第1.2話
前までよく食べるものと水を探しに来ていたスーパーマーケットと言うところに来た。もうここの物は全て食べつくしてしまった。懐中電灯用の乾電池はもちろん、他にも使えそうな紐や他のキャンピング用具はほとんど漁ってある。
立ち止まることなく私は通り過ぎた。
かつて人間だったものがあちらこちらに倒れているが、私にはあれらを人間と認識する心を持っていない。親が教えてくれただけだ。
車やコンクリートを上っているときに肩からずれた鞄のひもを直す。
私は知らない。
この大量の骸が生きていた時のこと。この大量の死骸がかつて街を動かしていた時のこと。この大量の亡骸がどんな生活をしていたのか。昔人々は「ビーチ」というところに行き、自ら日の光を浴びに言っていたらしい。その時の太陽の温かみは波の音と並んで最高の安らぎだったとか。今この世界でしか生きたことのない私からしては全く想像できない。私は知らなかった、知りたいと思ったことはあった。そしてそのたび親に聞いていた二人がどんなにうれしそうに話したことか。二人がどんなに寂しそうに話したことか。お父さんは小さいころ、「アニメ」というものを色がチカチカして写真が動く機械で見ていた。じゃんけんより面白かったそうだ。お父さんがいつも読んでくれていたお話に動く絵を足したものと言われたときは確かに見てみたいと思った。お母さんは小さいとき顔にいろんなものをつけたり塗ったりしていたと言っていた。特に効果はなく、自身の見た目をよくするものだったらしい。お母さんはその塗ったりする「化粧」が「学校」というところでは禁止なのに女の子はみんな隠れてやっていた、と笑いながら言っていた。自分の見た目をよくするのに化粧をしたのに、人に見られてばれたら叱られる。それでは意味がないのではないかと聞いたら、お母さんは、
「それでも私たちはやっていたのよ。あのバカみたいなことが懐かしい…」
と言って涙をポロポロ流していた。これにはお父さんもうなずいていた。