて勝手なやつなんだ……!


「だから、星鈴コイツにも協力しろ」


“それはいいけど……一つ、聞いてもいい?”


近くから、少し落ち着いた声が響いた。

真面目な調子に、オレも思わず身構える。


「なんだ」玄曜がぶっきらぼうに返す。


“二人は、付き合ってるの?”


「はっ!?」


思わず、オレの声が裏返った。


「ちげぇよ」

玄曜も苦い顔をして、即答する。


“ええー!!?”


また一斉に声が弾ける。


“付き合ってないのに一緒に住んでるのー!?”


“えー、どうしてー?”


“やだぁー!”


“詳しく知りたーい!!”


賑やかを通り越して、完全に騒音だ。


玄曜はこの騒がしさに慣れているのか、

イライラした顔で腕を組み、嵐が過ぎるのを待っている。


「……もしかして、いつもこんな感じなの?」


小声で聞くと、


「大体こうだ。一度始まると、オレでは止められない」


「ええー……」


“問題児”と言っていた理由が、よく分かった。


玄曜はチッと不機嫌に舌打ちすると、黒衣を翻し、

そのまま倉庫を出て行こうとする。


「えっ、玄曜!?」


慌てて追いかけるが――


「オマエは今日は、コイツらの世話だ。

目録と実物を確認しろ。

さっきも言ったが、コイツらは協力者だ。うまくやれ」


そう言って、目録を押し付けられる。


「ええー!!」


「存分に役に立ってくださいね、星鈴さん」


玄曜は一瞬で文官モードに切り替え、穏やかに微笑んだ。


――アンタ、本当に切り替え早すぎだろ!!


そしてオレを一人残し、足早に去って行った。

※作者より


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

後宮での生活は、まだまだ続きます。

流星と玄曜、そして龍霊雨器を巡る物語が、

ここから少しずつ深く動き出します。


第二章は【火・木・土】の週3回、

21時頃の更新予定です。

引き続き、気軽にお付き合いいただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ