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はじまり はじまり

 これは、八代将軍 徳川吉宗が将軍に就任したばかりの頃のお話。


 吉宗は紀州藩主だった頃からの家臣を連れ、江戸城に入った。


 その際、引き連れた家臣は、近くにいた四十名余りのみ。


 嫡男(家を継ぐ男子)の家重などの家族は後から江戸に来る。その家族を陰から守って江戸に入ったのが、かの有名な御庭番衆なのである。


 総勢十七家の彼らは吉宗が組織した忍び集団。元々貧しい暮らしを強いられていた彼らは吉宗に見出され、子飼いの忍びへと変貌した。


 その忍び衆は、吉宗の耳目となるべく江戸へと招集されたのだ。

 信頼のおける者として護衛任務を兼ねて。



 そして、彼らの家族も後を追う。誰もが田舎を出て江戸という都会暮らしをするという変化に期待と不安を抱えているような表情をしている。


 そんな中でもキョロキョロと辺りを見回し、気になるものを見つけては夢中になり、行列から置いていかれては、急いで戻るを繰り返す人物が二人。


 動きも雰囲気も似た母子に見えるが、そうではない。


 彼女達は本編の主人公、宮地日向みやじひなた川村日葵かわむらひまりの姪、叔母コンビだ。


 この落ち着きのない二人。紀州和歌山から江戸までの長旅にも関わらず、他の女衆とは比べ物にならないほど、元気が良い。



 現に姪の日向は、最後尾から行列を追い越し、木に登りだした。

 まるで猿の如くスルスルと。


「おやおや~。ひまりおばちゃん! 一町(200m)先に峠の茶屋を発見」

「でかした日向! じゃ、お先!」


 団子屋の報告を聞くや否や駆けだす叔母の日葵ひまり


「あ、抜け駆け禁止です! 負けませんよ~!」


 結構な高さに登っていたというのに、音もなく着地した日向ひなたは後を追っていく。



 と、まあこんな感じである。

 話は戻るが、なんでこんなに元気があるのかということ。


 それもそのはず、なぜか彼女らは女子だてらに忍術修行を潜り抜けた《《くノ一》》なのだから。


 御庭番衆には、くノ一は彼女たちしかいない。そもそも庭番として紀州藩に仕えていた侍達が御庭番衆になったのだから、御庭番衆には男しかいないのだ。


 だというのに持ち前の愛嬌で指導官である忍びの頭領に好かれ、吉宗とも懇意だった事もあり忍術修行に混ざる始末。

 やらせてみれば男共より成績が良いときたもんだ。


 それを聞いた御庭番衆の筆頭は、正式に、くノ一にならないかと打診するも断わられる。

 その時の御庭番衆の筆頭の顔ときたら、俗に言う、鳩が豆鉄砲を食ったようと言えば良かろうか。


 大恩ある主君の吉宗が、将軍に選ばれた時より驚いた顔をしていた。


 なんせ、断った理由が忍者になってみたかっただけだからとの事。

 そんな顔になっても仕方なかろう。


 もしかしたら、驚いたのではなくて、呆れていたのかもしれない。



 しかし、流石は御庭番衆筆頭の男。

 彼女たちの才能を惜しんで、引き止めたのだが、彼女たちの意志は変わらない。


 仕方なく叔母の日葵ひまりを同じ御庭番衆の川村家に嫁がせ、その才能を次代に託すことを目論む。

 宮地日葵は、こうして川村日葵となった。


 叔母である日葵は、婚儀自体は了承したが、他家の嫁になったところで、彼女はどこ吹く風。


 御庭番衆筆頭の父親と仲も良く、一緒に薬草を摘みに山に行ったり、得意の印地打ち(石投げ)で鹿を仕留めたり、野生児顔負けである。


 日葵と日向は性格まで似ていて、周りに好かれる天真爛漫な彼女たちは、興味を持ったことに真っしぐら。


 共通の好物である甘味巡りも止まらず、あっちはフラフラ、こっちへフラフラ。

 出掛けてみればトラブルに巻き込まれるも、得意の忍術を用いて、いつの間にやら解決してしまう。


 

 そんな生活をしてきた二人であるが、叔母の日葵は三十五歳。いくらか分別が付いてきたのだが、日向は十五歳、箸が転がっただけでも楽しいお年頃だ。


 二人合わさると、どうしても猫のような性格が戻ってきてしまい、まるで似た物親子のようになってしまう。


 結局、それ以降も彼女達の気ままな行動は相も変わらず、今に至るという訳だ。



 そんな彼女たちは、まもなく華のお江戸へと辿り着く。


 実のところ、二人の気ままな江戸暮らしは、人を助け、事件を解決し、陰謀に巻き込まれてしまう。

 まさに波瀾万丈といえる日々が待っている。


 しかし、その行動は江戸の多くの人々を助け、大恩のある吉宗を助ける事になるのだが、今はまだ本人達は預かり知らぬ事。


 そんなお話の始まり始まり。

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