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『龍霊雨器 ― 脅迫から始まる両片想いと後宮事件録 ―』〜妹の後宮入りを阻止するために兄が女装して潜入したら、正体を見抜いた文官が実は末端ポジションの次期皇帝候補で俺様すぎる件〜  作者: 麻倉ロゼ
第一章 「嘘と脅迫から始まる俺様文官との最悪で最低な始まり」

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1/8

第一話 「妹の代わりに、女装して後宮に入りました」

ご覧いただきありがとうございます。


本作は

「中華風後宮ファンタジー」

「年上攻め×主人公受け」

を詰め込んだBL作品です。


シリアスになりすぎず、基本はコメディ寄りで進みます。

どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。


「ダメに決まってるだろ!!!」


妹が後宮に入るなど、絶対に認めない。


「でも……流星お兄様。お給料もとってもいいのよ?」


オレの妹、星蘭せいらんの手には、『後宮下女、緊急大募集』と書かれた知らせ書きがあった。


「ダメだ、ダメだ! 星蘭が後宮なんて!」

オレは思わず頭を抱える。


星蘭みたいな可愛い子が入ってみろ。

速攻で皇帝を魅了して――

『底辺下女の私が後宮入りしたら、皇帝陛下に溺愛されて

甘々な後宮生活を送っています』なんて話になるに決まっている…!!


「国が……傾く……!」


呻く俺に、星蘭は「まあ、流星りゅうせいお兄様ったら」と、ふふっと笑った。

花が咲いたみたいな、無自覚に人を惹きつける笑顔だ。

この笑顔ひとつで、皇帝の理性など吹き飛ぶだろう。


「でも、流星お兄様。このままだと冬の準備もできないし、薪や炭を買うお金だって……」


「うう……」


オレはさらに頭を抱えた。

そう。我が家は今、非常に貧乏なのだ。


少し前まで、小さいながらも代々続く工芸品を扱う商家だった。

――父が騙され、借金を背負わなければ。


家業は廃業。父は母と別の仕事に就き、

俺も働き口を探している。今はなんとか暮らせているが……余裕はない。


それでも。

星蘭の未来を守るためなら、俺は何だってする覚悟だ。


「ほら、見て。ここ。配属先によっては、こんなに貰えるのよ」


星蘭が指差す先には、『高収入確約!』の、文字。

街で働く賃金の、三倍――!


「流星お兄様にばかり苦労はかけさせません。私、もう十歳です。立派に働けます!」


「なんて……いい子なんだ……!!」


健気すぎる。

思わず抱きしめてしまう。


――ダメだ。絶対に行かせない。


オレが男だとか、家が貧乏だとか、そんなことはどうでもいい。

可愛い妹を守るためなら、どんな馬鹿な真似だってしてやる。


「……オレが、代わりに行く!!」



「……案外、バレないもんだな」


倉庫の目録を抱え、流星は小さく呟いた。

女物の衣の内側で、心臓だけがやけにうるさい。


ここは後宮。

配属されたのは、工芸品を保管する倉庫係だった。


正規の宮女選抜ではない。

力仕事で、薄暗い作業ばかりの不人気部署。

人数さえ合っていれば、誰も細かく見ない。(給料も、結構いい)

検査官は名簿を形式的に確認し、あっさりと印をつけただけだった。


しかも寝泊まりするのは、倉庫内にある小部屋。

他に下女はいない。バレる危険もない。


――なんて幸運。日頃の行いに感謝だ。


こうしてオレは、妹の代わりに

男のまま後宮に入り込み、見事職を得たのである。


目録を棚にしまい、ふと倉庫内の姿見鏡を見る。


簡素な髪飾り。

艶のある長い髪。

小柄な体格に、色白の肌、ぱっちりとした目。


仕草さえ気をつければ、どう見ても女の子だった。


「このコンプレックスな見た目が役に立つ日が来るとは……」


悲しむべきか、喜ぶべきか。

――まあ、今はどうでもいい。


髪を結い直し、紅を指先に取り、唇に軽くひと塗り。

鏡の中に映るのは、白流星はくせいりゅう――改め、後宮で働く下女・白星鈴はくせいりん


鼻先に漂う木と埃の匂い。

倉庫には古びた棚が並び、天井から柔らかな陽光が差し込んでいる。


静かすぎる空間。

監視が行き届いていないことを悟り、オレは小さく息をついた。


「さて……初日から失敗はしたくないな」


重い木箱を運び、そっと中身に触れる。

小ぶりな茶器一式。


その瞬間――

指先に、流れ込んでくるものがあった。


工芸品が宿す、“記憶”。

若い女官と身分の高そうな女性が笑いながら、庭先で茶器を囲んでいる。

「……優しい記憶だ。大切にされていたんだな」


生まれつき持つ、不思議な力。

オレは、物に残る記憶を見ることができる。


いい記憶も、悪い記憶も。

この力のことは、妹の星蘭にしか明かしていない。

困る時もあるけど、オレはこの力を気に入っている。


倉庫の中は、工芸品だらけ。

――最高の職場じゃないか。


「このままバレずに、稼げるだけ稼ぐ……!」

そして星蘭に、いい暮らしをさせてやるんだ。

誰もいないのをいいことに、思わず口元が緩む。


しかし、その瞬間――


「そこの君」


「!?」


背後から声をかけられ、思わず飛び上がる。

呼吸を整え、ゆっくり振り向くと――


「少し、いいですか?」


穏やかな笑みを浮かべた、一人の青年が立っていた。


この文官……確か、下女たちが噂していた。

後宮人気ランキング一位の、あの――。


「なんでしょうか?」


オレは、何食わぬ顔で微笑み返す。


この時のオレは、まだ知らなかった。


こいつが――

オレの人生を、大きく狂わせる元凶になることを。


そして、この後宮での日常が、

思いもよらぬ形で揺さぶられることになることを。


――いや、正確には。

コイツに、盛大に振り回されることになるのだ。

読んでいただきありがとうございます。

本作は、後宮×中華風ファンタジー×BLのドタバタコメディです。

まずは第一章、流星の同居生活が始まるところまでお付き合いいただけたら嬉しいです。

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