5 近藤『弁当』
俺が周に出会ったのは入学してから二週間程経って、ある程度クラス内でのまとまりが出来始めた頃だった。
その頃の周は誰とも話さないでまさに一匹狼のような奴だった。
周りの人が話しかけても基本は無視か冷たく返していた。
なんとなく、俺は周のことが気になった。
だってなんかかっこ良くね? 一人で生きていけるような雰囲気のある奴。俺だけかな?
「なぁ、周って何が好きなの?」
昼休み弁当箱を出していた周に俺が話しかけると気だるそうに周は首を上げて顔を見た。心底嫌そうにため息を吐いてから周は
「特に何も」
と、素っ気なく返した。
「一緒に飯食おうぜ!」
そんなことお構いなしに俺は左手に持っていた弁当箱を周に見せる。
「はぁ…」
「良い?」
「別に良いけど…」
「おっしゃ!」
早速俺は手に持っていた弁当箱を周の机に置いた。周と俺の席は離れていて、椅子を持ってくるのも面倒なので周の隣の人に借りた。
周は何も言わずに、弁当箱を開けて箸を取り出した。俺も弁当箱を開けた。
俺は周の弁当を見て、思わず喉が鳴った。
「めっちゃ、旨そうじゃん…」
「え?」
「いや、周の弁当めちゃくちゃ美味しそうだったからつい」
周の弁当はコントラストがしっかりとしていてとても綺麗に見えた。
「…ありがとう。頑張って作ってるから褒められると嬉しいよ」
「え、周弁当自分で作ってるの」
「まぁ、うん…」
「マジで! 俺も自分で作ってるんやけどさ、そんなに上手く出来んからスゲー!」
「君のも充分美味しそうだよ」
「マジ? なんか自信ついたわ」
なんだか不思議だった。
好んで一人でいるのかと思っていたけど、話してみると意外と拒絶せずにいてくれる。
「周ってさ、もしかして人見知りだったりする?」
「多分…なんで?」
「そんな気がしたから」
そこからは他愛もない話で盛り上がった。
……主に俺が。
そうして、周とはたまに話す仲になった。
昼休みや授業の合間に毎日話しかけていく内に段々と周は自分を曝け出すようになっていった。
「周一緒に帰ろーぜ」
「え、近藤家同じ方向だっけ」
「途中まではな」
「なんで知ってるんだよ僕の家を…」
周は暫く怪訝そうに見ていたが、一緒に下校してくれた。
道中は最近のマイブームである可愛いグラビアアイドルの話をした。
驚きだったのが周は巨よりも貧の方が好きだと言うことだった。男は皆でかいのが好きだとばかり思っていたから驚いた。
それでも、周は俺の趣味全開のグラビアアイドルの話に相槌をうちながら聞いてくれた。いつも、次第にグラビアアイドルから話題は変わっていくのだけど。
「周はさ、好きな人とかいないの」
「どうしたの急に」
「いやさ、俺達入学してからもうそろそろ一ヶ月経つじゃん? 俺まだまともに女の子と話したことないんだけど」
「僕もだよ。女子とまともに話したことない」
「そう言えば、六組に可愛い女の子いるって噂になってた子がいたなぁ。なんだったかな、確か…いちの…なんだっけ」
思い出せそうで思い出せない。
歩きながら記憶を辿って思い出そうとしてみたが出てくるのは昼に周に貰った卵焼きだった。
あれは、絶品だった。程よく甘い俺好みの卵焼きで毎日食べたいくらいである。
「そんなことよりさ、部活とか近藤は決めたの」
思考が逸れて上の空だったのを周の声が引き戻した。
「ん? 俺は野球部に入るけど?」
「…だから、坊主なのか」
「え、今さらかよ」
周は「確かに」と頬を緩ませた。
そんな調子でいつの間にか十字路まで来ていた。
「俺こっちだから」
「うん、またね」
「おう!」
周と別れて一人歩く。さっきまで他愛もない会話をしながら歩いていたせいかいつも一人で歩いているこの道が寂しく感じた。
「ただいま」
「涼真か、お帰り」
父さんのゴツゴツとした掌が頭を撫でた。
「やめろって」
「おお、すまんすまん。涼真の頭は撫でるのに丁度良い丸さをしてるからついな」
頭に乗せられた手を振り払い真っ先に母さんの所へ向かう。
肩にかけていた学校指定の鞄を置いて、畳の上に正座する。
さっきまで父が居たのかほんのり線香の香りがした。
「ただいま、母さん」
笑顔のままの母さんがお帰りと言ったような気がした。
「涼真ー! 飯出来てるからなー!」
「わかったー。…母さんご飯食べてくるよ」
隣に置いていた鞄を持ち上げて立ち上がる。
もう一度母さんの顔を見てから俺は部屋に向かった。
自室は本当にどこにでもあるような男子の部屋だと思う。勉強机に、漫画が大量にある本棚。ベッドの下にはグラビアの本が…とかはさすがにない。現代はベッドの下なんかより液晶の奥の方が安全だ。
俺は荷物を置いて制服の上着だけを脱いですぐにリビングへと足を進めた。
「おっ来たか」
「今日は何?」
「今日は白身魚のフライだ」
台所に立つ父のすぐ側には確かにフライのようなものが見える。
「白ご飯注いどいてくれるか」
「ん」
食器棚から茶碗を取り出して炊飯器から米を注ぐ。
「どうだ? 高校で友達とか出来たか?」
「まあ」
「そうか、割りと心配してたから安心したよ。あんな進学校に通いたいなんて言い出した時はさすがに父さんでも失神しかけたからな」
「ごめん」
「謝るなよ。別に責めてる訳じゃないから。涼真に笑っていて欲しいからさ」
ほれと父はフライの乗ったお皿を机に置いた。
「涼真は部活中学の時と同じで野球するのか?」
「うん、まあ」
返事をしながら白身魚のフライに箸を付ける。
「タルタルいらないのか」
「え、あるなら頂戴」
父から受け取ったボウルには手製のタルタルがとっぷり入っていた。
俺はスプーンでタルタルを掬いフライにかけて頬張る。
家は朝御飯と晩御飯を父と二人で交代しながら作っている。今日の朝は俺が作ったから晩は父が作ってくれた。
お互いに料理は得意でなかったが、五年もすればオリジナルの料理だって作れるようになった。味は保証できないけど。
父は俺の向かい側に座った。
「友達、どんな子なんだ?」
「うーん、人見知りかな」
「他には?」
「なんで、そんなこと聞くんだよ」
「…なんとなく?」
少し不器用な父だけど俺は父との会話が好きだった。いつも、二人で生活するのに困らないくらいの生活費を何時間も働いて稼いで、本当は自分だって辛いはずなのに俺の前では笑顔で。
ふと思う、俺はそんな父に一体何を返せるのだろうか。
「父さん」
「ん? どうした?」
「いつもありがとう」
自然と心から溢れた言葉に父は箸を咥えたまま固まったが、すぐに
「照れるな…」
と頭の後ろを掻いた。
翌日、少しだけ早くに家を出た。
別に昨日の事が恥ずかしくて父さんと顔を合わせるのが気まずいとかそう言うのではない。
朝焼けの色に照らされながら通学路を淡々と歩く。
今日は周と何をしようか。そんなことを考えているといつの間にか十字路まで来ていた。
自分の来た道以外の三方向を見てみたが人一人見当たらない。
それもそうかと息を吐き学校までの道のりを歩いた。
学校に着いて階段を上り教室の扉を開ける。
予想はしていたが教室は閑散としていた。
俺は自分の席について辺りを見渡す。誰もいない教室にいると世界にたった一人のような気がして、瞼を閉じた。
「おはよう」
朝のホームルームが始まる五分前に周が教室に入ってきた。
俺はおはようといつも通りに返して、机に伏した。早起きしすぎたせいか多少の眠さを感じていたので、あと五分間瞼を閉じていたかった。
教室は俺がついてから五分ほどして賑やかになった。
周の次に入ってきたのがクラスの中でもいつも中心にいるような奴だったから、後から入ってきた人も尚更盛り上がりやすかったのだろう。
俺はクラスの人とはそれなりに話しているが、どうもあまり良く思われていないらしくたまに嫌な顔をされる。
それでも、皆それを口に出して言わないから段々と俺はクラスの人の考えていることが解らなくなっていた。
その点、周は正直で嫌なことは嫌とハッキリと言ってくれた。不器用な俺は俺なりにそれを何とか直そうと出来るし、本当に助かっている。
朝のホームルームも終わってすぐに席を立ち周に声をかけた。
「周、今日も弁当?」
「近藤は気が早いな。まだ、朝のホームルーム終わったばっかだぞ」
周は呆れた口調でそう言った。
「もし良かったらさ、弁当交換してみない?」
「弁当交換?」
「うん」
「別に良いけど…」
この時のためにわざわざ早起きして弁当を作ったのだ。そう、だから決して、昨日の事が恥ずかしくて父さんと顔を合わせるのが気まずいとかそう言うのではないともう一度言っておく。まあ、実際のところ張り切りすぎて父さんの朝食を作っても時間が余るくらいだったんだけど。
「僕、全然いつもの弁当だけど良いの」
「卵焼き入ってる?」
「え? 入ってるけど、なんで?」
「それだけで、周の弁当を食べる価値が生まれる!」
「はあ」
五分の休憩が終わり皆ぞろぞろと席に座り始めた。俺も席に戻り一限の準備をする。日課表を見ると一限は数学A、この時点で一限から寝ることが確定してしまった。
昼休み、案の定午前中の授業を殆ど寝て過ごした俺は元気に満ち溢れていた。
俺は周の席まで弁当箱を持って軽快に足を運ぶ。
「周!」
いつものように周の隣に座って弁当箱を置く。
すると、周は弁当箱を差し出した。
「弁当交換するんだろ?」
「おう!」
周から弁当箱を受け取って、早速蓋を開ける。
相変わらず周の弁当はとても綺麗で美味しそうに見えた。
「交換するのは良いけど、箸はさすがに自分の使えよ」
「当たり前だろぉ」
そんな軽口を言いながら周の弁当に箸を付ける。まずは、卵焼きから。
「っぱうめぇ!」
「そう?」
「マジで今度教えて欲しいくらい」
「全然良いよ」
「え、マジで!」
周は鞄の中から手帳を取り出して、今週の土曜日なら空いてると俺に見せた。
手帳には図書館や塾と言った感じに抽象的な予定が書いてあった。
「土曜日な、俺もメモしとくわ」
俺も周のように何かにメモをしようとして色々机や鞄を漁ってみたが、くしゃくしゃになったプリントが出てくるだけでメモできそうなものは一つもなかった。
「スマホのカレンダーとかメモとかに書いておけば?」
「確かにその手があったか!」
やはり、周は頭が良い。
俺は早速スマホを取り出して、カレンダーを開く。周の手帳と違ってスカスカな予定に漸く一つ予定ができた。
今週の土曜日に周と書いてスマホを閉じる。
「周の家と、俺の家どっちでやる?」
「僕の家はちょっと…」
「おけ、じゃあ俺ん家な。集合は昼頃にしようか。丁度お腹空くだろうし」
「わかった」
こうして、周と初めていや高校生になって初めての友達との約束に心躍りながら周の弁当をたいらげる。周も俺が作った弁当を旨い旨いと言いながら食べてくれたので、その日は俺のテンションはここ数年でもっとも高かった。
そのお陰で午後からの授業は冴えに冴えて問題をスラスラと解けた。
まあ、解けただけであってるかどうかはご愛嬌。
放課後は入部届けを出して少しだけ野球部を見学してから自転車置き場にいた周に声をかけた。
「周! 一緒に帰ろうぜ!」
「近藤、暑いから離れて」
「おう、わるいわるい」
春の風は丁度良く俺達の体を涼めてくれる。
周は自転車を手で押しながらゆったりと歩幅を合わせてくれていた。
「あ! そうだ周、野球部のさマネージャー知ってる?」
「知らない」
「俺びっくりしたよ」
「え、なに、想像と違ったとか?」
「違う違う、めっちゃ可愛いマネージャーいたんだよ。もう本当にまさに高嶺の花みたいなオーラのある人が!」
「…あっそう」
周はそれまでの興味を一瞬で失ったようだった。
普通だったら、興味を持つくない?
しかし待てよ、周にはあれが有効かもしれない。
「胸はそんなに大きくなかったぞ」
「………興味ない」
「いやいや、その間でそれは無理あるって」
「うるさい」
周は歩くスピードを上げた。俺は必死にその後をついていく。
「周は部活とかしねぇの?」
「しないかな」
なんとなくわかってはいたが周が部活をしないとなると帰りは一人になるなぁなんて事をぼんやりと考える。
寂しいと言ってしまえばそれで終わりだけど、それだけじゃなくて俺はこの時間が好きなのかもしれない。
日常に空いた穴の中に周と言う存在がスッと浸透していく感覚がこの時間にはあるから。
「なあ、周」
「ん?」
友達になってくれてありがとう。そう言いかけて口を噤んだ。
「どうした?」
「いや、なんでもない」
「なんだよ、気になるだろ」
「なんでもない!」
「近藤、顔赤いぞ」
確かにさっきまで涼しかった筈なのに今は無性に暑い。パタパタと手で扇ぎ風を送る。
恥ずかしいのもあったが、何だか言い訳をしているようにも思えたから俺はそれ以上なにも言わなかった。
いつの間にか十字路に着いて、顔の熱は段々と冷めていった。
周にまたなと軽く手を振って十字路に背を向けた。
目線の先には誰もいなくてただ、長い先の見えない道が続いていた。
俺は後ろを振り返った。
そこにはまだ周がいて、手を振っていた。
「周! また明日!」
「うん!」
俺はもう一度、十字路に背を向ける。
今度は先の見えない道に一歩踏み出した。
※
それを見つけたのは、翌日金曜日の放課後家に帰り周が土曜日に来るからと部屋の掃除をしていた時だった。
俺の部屋は畳で襖を開けると右手に掛け軸と府敷布団と掛け布団が仕舞ってある押し入れがあり、左手には小学生以来全くと言って良い程使っていない勉強机と本棚がある。
本棚の中は父から譲り受けた漫画やゲームが殆どを占めている。
部屋は同世代の人から見ても割りと綺麗な方だとは思う。布団を仕舞っている押し入れの下側を除けばだけど。
普段、布団の出し入れにしか使わない押し入れ。その下にはなにもない空間があった。その空間をどうにか有効活用しようと当時小学生で部屋の汚さに定評のあった俺は考えた、そして、天才的な案を生み出した。
「うわっ、ひっでぇや」
出てきたのは大きな箱でレゴブロックやら人形やら絵本やら使わなくなった教科書やら、あと埃がぎっしりと詰まっていた。しかも、それが一つじゃなくて三つも四つもある。
そう、当時天才小学生だった俺は片付けるのが面倒だったおもちゃやら使わなくなった教科書や教材を全て乱雑に放り込んだのだ。
それを、片付けること無く今や高校生。さすがにそろそろ片付けないとまずい。まあ、手遅れの可能性もあるけど。
「我ながら、あの時の自分は馬鹿だったんだな……今もそんなに変わらんか」
そもそも周は来るとしても部屋だけで押し入れを見る機会なんてないのに何故押し入れまで片付けるのかって?
周がお泊まりするって言ったらどうするんだ!
俺は先ず上に積まれた埃の山を崩すようにごみ袋に移す。
「頼むから、虫だけは勘弁してくれよぉ」
俺はある程度汚くても平気で過ごせるし、泥なんかが顔や体に付いたとしても笑えるのだがどうしても虫だけは無理なのだ。
何が嫌なのかと言われれば全てと答える程に。
「ひゃわぁ! ……なんだよ、ゴキブリの玩具かよ」
驚きすぎて変な声が出た。
「ガキンチョの俺、許すまじ」
俺はゴキブリの玩具を勢い良くごみ袋に投げ込んで、次々に片付けを進めていく。
一つ目の箱が終わり次の箱に移る。
一つ目の箱はまとまりがなく色々なものが無造作に詰め込まれていたが、これは違った。
埃は相変わらず被っているがある程度丁寧にまとめられている。
俺は軽く埃を払いながら箱の中身を一つ一つ出していく。
「これ、アルバムか?」
取り出した本のようなものに手が止まった。
それは、アルバムのようでタイトルは日付になっている。
アルバムに書かれている日付は六年前のもので、俺は恐る恐るアルバムの一ページ目を開いた。
中身は意外と、と言うか想像通りのものだった。おそらく撮影者は父で写真は母と俺のツーショットが主なものだった。
アルバムを開く前は現実と写真の思い出との乖離に不安だったが、見てみると案外あっさりとしているものでこんなことあったなとか懐かしいなとかそんな事を思った。
時間を忘れ過去に想いを馳せた。
「あっこれ」
アルバムの写真を見ていると家族写真があった。
「うわぁ~懐かしいな。たしかこれ父さんがどうしても家族で写真が撮りたいって言って病院の人をめちゃくちゃ説得したんだっけ」
家族写真を指でなぞるようにして撫でた。
この時の母は笑顔で俺は胸が握り潰されたかのように感じた。
指が震える。吐く息もなんとなくだけど震えているような気がして、俺はアルバムを閉じようとした。
その時、一枚の写真がアルバムから抜け落ちた。木の葉がさらりと落ちるように。
裏返しのそれを右手で拾い上げた。
「ん?」
俺はその写真を見て動きを止めた。
端から見れば本当に微動だにもしていないだろう。
その写真は他の写真とは違った俺も父も、母ですら写っていない。
「周?」
その写真には本来写っている筈の無い周が写っていた。周は、今にも上から降ってくる電光掲示板に潰されてしまいそうだった。
「なんだ、これ」
周と出会ったのは高校に入ってからで、それまでは顔すら見たことがない筈なのに。
俺はその写真を持っていないといけない気がした。別に理由なんかない。ただ、なんとなくこの写真は俺が持っていないといけない気がしたんだ。
「涼真ー、ただいまー」
玄関の方から父の声がして、我に返る。
縁側から見た空はもうすっかり暗くなっていた。
俺はその写真を机の上に置いて、リビングへ向かった。
晩御飯を済ませて部屋に戻るとそのままにしていて片付けを始める前よりも汚い部屋が俺を歓迎していた。
机の上に視線をやる。
そこには父が帰ってくる前にも見た周の写真があった。
俺はその写真を手に持ってもう一度その写真を良く観察する。
「それにしても、このままだと周電光掲示板に潰されね?」
その写真はもし時間が止まっていなければ周が今にも潰されそうな瞬間を切り取っていた。
そもそも、誰がこの写真を撮ったんだ。日付すらない。
俺は、アルバムを片っ端から見てみたがこの写真のように周が写っているものはこの写真以外無かった。
ただ、アルバムを入れていた箱から一つだけ興味が湧いたものがあった。
「このガラス玉めっちゃ綺麗だな」
それは他のアルバムに埋もれるように箱の一番底で埃と一緒になっていた。
案外、傷などはなく本当に綺麗な淡い青色をしたガラス玉。
幼い頃の俺はラムネ瓶に入ったガラス玉を大量に集めていたのだか、その殆どはなくしていた。だから、なんとなくこのガラス玉を見つけた瞬間は嬉しかった。
ふと、我に返りガラス玉を置いて代わりに写真を手に取り見比べる。
周が写っている写真と、普通の俺と母さんのツーショット写真。
現像に使われている紙は同じ手触りで色彩も両方少し褪せている。
「うーん、わかんね。んな事よりも、部屋片付けないとな…」
俺は諦めて散らかりに散らかった部屋の掃除を再開することにした。
ここまで読んで下さり感謝します。
誤字脱字あれば報告して下さい。
ブックマークやレビュー、感想をくれると飛んで喜びます。
物語の中で近藤が一番好き。