エピローグ
「卒業証書授与」
あの夏から一年と半年が過ぎ、僕達はなんの変哲もない日々を過ごした。
当たり前の毎日に嫌気が差す時も有れば、それで良いんだと思う日もあった。
「三年一組、周 進」
「はい」
でも、どうしてか僕はそんな普遍的な毎日が堪らなく不安だった。
僕の家庭は歪で、中学の時はいつも一人でいた。毎日が地獄みたいで何度も僕がこの世から消えてしまえばいいと思う日もあった。
「周! 卒業式終わったし一緒に帰ろうぜ! ってあれ? 周は?」
「涼真、周くんはもう帰ったよ」
「マジ!?」
高校に入って作る筈の無かった友達が出来た。
初めはからかわれているだけだと思っていた。
だから、素っ気なく愛想の悪い奴を演じていた。それでも、そいつは毎日毎日鬱陶しいくらいに僕を気にかけた。
正直言って本当にウザかった。
だけど、僕はソイツに感謝してもしきれない。
今はかけがえのない友達で親友だ。
「近藤くんもう帰るの?」
「真島先輩! 来てたんですか!」
「そりぁね、一応後輩の門出を見守ってあげよっかなって」
「そう言えば、周見てませんか!」
「え、見てないよ。もしかして置いてかれちゃった?」
「そうなんすよ!」
ここからは僕の勝手な昔話だ。
小学生の時に僕は夏祭りに出掛けたんだ。
とても小さい地域の祭りで、人は少なくて屋台の量も両手で数えられるくらいしかなかったんだ。
僕はその時ラムネを買ったんだ。
炭酸の泡と瓶に付いた水滴が祭りの雰囲気に呑まれていた僕の心を軽くしていくようだった。
きっとこの時から僕の運命は絡まっていったんだと思う。
「でも、周が一番会いたがってましたからね」
僕はラムネを飲み干してから何とかしてラムネ瓶に付いたプラスチックの飲み口を外して、瓶の中からガラス玉を取り出した。
そのガラス玉は、さっきまで触れることすら出来なかったのに、今は僕の掌の上に転がるように乗っていた。
僕はそのガラス玉を覗いたんだ。
そしたら、そこに君がいた。
君は僕に屈託のない笑顔で言ったんだ。
「綺麗だね」って。
僕は半ば放心状態で君を見ていた。
僕は恥ずかしくて聞こえない振りをしてもう一度ガラス玉を覗いた。
歪んだ世界に君が、君だけがいた。
「彼方さん!」
プリントを持っていない手で扉を開けると病室の奥に窓から外の桜見ている君がいた。
君は咄嗟に僕の方を振り向いた。
あの日あの時、あの淡い青色に光るガラス玉の向こうに君がいて、僕と君を取り巻く全ての運命の歯車が動き始めたんだ。
「ただいま、進くん」
そう言って笑う君の顔は、まるで、ガラス玉のように透き通っていた。
病室からはちょうど満開の桜が見えた。
「それ、全部テスト用紙?」
ふと、彼方さんが僕の手元を見た。
「うん、あの時の」
「どっちが勝ってた?」
「それはね――」
きっと、僕達のいる場所は今すぐには何も変わらない。家族との関係も失ったものも何も変わらない。だけど、これから先の未来は少しづつ変えていく、変わっていく。だから、大丈夫だ。
では、恒例のここまで読んで下さり感謝します!
あとがきは本編とは殆ど関係ないです!
藍空 哀です。今回のテーマとしては『家族』そして『悩み』を第一に考えてきました。
主要人物の全員が何かしら家族に対しての想いがあって自分と葛藤しながら進んで行く物語が書きたくて構想を練りました。
結果、こんなに文字を打ったのは初めてだったので拙く、読んでくれた皆様に伝わりずらい所は多くあったことでしょう。それでも、最後まで読んで下さった皆様に感謝を。
長編は今年出せないかもしれませんが、短編は何か思い付いたら投稿しますね。
最後に、感想やレビュー、ブックマークしてくださると飛んで喜びます!
長くなりましたが、長編の次回作が出たらその時はよろしくお願いしますね!
では、また。




