表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/13

3 歩『ローファー』

今思えば、あの夢は予知夢だったのかもしれない。もっと早くにその事に気が付いていれば未来は変わったのかもしれない。

なんて考えてもみたけど、多分私は何も変えられなかったんだろうな。


          ※


「頑張ってね」

「うす!」


私が応援すると野球部の部員全員が低く響くような声で返事をした。

土埃と汗の匂いが鼻腔を刺激する。

決して良い匂いとは言い難いがこの匂いは青春の香りである。私はこの匂いが好きだ。


「真島先輩!」


聞き馴染みのある私の名前が部室の扉の方からした。

扉を見ると、二年の野球部員が、私が部室の片付けをしている時に話しかけてきた。確か、近藤くんだっけ。


「どうしたの?」

「あの、この後用事とかありますか」


私はなれた手付きで硬式ボールの入った籠を持ち上げて棚に置く。

結構な重量があるが三年間もこの作業をやり続けていればどうってこと無い。


「ないけど…」

「じゃあ、この後少し良いですか」


私にはある程度この後の事が予測できていた。

自分で言うのもあれだが、私は意外とモテる。

確かに文武両道、才色兼備、眉目秀麗ともあれば妥当だとは思うが、私はどれにも当てはまらなければ大して可愛くもなく愛嬌もない。何より、私は告白されるのが大の苦手なのだ。

別に好きでも、嫌いでもない好感度平均値の人に想いを告げられたとしても私は何とも思わない。でも、相手は違う。私は何とも思わなくても、相手は青春の醍醐味をこの一瞬にかけている。

だからこそ、断った時の相手の表情やその後の関係が途轍もなく面倒くさい。

それに、私は――


「この後、ね。わかった少し待ってて」

「はい!」


私は告白を断る為の適当な文句を考えながら残っているマネージャーとしての作業を終えた。


「真島先輩、お疲れ様です」

「あ、美喜みきちゃんお疲れ」


部室の扉を開けたのは一年生の美喜ちゃんだった。

美喜ちゃんは今年から野球部のマネージャーになった真面目で愛嬌のある女の子だ。

野球部だけに限らず他の部の人達からも可愛いと評判になっていると聞いたことがある。


「真島先輩、この後空いてますか?」

「あー、ごめん!この後用事あるんだ」

「そうですか…」


美喜ちゃんはあからさまに俯いた。

こういう感情表現が豊かで自分の気持ちに素直なところが彼女が可愛いと言われる所以なのだろう。

所謂、可愛らしい女の子という括りになると思う。……そのままだな。うん。


「また今度、誘ってよ」

「良いんですか!」


美喜ちゃんは顔を上げてパッと明るくなった。

ないはずの尻尾が私には見えたような気がした。


「それじゃあ、私は用事あるからまたね」

「はい!また明日!」


私は鞄をもって部室から出る。

部室の中が暗かったせいか春の陽射しが目に刺さる。

私は鞄の中に入れていた野球部の帽子を取り出して、深く被った。

今の時間帯だと野球部は自主練習の時間だろうから、先に着替えてから彼を見に行こう。

私は野球部の部室から少し離れた場所にある野球部にいるマネージャー専用の更衣室へ向かった。

更衣室の中には誰も居らず静まり返った部屋の中で下着以外の服を全て脱ぐ。

汗のせいで肌寒く感じる。

私はタオルで汗を拭き取り素早くロッカーに入れてある制服を取り出して着替えた。

私はすぐに部員が自主練習をしているであろう校庭付近まで急ぐことなくゆっくりと歩いていった。

私が校庭に近づくとさっきの部員が素振りをやめてこちらに走ってきた。


「ここじゃああれなんで場所を変えましょう」


私は彼に促されるまま校舎裏へとやって来た。

校舎裏なんて恋愛漫画などで良くある定番の告白場所だ。

態々ここを選ぶということはもうそう言うことだろう。初めからそうだとは思っていたけど。

校舎裏に来てから彼は黙っている。


「あの…」


私はここに長居して誰かにこの場を見られるのも面倒なので声をかけて催促する。

私の思惑は成功し彼は覚悟を決めたように私に真剣な眼差しを向けた。


「真島先輩!俺、あなたの事が好きです!付き合ってください!」


私はわざと考えるような間を置いてから


「ごめんなさい」


と、一言。

彼は落胆を顕にする。


「そうですか、ありがとうございます。時間とってくれて」


そうとだけ言うと彼は気まずくなったのかいつもの調子に戻った。


「さっ、戻りましょう。真島先輩、男と一緒だと色々勘ぐられますから」


私は何も言わずに先を行く彼の背中を眺めていた。

ここまで、潔く諦めるのも珍しかったから拍子抜けしていたのだ。

私に告白してくる人は皆、理由を聞いてきたり、なかなか引き下がらなかったりするのだが彼はさっぱりしていた。

まあ、私としてはありがたい。

私は彼が校庭に戻ってから三分程してから校庭の方へ戻った。

皆、相変わらずバットを振っていたり、投球練習していたりと汗を流していた。

部活の時間はとっくに過ぎているのに皆熱心だなぁと他人事のように思う。

本来ならマネージャーも付き合わなければいけないのだが、この学校は進学校で部活よりも勉学に力を入れているため三年生は早く帰って大学入試の勉強をしろと先生達から言われている。

勿論、レギュラーメンバーは部活動に残されるのだが大概レギュラーに選ばれるのはスポーツ推薦で入ってきた人ばかりなので、その道を全力で狙う人しかいない。

私は不純な動機で野球部のマネージャーになった。だけど、今はもうなんで続けているのか自分でもわからない。

けど後悔はしていないし、できることなら皆と同じ様にこの場に残って居たいのだが、残っていると説教を食らってしまうので渋々帰路に就く。


「はぁ」


道に転がった小さな岩を右足で蹴飛ばす。


コッ


蹴った岩が止まった先で何かに当たった音がした。

私は岩をぶつけた何かを拾い上げる。

それはガラス玉だった。

ラムネ瓶の中に入っているような淡い青色をした綺麗なガラス玉。

そのガラス玉は岩をぶつけたのにも関わらず傷一つ付いていない。

別に綺麗なだけで何の変哲もないガラス玉だったけど、どこかに投げ捨てるような気にもなれなくて私はガラス玉を鞄に入れて帰った。


「ただいま」

「お帰りなさい」


リビングに入るとすぐにお母さんが台所から振り返って私に笑顔を向けた。


「お父さんは?」

「もうすぐ帰ってくると思うけど」

「ただいまぁ」


噂をすればお父さんの疲れている声が玄関の方から聞こえた。

ドタドタと廊下を走る音がして遂にはリビングにその音がやって来た。


「たぁだいま!」

「きゃっ」


お父さんがお母さんに抱きついた。私の家族は誰から見ても確実に仲が良い。だからと言って、娘の前でこうもイチャイチャされると私も反応に困る。


「ちょっと!今料理してるから」

「えー」


母の側を引き剥がされたお父さんは悲しそうにソファーの上にスーツを脱いだ。

そして、つまらなそうにテレビを眺め始めた。


あゆみ料理手伝える?」

「全然いいよ」


私は一度自室に戻って荷物を置いた。

本当は先にお風呂に入っておきたかったが別に良いかと適当な思考で、またリビングに戻った。

母の隣で今回の料理の具材を切っていく。

私が今切ってるベーコンや野菜を見るにおそらく晩御飯は炒飯だろう。


「こんなもんでいい?」

「ん、ありがとう。後はお母さんがするから机綺麗にしてて」

「わかった」


私はお父さんを呼びながら机の上を綺麗にする。片付けると言っても殆ど物がない机は少し拭くだけで綺麗になった。

お父さんが椅子に腰かけると同時にお母さんが料理を運んできた。

私の予想は当たっていたようで炒飯が三人分置かれた。


「いただきます」


私は早速炒飯を頬張った。


「おいしい!」

「……そう」


後片付けをしている母から返ってきたのは素っ気ない返事だったが横顔から見えた口元が綻んでいるのを私は見逃さなかった。


「ごちそうさま」


私は食事を終えてすぐに部屋に籠った。

自室というのは誰でも一番落ち着くのではないだろうか。

軽く息を吐いてスマホを開く。

同級生から多くのメールの通知が来ていた。私はそれに一つ一つ丁寧に対応して、電源を切った。

疲れた。

腕をだらりと下におろして、その場にしゃがみこむ。この空間だけが素の私で居られる。

そういえばと、勉強机に掛けてある鞄の中から帰りに拾ったガラス玉を取り出す。

本当に綺麗なだけのガラス玉を握って願う。


――私が私でいられますように。


          ※


彼女と出逢ったのはその二日後のことだった。

その日は日曜日で部活もオフだった。

私は暇な時は近くにある書店や図書館を回っているのだが今日は少し遠出をして隣町の図書館まで来ていた。

読みたい本をいくつかまとめて借りて今日のご飯何だろうと考えながら靴箱から靴を取り出した時。


カコン


普段は気にしないがその一瞬だけ誰かのローファーが地面に落とされた音が軽やかに聞こえた。

音がした方は隣の靴箱で私は視線をなだらかにそちらに向けた。

長い黒髪に膝よりも少し長めのスカート、何より眼鏡の奥にある黒く濁ったその瞳に私は強く吸い込まれそうな感覚がした。

模範的文学少女のような彼女は、手から離して無造作に地面に転がったローファーを足で履きやすいように立てて足を通した。


「何ですか」

「え」

「さっきから私の事をじっと見て、なにか付いてますか私に」


少しキツイ言い方で私に詰め寄ってくる。


「え、いや、違くて、えっと…」


私は必死に何か言い訳がないかと頭をフル回転させた。


「あなたが、綺麗だなと思って!」


その結果出てきた言葉は余計に怪しい本音で私はしまった! と声が出そうになる。

外から聞こえる小鳥の囀りが透き通るように私と彼女の間に流れた。


「年上、ですよね」


彼女は私を上から下までしっかりと見てから目を細めた。

彼女が何歳なのか私には見当も付かないが多分私の方が年上だろう。何となくそう思う。


「本、良く読むんですか」


彼女は私が抱えるように持っている図書バッグを見てそう聞く。


「え、まあ、多少は…」


私の本音は華麗にもスルーされ、本の話題になる。

それもそうか、いきなり初対面の人に綺麗とか言われても変な人としか思わない。

私は数秒前の自分を振り返って顔が熱くなるのを感じた。


「どんなの読むんですか?」


そんな私を他所に彼女は淡々と私に質問を重ねる。


「えっと、ミステリーが好きで」

「そう」


聞いてきたのにも関わらず彼女の反応は素っ気ないもので私は少し不安になって顔を見る。

眼鏡の奥にある瞳はじっと私の顔を見ていた。


「それで、何で私を見てたんですか?」

「それは始めにも言った通り綺麗だと思ったからです!」


私は恥じらいを捨ててもう一度声を大にして彼女に素直な気持ちを伝える。


「すみません、図書館ではお静かに願います」

「あっ、すみません」


司書の方が館内から出てきて私は注意された。


「…変な人」


それを見ていた彼女はキョトンとした顔で私を見ていた。そして、ふっと頬が少し緩んだ。

その顔が私の心を完璧に射抜いた。心臓が脈を打つ速度が異常なくらいに早くて痛い。


「ここだと、迷惑になるのでどこかカフェにでも行きますか?」


意外にもその提案をしてきたのは彼女の方で、私は彼女からの提案に大きく頷いた。

図書館からほんの数分歩くと、ほんのり珈琲の匂いが辺りに漂い始めた。

その、匂いの元がある扉を開く。

すごくお洒落な店内は私には大人っぽ過ぎるような気がしたが、彼女は堂々としていて私は一層彼女の事が気になった。


「雰囲気が良いお店ですね」

「ここは、私のお気に入り。気に入ってくれたならよかったです」


私の感想に少し戸惑うように視線を泳がせた彼女はメニューを開いた。


「どれにする?」

「えっと、それじゃあ…」


私はメニューを一通り見てみる。

もう一度。そして、もう一度。同じ所を何周もした。


「決まりました?」


メニューの上から彼女の顔が覗く。

その瞳と目が合った。


「これで…」

「わかりました。抹茶ラテですね」


彼女は慣れているようで店員さんを呼んですぐに注文を終える。

なんだか、彼女の方が年上な気がしてきた。


「そういえば、自己紹介がまだでしたね。私は、真島 歩と言います」

「私は…」


彼女は少し考えてから顔を上げた。


「私は、二ノ宮 彼方と言います」

「二ノ宮さんって呼べば良いですか?」

「お好きなように呼んでください」

「じゃあ、二ノ宮さんはその…趣味、とかってありますか」

「読書ですね」


即答だった。わざわざ、図書館に本を借りに来るのだからそうだろう。私は、当たり前の事を聞いてしまったのかもしれない。


「真島さんの趣味は?」


気まずそうにしていたのが表情に出たのか二ノ宮さんが私と同じ質問をした。


「私も、読書ですね」

「ミステリーが好きって言ってましたもんね」


店員が私の前に抹茶ラテを置いた。

直後に二ノ宮さんの前にはミルク入りの珈琲が置かれた。

運んできた品を置き終えた店員は浅く一礼をすると他のお客さんの対応に行ってしまった。


「それで、私が綺麗ってナンパしてきた理由は何ですか?」


二ノ宮さんは店員がどこかに行ったのを確認してから本当に聞きたかったであろう事に話をシフトした。


「えっと、というか、ナンパとかではなくて…」

「なくて?」

「確かにちょっと見すぎたなって今考えれば思うんですけど、あれは本音が漏れたというか間違えたというか…」

「間違えたんですか?」

「ああ! いや! 違くて!」


本音を言えば間違いにしかならなくて私は頭を抱える。

そんな私を見ていた二ノ宮さんはチョコレート色の珈琲を一口含んだ。


「まあ、良いです。嫌ではなかったですから」


そう言って二ノ宮さんは頬を綻ばせた。その顔に私はまた心臓が跳ねた。

私も抹茶ラテを一口含んだ。


「熱っ」


思ったより熱くて唇から咄嗟にカップを離す。


「真島さんは、いつもあそこの図書館を利用しているんですか?」

「いえ、いつもは隣町の図書館を使ってます。今日は気分転換にここまで来て」


隣町と言った所で二ノ宮さんが一瞬固まったように見えた。


「どうかしました?」

「え」


私が二ノ宮さんに話しかけると止まっていた目線が動いた。


「ちょっと考え事をしてて、それで図書館では何を借りたんですか?」


二ノ宮さんは私が横に置いていた図書バッグを見た。

私は中から今日借りた本四冊を取り出して机の上に並べる。

二ノ宮さんは右から左へ本を眺めて一番左の本を見てあっと声を上げた。その本は、探偵ものの小説で幾つかのシリーズがある人気作品だった。


「このシリーズ面白いですよね」


二ノ宮さんは私に目を輝かせて言った。


「そうですよね、私も好きです」


折角掴んだ会話のきっかけを失わないようにしたい。


「二ノ宮さんはどの話が好きですか」

「うーん、選び難いですけど…強いて言うなら――」


そこからは話が弾んだ。お互いに好きな本が似通っていたこともあって話題は尽きず、時間を忘れて本の話をした。

本当に楽しかった。

次第に日も暮れて店内も人が減って落ち着いてきた。

まだ、二ノ宮さんと話をしていたかったが私の帰りのバスの時間もあるのでこの辺で帰らなければいけない。


「そろそろ、私帰らないといけなくて」

「もうそんな時間…」


二ノ宮さんは残念そうにそう呟くと立ち上がった。


「今日は楽しかったです」

「私も楽しかったです」


これで終わりかと思うと私の中に欲が出てくる。


「あの、連絡先交換しませんか」

「はい?」

「あっ、嫌なら無理にとは言いません…」


二ノ宮さんは少し考えて鞄の中からスマホを取り出した。


「私には、やり方がわからないのでお願いします」

「良いんですか!」

「良いですけどあんまり、他の連絡先は見ないで頂けると…」

「安心してください」


私は二ノ宮さんの連絡先を自分のスマホに登録し終えてスマホを二ノ宮さんに返す。

私のスマホの画面に『彼方』と入っているのを見て思わず笑みが溢れる。


「また、いつかこうしてお話しましょう」


私はそう言ってお金を払ってその場を後にした。

自分の体が浮くような感覚がバスから降りても残っていて家に帰ってすぐにベッドに飛び込んだ。

いつの間にか寝ていたようで帰った時間から二時間経っていた。

そろそろ、晩御飯食べないとなと思い部屋の扉を開けた時扉が何かを弾いた。

もしかして、と扉の裏を見る。


「やっぱり」


私は床に落ちていたガラス玉を拾い上げる。昨日の夜もガラス玉を握って寝ていたのだが、今朝になると失くなっていて必死に探した。


「こんなところにあったんだ」


今朝も探したような気もしなくはないが、あったから別に良いかと私はガラス玉をポケットに入れた。

私はこのガラス玉を気に入っていた。

毎日ガラス玉を握って寝ると何だか安心するのだ。

だから、失くなった時は本当に焦ったし相当に落ち込んだ。

わざわざ、今日遠くの図書館まで行ったのはそんな気分を変えるためだった。


「お母さーん!今日のご飯何ー」


リビングに向かってそう聞くと


「パスター!」


と、返ってきた。私も手伝いに行こうと思った時、ガラス玉を入れたポケットがじんわりと温かくなってきた。

私はポケットに手を入れてガラス玉を握る。

温かい、というか段々熱くなっているような。

私は急いでガラス玉をポケットから出した。

ポケットから出すと熱は治まっていつもの淡い青色のガラス玉だった。

その色は熱どころか涼しげな色で私は首を傾げた。

廊下の明かりにガラス玉を翳す。


――あれ、何かある?


ガラス玉の奥に何かが映ったように見える。

うまく見えないそれを私は何とかして見ようと目を凝らす。


「ただいま!…って歩何してるの?」

「へ?」


いきなり声をかけられて声が上擦った。

玄関の方に顔を動かすと仕事から返ってきた父がこちらを不思議そうに見ている。

私は咄嗟にガラス玉を隠してしまった。


「なに隠したの」


父の声が少し低くなった。


「ああ、いや、別に大したものじゃ」

「見せなさい」

「…はい」


私はガラス玉を父の掌に乗せる。すると父は、目を白黒させた。


「え、これ? これ、隠したの?」

「…うん」

「え? 何かもっとこうさお母さんのリップ使っちゃいましたとかそういうのじゃなくて?」


父は私とガラス玉を交互に見比べて安心したように私にガラス玉を返した。


「もう大丈夫、安心したから。疑ってごめんね」


父は私の背中をポンと叩いて、さぁ飯だ飯! とリビングの方へ向かって行った。

私はもう一度ガラス玉を廊下の明かりに翳したが、奥には明かりが透けて見えるだけで何かがあるようには見えなかった。


「気のせいだったのかな」

「歩ーご飯できたよー」


リビングから聞こえた母の声に私は返事をして、ポケットにまたガラス玉を入れた。

ここまで読んで下さり感謝します。

誤字脱字あれば報告して下さい。

ブックマークやレビュー、感想をくれると飛んで喜びます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ