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その家は水に呪われている

作者: こうじ

「聖女様、ようこそいらっしゃいました。 私がこの屋敷の主であるロナウド・カイサスと申します」


「教会から派遣されたリウナと言います。 早速ですが屋敷内に邪気が蔓延していますね」


「わかりますか……」


 この屋敷の主であるロナウド・カイサス公爵は疲れたような顔をして笑った。


 私はリウナ、元はただの村娘だったけど聖紋が出た事で教会に引き取られ聖女となった。


 と言っても特別な職では無く私の他にも聖女がいて得意分野がある。


 私の場合は呪いの解呪が得意でこうして依頼を受けて出向いている。


 因みに呪いの解呪は聖女の中では不人気NO1で他の聖女仲間からの評価は低い。


 それでも頼られている訳だから誇りを持っている。


 で今回の依頼人であるロナウド公爵だが屋敷に入る前からどす黒い物が漂っていて明らかに呪われている事がわかる。


「我が家は水に関わる死を遂げているのです」


「水、ですか……」


「えぇ、私の両親は豪雨による土砂崩れにより死に妻は浴槽で溺死、子供達は川遊びの最中に行方不明になり数日後に腐乱死体で発見されました……」


 確かに水が関係している。


「ご両親の頃から呪いが続いているんですか?」


「いえ、正確に言うと祖父の代からです」


 だとしたらかなり手間がかかりそうだなぁ……。


「呪いを解くには呪いの原因を探らなければなりません、まずは屋敷内を案内していただけますか?」


「勿論です、ご案内しましょう」


「公爵自ら案内していただけるのですか?」


「えぇ、前は使用人やメイドがいましたが1人が階段から転倒して打ち所が悪くて亡くなってしまったんです、 何故か床に水溜りがあったそうでそれに足を滑らせてしまって……、以来通いはいますが住み込みは誰も」


 そう言って溜息を吐いた公爵。


 貴族って偉そうな人が多いけどこの人はなんか同情してしまう。


 公爵の案内で屋敷内を歩いたけど、まぁジメジメはしているけど呪いの原因は屋敷内には感じられない。


「屋敷の中では無いみたいですね、外に出てみましょうか」


 私達は中庭へと出てみた。


「余り手入れがされてないですね」


「えぇ、伐っても伐ってもすぐに生えてくるんです」


「どちらかと言うと外の方が強いですね……、あの木の柵は?」


「あそこは立入禁止区域なんです、底なし沼があると聞いています」


「公爵は入った事は無いんですか?」


「えぇ、親からキツく言われているので」


「開ける事は可能ですか?」


「え、入られるのですか?」


「えぇ、彼処から禍々しい物が感じられます」


「わ、わかりました。 入ってみましょう」


 公爵は木の柵を開けてくれて私達は柵の中へと入っていた。


 雑草が生い茂りまるでジャングルの中を掻き分けながら奥へと進んでいくとどんよりとした沼が現れた。


「やっぱりこの沼が呪いの本陣みたいですね……」


「ここが……」


「早速鑑定してみましょう」


 私は鞄の中から水晶を取り出した。


「この地に眠りし者達よ、呼び覚まし記憶を映せよ」


 水晶を掲げ唱えると水晶がピカッと光り目の前に映像が映し出された。


「こ、これは……」


「この沼が持つ記憶です、もしかしたらここで何かあったかもしれないと思いまして」


 映像には1人の男性がズルズルと袋を引っ張り沼へ落とす姿が映し出されていた。


「あ、あれは……」


「ご存知の方ですか?」


「祖父です! 直接面識はありませんが」


 映像に映し出された男は何度も袋を沼の中へと投げ落としていた。


 ある時、袋が少し破れ中から手の様な物が見えた。


「ま、まさか袋の中身は……」


「多分、人ですかね」


 残念ながら音声は聞こえてこないけど男性はブツブツと何か言っている。


「お爺さんはどんな方だったか聞いていますか?」


「詳しい事は……、ただかなり苛烈な性格で使用人やメイドが粗相をすると激しい暴力をした、と」


 と男性が何故か転びそのまま沼に引っ張られていく。


 必死の形相でもがいているが沼の方へどんどん引っ張られていきズブズブと沼の中に引きずり込まれていった。


「なるほど……、大体わかりました」


「まさか呪いの原因は祖父なのですか?」


「えぇ、多分お爺さんは使用人やらメイド達に暴力をした挙句無惨にも殺害したんでしょう、その遺体をこの沼の中に捨てた。 そしてお爺さんは殺された者達の怨念により自らも沼に引きずり込まれた、その怨念は現在も続いている訳です」


 私は水晶を沼の中へと投げ入れた。


「この地に潜む怨念達よ、その想いを天に捧げ解き放て天に参られよ……『浄化』!」


 私の一声に沼はピカッと光った、と共に無数の白い霊魂が次々と空に昇っていく。


 そして最後に黒い霊魂が現れたが私はそれを掴んだ。


「貴方はダメです、これから冥界で現世で起こした悪事を裁いて貰わなければならないので」


 黒い霊魂は左右に揺れながら逃げ出そうとしているがそうはいかない。


「冥界への扉を開きます」


 私は鍵を取り出し地面に刺した。


 カチャと言う音と共に地面に扉が現れゴゴゴと言う音と共に開いた。


「しっかり裁きを受けて反省しなさい!」


 私は黒い霊魂を扉へと投げ入れた。


 扉は閉まり姿を消した。


「い、今のは……」


「あぁ、冥界の扉です、黒い霊魂は現世の罪の裁きを受けてないので冥界に送るんです」


「霊魂を掴んでましたよね?」


「聖女ですから掴めるんです、これで解呪は終わりです」


 私はニッコリと笑った。



 それから1週間後、公爵から手紙をいただいた。


 あの日以来、水に関するおかしな事は起こらなくなり公爵も普通に水を飲む事が出来る様になり体調が良くなった、という。


 そして祖父の事を調べてみるとやはり殺人を犯していた。


 公爵は今更ながらだが追悼の碑を建て毎日被害者達へ祈りを捧げているそうだ。


 私は今日も解呪の為に動いている。


 

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