神(しの)の結婚式
神達一行はアーキレストの街に到着する。そこで彼女達が起こす行動とは・・・。
小説 風の吹くままに
第九章 神の結婚式
アーキレストの街はラミュソスのような巨大さはないが、それなりの規模のある町だった。平野部の境界に位置するだけあって周辺の村々からの産物がたくさん入りそれを交易する商人や逆に街から村へと貿易をしようとする商人たちが溢れかえっていた。要するに、この周囲の交易中心地として機能している街なのである。
「ラミュソスほどじゃないとしても、賑やかでいい街ね。」
神はそう言った。志郎があわせて言う。
「そうだな。人も多く活気がある。まぁ、反面、問題もあるんだろうが。」
そう言ってる間にも向こうで喧騒が起きているようだった。街の衛兵が急ぎ足で走っている。人が多くなると揉め事も多くなるのは悲しいかな必然とも言うべき事であった。
「おっと、ごめんよ。」
ラミュアに、男がぶつかる。男はそう謝りつつそそくさと去っていった。ラミュアは何事もなくみている。晶がはっとして言った。
「ラミュアさん、何か盗られてませんか?」
「?」
晶の意図が分からずラミュアは不思議そうに見ている。晶が説明して言う。
「人にぶつかるときは、不注意のときもありますけど、あえてわざとぶつかって相手のものを盗んだりするときがあるんですよ。」
そう言われたが、ラミュアはけろっとして言う。
「私は、服以外は持っていない。」
「あ・・・。」
晶は、その点に気づかずに顔を真っ赤にしてしまった。
「まぁ、たぶん、晶が懸念したとおりの奴でしょうね。でもたぶんあいつは素人ね。ラミュアが何も持って無いのが気づかないくらいだから。」
神がそう補完して説明する。さらに神は言った。
「あたし達は基本的に、物は持ってないの。というより、人間のようにわざわざ持つ必要がないからだけどね。その場で創り出せばいいから。極論的には、あたしや、ミル、ラミュアは食事とかも要らないわ。ただ、そうすると、人間との交流が減る上にあたし達自身も「楽しく」ないからね。せっかく「楽しむ」ために旅をしてるんだから。それくらいはしないとね。」
「はぁ、なるほど・・・。」
晶は説明を聞きつつ、内容の大きさについていけないような返事をした。苦笑しつつアーレフが言う。
「まぁ、心配はしなくて大丈夫ですよ。というか、私達が心配するより神さんがしなくてもいい心配をしますからね。」
そう言われて、神が顔を赤らめながら言う。
「ば、馬鹿!余計な言い方はしなくていいの!」
それを見て、晶は微笑ましく思った。
「ところで、」
街を歩きながらアーレフが話題を切り出しつつ言った。
「神さん。結婚式はどうされるんです?志郎さんにも声を掛けたんですが神さんと決めるとか言ってられましたけど?」
そう言われて神は立ち止まった。
「神さん?」
アーレフが少し心配しながら言う。神はぼそぼそと答えて言った。
「そうよね・・・どうしたらいいのかしら・・・。」
その様子を見て晶が言う。
「あらあら・・・この間の神さんとは思えない様子ですね。」
「マスター、悩んでる?」
ラミュアがそう言う。アーレフが苦笑しつつ言った。
「悩むというか。そこまで考えてなかったみたいですね。志郎さんから答えを得られてとりあえず満足しちゃってた。というところでしょうか。」
「たぶん~。それが正解かと~。」
ミルが賛同して言う。神はまだ悩みながらぶつぶつ言っていた。
「どこがいいかしらねぇ・・・。」
「こりゃ、しばらく式を決めることで時間がつぶれそうだな・・・。」
志郎が苦笑しつつ言った。他の者は微笑みながらそれを見ていた。
「何だ、お姉さん、これから結婚式を挙げるのかい?」
酒場の主人は元気にそう言った。神は顔を真っ赤にしつつ指を手に当てながら言う。
「ちょ、ちょっと、声が大きいってば!」
それを聞いて、酒場にいたほかの者達も祝辞を言い始めた。神は顔を真っ赤にしてしまった。
「そうだなぁ。そこそこ払ってくれれば、ここを貸切にして、うちの知り合いを呼んでやるってのもあるぞ?」
酒場の親父はそう言う。客の一人がそれにあわせて言った。
「それはいい、娘が花屋だから花はうちに任せときな。」
それを聞いて別の客が言う。
「なら飾りつけは俺のところだな。甥夫婦がそっちの職人でさ。早いうちに話せば来てくれるぜ。」
さらに別の客が言い出す。
「うちに来なさいな。いいベールやドレスがあるよ。」
呆れつつ志郎が言う。
「なんだか、街の人はもうやる気満々だな・・・。」
微笑みながらアーレフが言う。
「おめでたい席ですからね。皆で祝福して皆で幸せを分かち合いたい。当然の成り行きじゃないですか。」
「そうですね。私の村もそんな感じでしたね。」
晶が皆を見ながらそう言った。すでに酒場は、日取りはどうの、式場に入る人はどうのと、会話が盛り上がっていた。
「ふぅ・・・。」
神はそう言ってベットに倒れこんだ。ベットは大きくきしみながら神を包み込む。
「なんだか、みんなの気持ちは嬉しいけど、恥ずかしいのよねぇ・・・。」
独り言のようにぼやいて言う。くすくす笑いながらアーレフが言う。
「相変わらず、自分のことになると控えめですよね。」
そう言われて、神はベットから起き上がり顔を赤くしながら言った。
「な!・・・そうかしら・・・あたしは普通にしてると思ってるんだけど・・・。」
「もしそうなら、神さんの普通が元から控えめってことですね。日頃あれだけ、他人には積極的にされるのに、いざ自分が対象だと「力」の点でもほとんど使われないじゃないですか。」
アーレフから的確に指摘され神は戸惑いつつ答えた。
「そ、そうかもね・・・。自分だけに使うこともできるけど、そう言う方法は自分で許せないのよ。「楽しく」ないから。やはり、皆のために使ってこそ「楽しい」と思えるしね。」
その答えに、微笑みつつアーレフは答えて言った。
「素晴らしいです。しかし神さん。考えてみてください。私たちは今一緒に旅をしています。そして街の皆さんは、心から、あなたを祝福したいと思っている。そう、皆一緒にいるんです。ならば、私たちもあなたの幸せを見て「楽しみ」たいと思うと思いませんか?」
そう言われて、神ははっとされた。確かにその通りである。別の場所から人々を眺めているのならともかく、今は人と同じ目線で居るのである。で、あるなら、人が自分に対してそう思うのは道理というものだ。
「確かにその通りね。あたしは、変に気を回しすぎていたのかもね。いや、言い訳をしていたのかもしれないわ。日取りに関して、明日にでも主人と話し合いましょう。」
神は決心しながらそう言った。アーレフは喜びながら言う。
「ありがとうございます。あなたならそう言ってくださると思っていましたよ。私たちも祝福したいですからね。」
「ありがとう。」
神はそう謝意を述べた。
一週間後。その同じ酒場で盛大に結婚式が行われようとしていた。初めは、酒場で集まった面々で、という話で進んでいたのだが、めでたい席上の話である。話が伝わり伝わって酒場には到底入りきらないほどの大勢の人が当日は溢れかえる事態となった。
「すごいですねぇ・・・通りも人で一杯ですよ~。」
ミルが身支度をしながら言った。そう、宿になっている上の部屋から見ているところである。アーレフが苦笑しながら言う。
「街の皆さんも「楽しい」事が好きですからね。しかも人が幸せになる始まりを祝う儀式です。皆で喜びたいじゃないですか。」
「良く分からないが、皆が喜んでいる。」
ラミュアが素直にそう言う。晶が苦笑しながら言う。
「ラミュアさんは相変わらずですね。あ、私は仕度ができました。先に下に下りてますね。」
晶は、皇の巫女装束を新たに仕立ててそれを着ていた。そして道具を準備しつつ下に下りていった。アーレフがそれを見つつ言う。
「私たちも仕度が出来次第降りましょう。というか、私が進行役でいいのですかね。」
「神官だからってマスターが指名したわけですし頑張られないと~。」
ミルが答えて言った。ラミュアがそれに、意外なことを付け加えた。
「たぶん、アーレフの時にはマスターがやる。」
「え?!」
ラミュアの台詞にミルとアーレフはそう言ってしまった。階下から声が聞こえる。
「アーレフ~。ミル~。ラミュア~。皆待ってるから仕度が終わったら降りてきなさいよ~。」
神の声だ。すぐさま返事をする。
「分かりました。まもなくですので。」
苦笑しつつアーレフはそう答えて仕度を済ませていった。
神は薄い若草色のベールをしていた。彼女の目は鮮やかな赤なので、その緑色でさらに映えて映る。ドレスは少し黄みがかかった白色の生地が使われていた。おかげで神の白銀の髪が映える。
「美しいですよ。」
着付けている女性はそう言った。神が答えていう。
「ありがとう。旅人のあたしにこんなにしてくれて。」
「どこの誰かが問題じゃないんですよ。皆で祝福したい、「楽しみ」たい。ただそれだけです。」
女性はアーレフが言ったのと同じことを述べた。それを聞き、神は涙を流していた。
「俺は、こんなものが似合うほうじゃないんだがな・・・。」
志郎はそう言いつつやってきた。彼は、白いタキシードを着ている。微笑みながら神が言う。
「たまには辛抱しなさい。どうせ、式の間だけだしね。」
「ああ、それは重々承知。しかし何だな・・・。」
志郎は答えつつ言った。神は先を聞きたくて問う。
「何?」
志郎が答えて続ける。
「お前、元から綺麗だと思ってたが、ここまで更に、美しくなるとはな・・・。」
そう言われて、神は顔を赤くしつつ言った。
「馬鹿。」
そんな様子を見て、着付けをしていた女性は微笑んでいた。ラミュアがやって来て言う。
「式の準備ができた。マスターも用意はいいか?」
神が答えて言う。
「ええ、いいわよ。志郎、行きましょう。」
「分かった。」
志郎が答える。二人は式場へ進んでいった。
酒場を改装した式場はかなり狭いが煌びやかに飾られ二人を祝福して迎えていた。中には神を含め旅の一行、酒場の主人の家族、酒場の常連客などが入っていた。他にも街で噂を聞いてやってきた人が酒場の外に集まっていた。二人は式場の中心部、一段高い場所に上がった。そこにはアーレフと晶が宗教上の正装で二人を待っていた。
「ようこそ。この神聖な式へ。皆さんの出席を歓迎します。多くの方はご存知ありませんが、この式はいずれ、後世に語り継がれることとなるでしょう。まぁ、難しい話はこれくらいにして、まずは式を進めたいと思います。」
アーレフは初めの言葉をそう述べてから神たち二人に向き直った。
「これより、剣志郎と杜神の結婚式を執り行います。」
アーレフがそう言うと、ミルとラミュアが用意した楽器を演奏した。そして周囲からは拍手が起こる。拍手が鳴り止むとアーレフは次の台詞を続けて言い始めた。
「汝、剣志郎に問う。お前は、この者、杜神を生涯の伴侶と定め、定めの無い時に至るまで共に歩むことを誓うか?そう、果てしない道を歩むことになるが、良いか?」
そう言われて、志郎はグラムが自分に言った言葉を思い出していた。
(「御前がこれから行く道は果てしないものになるかも知れぬがそれでもいいのかな?」)
反芻しつつ志郎は答える。
「構わぬ。俺は生涯、定めの無い時まで神と共に歩む。」
アーレフは微笑みながら言う。
「新郎の肯定の返事を頂きました。さて、新婦 杜神。」
「はい。」
「汝は剣志郎を自分の伴侶として終わり無き時まで共に歩むこと、これに同意するか?」
「はい、あたしの身と名に掛けて。」
「新婦の肯定の返事を頂きました。こうしてお互いの宣誓を私を含めここに居る皆さんが証人として立ち会います。」
アーレフがそう言うと、盛大な拍手が沸き起こった。晶が進み出てくる。手には指輪を納めてある台があった。
「それでは、お互いに誓いの指輪を。」
晶はそう言いつつ二人に指輪を差し出した。二人はお互いにはめ合う。それを見届けるとアーレフが言う。
「宣誓と共に指輪による契りの儀を済ませることができました。最後に、二人の誓いの証としてここで熱烈な接吻を。」
そう言われて、神は顔を真っ赤にしつつ志郎に向き直った。志郎も神に向き直る。
「これからずっとよろしく。」
神がそう言って背伸びをする。志郎がかがみながら答えて言う。
「俺のほうが頼むはずなんだがな・・・よろしく頼むぞ。」
そう言いつつ、二人は熱い接吻を行った。そしてアーレフは宣言する。
「ここに、一組の夫婦が誕生しました!「神」の祝福あれ!「かの方」の恵みのあらん事を。永遠にこの歩みが語り継がれんことを!」
そして、酒場の中、更には外で壮大な喚声が沸いた。皆が二人を祝福したのである。
「さあ、行こうか。」
志郎は神を抱えあげてそう言った。
「ちょ、ちょっと・・・。」
神は焦りつつ言う。
「こうしないと皆に見せれないだろう。」
「それは分かるけど、恥ずかしいわよ。」
「今日は見世物なんだよ、俺たちは。諦めるんだな。」
そう志郎に言われて、神は顔を真っ赤にしつつ言った。
「もう・・・分かったわ。皆が喜んでるのだもの。楽しまないとね。」
そう言いながら神は志郎に接吻をした。それを見て、街の人達は更に喚声を上げる。そこでは祝福の言葉と感情が溢れていた。
その通りは人々の喚声で賑わっていた。飲み物が振舞われ、食べ物が渡される。何をしてるか知らない人たちまで参加して騒ぎはより大きくなっていた。
「これは何の騒ぎだい?」
「結婚式だよ。めでたいじゃないか。飲み物や食べ物も一杯振舞われてるよ。皆で楽しまないとね。」
「ほう・・・どちらさんのかな?」
「私も詳しくは知らないけどね。向こうの酒場が式場らしいから向こうに行けば分かるんじゃないかね?」
「ありがとう。」
そんな会話も行われていた。志郎は神を抱きかかえながら酒場を出た。町中の人が二人を祝福してくれていた。
「可愛い嫁さんだねぇ。大事にするんだよ。」
「格好いい旦那じゃないか。あたしが二十歳若ければねぇ。」
そんな、微笑ましい会話もありながら二人は外の通りを一通り歩いてから酒場に戻った。酒場は式場を片付けていつもの状態に戻り披露宴的様相になっていた。
「お、新郎新婦のお戻りだ。」
酒場の常連客の一人がそう言う。
「さあ、こっちにおいで。」
酒場の女将さんが二人を席に誘う。二人が席に着くとすでに飲み始めている者も居るが新たに乾杯が起きて皆で飲むことになった。
「ささ、新婦さんも。」
そう言って神の器にも酒が注がれる。
「あ、あたしは・・・。」
断りきれずに神は器を取ってしまった。志郎はすでに幾らか飲みだしている。しかし、志郎はいつも飲む量に比べれば微々たる物、水をあおる様に飲んで周囲の人たちから喚声を受けていた。
「あたしも飲んだほうがいいのかな・・・。」
神がそう言う。志郎は答えて言った。
「無理なら飲まなくていいさ。飲めない訳じゃないんだろ?」
そう聞かれて神が答える。
「飲めないことはないけど、酔った状態なんて覚えてないからどうなるのか・・・。」
そう神が言ったのを聞いて志郎は笑いながら言った。
「それは楽しみだ。今夜どうなるか見てやるよ。」
そう言われて神は、顔を赤くしながら言った。
「馬鹿・・・。」
そう言いつつ、神は酒を飲んだ。アーレフたちは少し離れた場所で食事をしながら楽しんでいた。街の人に声を掛けられて応対したり、逆に街の人たちと談笑したり。彼らにしてもアーレフたちにしても他の場所の人との交流はかけがいのないものであった。
「おされっておいしいろれぇ。」
神はろれつが回らないほどに酔っていた。志郎が焦りつつ言う。
「おい、神、大丈夫か?」
「らいじょうぶ~、あたしはへいきらろ~。」
どう見ても大丈夫ではない。流石に焦ってきたので酒場の親父に言った。
「すまん、このまま酔わせると、危ないから上に上がらせてもらう。」
酒場の親父は頷きつつ志郎を上に誘導する。志郎は神を抱えて階上に上がっていった。
「全く、弱いなら弱いといえばいいものを・・・相変わらず自分に対しては極端なほど厳しいな。」
志郎は呆れつつそう言って、神をベットに寝かせた。
「あらしは・・・らいじょ~ぶ~。しろお~。あらしといっしょに~。」
神はろれつが回らない状況でもいろいろ言いながらベットで横になっていた。その様子を見ながら志郎は微笑を浮かべて言う。
「全く・・・しっかりしてるんだか、甘えん坊なんだか・・・まぁ、そこも可愛い所なんだけどな。」
そう言いつつ、神の頬に口付けをした。
「もおはなさいからぁ・・・あらしといっしょなの~。」
神がそう言ってるのを見て志郎は苦笑しつつ神の髪を撫でていた。
「酔いつぶれるのは計算外でしたねぇ。」
「神さんはお酒に弱かったんですね。」
「みたいですね、寝顔は可愛いですけど。」
「記憶します。」
二人の様子を見つつ、ミルたちはそんなことを言い合っていた。
「甘い様子が観察できるかと思ってたのになぁ。」
ミルがぼやいて言う。アーレフが答えて言う。
「何、今日で終わりじゃないですし。これから幾らでも楽しめますよ。」
「そうですね、今日の状態も明日になればまた楽しめる要素になりますよ、きっと。」
晶がくすくす笑いながら言った。ラミュアが賛同しつつ言う。
「今日のマスター、想定外の行動。」
「ですね、明日が見ものですよ。」
アーレフはそう言って、階下の酒場に下りていった。皆もそれについて行く。
「なぁ・・・俺のどこが気に入ったんだろうなお前は。」
志郎は寝入っている神を見ながらそう言っていた。出会って間もない一介の冒険者に過ぎない俺を好いてくれる。しかも相手は「神」の力を持つ女性。どう見ても、似合うとは思えない。しかし、彼女は「俺」を選んだ。もちろん、俺も彼女と一緒にいるのが嬉しいし、逆を言えば離れたくはない。嬉しい反面、なぜ俺が?という自問にも囚われてしまう。以前の出来事から考えないようにはしてきたがこういう一人で自問できるときはつい考えてしまう。
「相変わらず俺の悪い傾向なのかもしれないな。」
神のトラウマについて対処したときは神のことだけを考えてやっていたが、思えばあれは自分自身が失敗したことからの自分への戒めも入っていたのではないか?そうも思えるのであった。そしてそれが逆に自分自身に考えなくてもいい考えに囚われてしまう。
「やはり、馬鹿だな俺は。」
神に考えるなといいつつ、自分で考えてるようでは意味がないではないか。自嘲しつつそう思った。
「誰が馬鹿なの?」
ふと眼下から声が聞こえ、志郎は焦った。
「起きたのか?神。」
志郎は神に声を掛ける。神は答えて言った。
「ええ。あたしってだめねぇ・・・。あの程度のお酒で酔い潰れる様じゃねぇ。」
「ん~。って言うかさ、神。」
「なあに?」
「どうしてお前、ああいう場面では「力」を使わないんだ?酔わなくすることくらい造作もないだろう?」
「ん~。そうだけど、そうやって楽しめれるのかな。もちろんそれが必要なら多分そうするけどね。今日は必要じゃないと思ったから素のままでやってみたんだけどね。」
神の答えを聞いて志郎が苦笑しつつ神の頭を撫でて、答えて言った。
「なるほどな。まぁ、俺からすればお前の可愛い一面が見れて嬉しかったけどな。」
「馬鹿・・・」
神は顔を真っ赤にしつつ言った。そして、甘えつつ言う。
「今日から一緒に寝てくれる?」
そう言われて志郎は一瞬焦るが気を取り直して言う。
「しないほうがいいのか?」
「分かってるくせに・・・馬鹿・・・。」
神がそう答えるのを見て志郎は神の頬を撫でながら一緒になる。
「存分に、相手をしてやるよ。」
そう言って二人は一つになった。
朝。それは清清しい夜明けの印。そう、夜の帳が逃げて行き新たな一日を伝える第一報である。
「ん~。いい朝ねぇ。」
神はそう言いつつ背伸びをしていた。傍では志郎が寝息を立てている。くすりと笑いながら神は志郎の頬に接吻をした。
「流石にやり過ぎちゃったかな。」
自嘲気味に神はそう言った。朝の街を眺めているとアーレフも起きたようで階下から声が聞こえてきた。どうやら晶たちと話してるようだ。
「今日はどうされますか?」
朝食になりアーレフはそう話を切り出して言った。神が答えて言う。
「街中散策でもいいような気がするわね。」
そう言われてミルが目を輝かせながら言う。
「なら、ミル達は三人でお買い物に行きたいです~。」
「三人?」
神がミルに尋ねた。ミルが答えて言う。
「はい~。ミルとラミュアちゃん、晶さんの三人です~。」
「そう。あたしはいいけど、晶さんは大丈夫なの?」
神が尋ねていう。晶が答える。
「ああ、えっとですね。昨日話してたんです。街で、お買い物しましょうって。私が欲しいものがいくつかあったのもあるんですが、それで昨日は話が盛り上がっちゃって・・・。」
「なるほどねぇ。なら、晶、これを持って行きなさい。」
そう神は言って、晶に手渡した。晶は手にしたものを見る。巾着袋であった。
「これは?」
晶が問い尋ねる。神が答えて言う。
「買い物するなら資金が要るでしょ。その資金よ。」
そう言われて晶は袋を開けてみる。中には沢山の金が入っていた。吃驚しつつ晶が言う。
「あ、あの・・・神さん、これ沢山入ってるんですけど・・・。」
「足りるでしょ?」
神はけろっとして言う。晶は苦笑しつつ言った。
「余るほどですよ~。こんなになくても・・・。」
と言いかけたところで神が遮って言う。
「ちょっと考えがあってね。とりあえずそれを持っていって買い物に行ってくれないかな。」
意図を察して晶が答える。
「あ・・・分かりました。では、ありがたく使わせてもらいますね。」
アーレフも神の考えに気づき言った。
「この町にきたときにあった、あれ、ですか。」
「流石ね、アーレフ、その通りよ。」
神はいたずら小僧のように笑みを浮かべながら答えた。
「志郎はまだ寝てるのか?」
ラミュアが聞いてきた。神はばつの悪い顔をしつつ言う。
「あ~・・・。ちょっと、志郎はくたびれててね・・・。」
アーレフと晶がくすくす笑う。神はそれを見て言った。
「そこ!笑うな!」
「まぁ、ラミュアさんにはまだ分かりませんからねぇ。」
アーレフは苦笑しつつ言った。ラミュアはキョトンとしている。
「あ、そうそう。私は少しここの教会を見てきます。」
アーレフはそう言った。神が答えて言う。
「分かったわ。あたしは志郎が起きるまでのんびりするつもり。」
「起きた後も志郎さんに無理はさせないでくださいね。」
晶が遠慮ない言い草で言う。神が顔を赤くしつつ答えた。
「ちょっと、晶まで!・・・。もう・・・。」
そう言って、全員が朝食を済ませ各人はそれぞれの目的に行動を開始した。
神は寝室に戻っていた。志郎はまだ寝息を立てている。
「やっぱりやり過ぎちゃったかな・・・あたしも基本は甘えん坊だからなぁ・・・(^^ゞ。」
苦笑しつつ神はそう言った。志郎の顔を撫でながら言う。
「あなたを巻き込んじゃったね。志郎はそれで良かったのかな。」
そう、永遠の旅に。自分は嬉しかったが、彼には強いて決めさせたのではないか?そう言う不安も神にはあった。神は志郎の横に寝た。
「昨日は本当にやりすぎたかな・・・早く起きて、志郎。」
そう呟きながら神は志郎の傍に居た。
アーレフはアーキレストの教会に来ていた。そこで、教会が提供する出版物などを調べるのが彼の楽しみの一つだったのだ。彼なりの楽しいひと時が始まった。
ミル達は三人で商店や露店が並ぶ通りに来ていた。朝早くから多くの人で賑わっていた。
「流石ですねぇ。朝からすごい人出ですぅ。」
ミルが感想を述べる。晶も言う。
「ですね。さて、まずは私が買いたいものがあるのでそれから探すのでよろしいでしょうか?」
「問題ない。」
ラミュアが答えて言った。晶はくすりと笑って言う。
「ありがとうございます、それでは参りましょう。」
そう言って三人は賑やかな通りを歩いていった。
今は・・・目を覚ますとすでに部屋は明るくなっていた。薄暗い頃に起きて朝の修練をするのがいつものことなのに・・・。はたと気づいて横を見ると神が寝息を立てていた。服装が違うから一度起きた後でまたここに来たということだろう。苦笑しつつ志郎は言った。
「神。」
そう言われて、神は目を覚ます。
「あ・・・志郎、おはよう。」
「ああ、おはよう。遅くなってしまったな。」
志郎は答えてそう言ったが、神が苦笑しつつ言う。
「ごめんなさい。あたしがあなたに無理させちゃった。」
神がそう言うのを見て志郎は神の頭を撫でつつ言う。
「まぁ、俺もやりすぎたわけだがこれからは考えてやるさ。それに、お前が喜ぶのなら、俺にとっては大した事じゃないぞ。」
そう言われて神は顔を赤くしつつ答えた。
「もう・・・馬鹿。」
「ところで、皆はどうしたんだ?」
志郎が神に聞く。神は答えて言った。
「ミル達は三人でお買い物よ。アーレフは教会でやりたいことがあるみたいだから別行動中。」
「なるほどな。じゃあ俺たちも二人でデートと洒落込むか。」
志郎がそう提案する。神は笑みを浮かべつつ答えた。
「いいわね。どこに行く?」
「俺が行きたいところでいいのか?」
志郎がそう聞く。神が答えて言う。
「いいわよ。今日はどこに?」
「道場。」
志郎はそう答えた。神がキョトンとする。志郎が苦笑しつつ言う。
「最近、修練ばかりで自分の強さが分からなくてな。お前相手だと自分が弱すぎるように見えてな。ちょっとばかり試したいんだよ。」
そう言われて神は得心する。
「なるほどね。じゃあ、今日は妻として見届け役でもしましょうか。」
神はいたずら小僧のように笑いながら言う。志郎は苦笑しつつ答えた。
「永遠にお前が師匠になりそうだがなぁ・・・。」
「ふふ。」
神は微笑みつつ志郎に寄りかかった。
「では、行こう。」
志郎がそう言うと、神は頷き二人は外へいく準備を始めた。
「晶さん、買いたいものは以上でいいんですかぁ?」
ミルが尋ねる。晶が答えて言う。
「あ、はい、しかし、ミルさん、そんなに荷物ばかり持たなくても私も持ちますのに。」
そう、荷物は今ミルがすべて持っているのだ、しかも軽々と。ミルが答えて言う。
「大丈夫ですよぉ。それにミルはこうやって何かしてるほうが好きですから~。」
「そうですか・・・私では非力ですから申し訳ないです。」
晶がそう言うと、ラミュアが答えて言った。
「晶には、晶のいいところがある。」
「そうですよ~。ラミュアちゃんの言うとおり~。あたしにはあたしの晶さんには晶さんのいいところを磨けばいいんですし~。」
ミルも賛同してそう言った。晶も納得しつつ答えて言う。
「そう・・・ですね。私も頑張ります。」
そんな時、ラミュアが言った。
「警告。晶を狙ってる対象が多数。」
それを聞いてミルは、荷物に魔法を掛けて封印する。そうすればとっさの自体でも荷物に影響がないからだ。その後ミルは言った。
「ラミュアちゃんは晶さんの警護御願いします~。晶さんは無理をしないように~。」
そう言われて二人は頷いた。三人はそうやって、やや人気が減っていく路地へ入って行った。
商業が盛んな場所ではいろんな人が通る。貧乏人も金持ちも居る。盗みなどの仕事を生業にしていると人が買い物をするときの財布の中身も、つい、気になるものである。なぜなら、それこそが彼らの飯の種、つまり資金源自体だからである。だから、一杯持ってる奴を目に付けるのはなおさらである。今回も、おっとりした女性が大金を持っているのを仲間が目ざとく見つけた。しかも調べてみると一緒に居るのは女ばかり、一名が大女だが、言い換えればそれさえ何とかすれば、美味しい獲物に見えた。
「兄貴、奴ら路地に入って行きますぜ。」
子分がそう言う。兄貴といわれた男が答えて言う。
「数人呼んで来い。うまく追い詰めて、襲うようにしよう。」
「了解。行ってきやす。」
子分はそう言って、仲間に伝達に向かった。今回は美味しい獲物にありつけそうだ。男はそう考えていた。
道場は今日も賑わっていた。門下生もそうだが今日は腕試しの人物が来ているというのだ。そうなれば白熱した戦いが見れるかもしれない。そう思うと、皆が興奮するのであった。
「志郎頑張りなさいよ~。」
神は、応援席に座って志郎を応援していた。相手は、この道場の師範代。もちろん、任されるくらいだから腕もある程度あるであろう。志郎は神の応援に腕で答えつつ、構えを入れた。二人の拳が入った、と思ったその時。師範代は鈍い音を立てながら倒れてしまった。
「ん~。これは少しまずいかな。」
神はそう呟いた。周囲は騒然としてきた。このあたりでも凄腕といわれる師範代を一瞬で倒すほどの猛者が現れたのである。騒然としないほうがおかしいであろう。志郎は苦笑しつつ、神の前に来た。
「本気でやるべきじゃなかったのかな。」
志郎がそう言う。神は呆れた顔をしつつ言った。
「幾らあたしと一緒に居るからといって力の抑制くらいしないと・・・。それに志郎、あなた気づいてないみたいだけど・・・。」
「ん?」
「あたしとの鍛錬で、以前よりかなり腕は上がってるはずよ。」
「何?そうなのか?」
神に言われて、志郎は驚いて言う。
「言ってなかったけど、あたしと結婚したのも影響があるからね。」
「な、それはどういう・・・」
そう言いかけて、志郎は振り向いた。道場の師範が出てきたのだ。
「師範代を一撃で倒されるほどの使い手、ぜひ御相手して頂きたい。」
「頑張ってね、志郎。」
神はそう言って、志郎を突き放して言った。志郎は苦笑しつつ言う。
「了解した。御相手御願い致す。」
そうして、再び戦いの火蓋が切られようとしていた。
ミル達は細い路地を進んでいた。後ろからは数人と思われる人の足音が聞こえてくる。三人が走っていくとひときわ広い空間に出た。しかし、そこは行き止まりで周囲には出れる場所が無い。
「わざわざ、行き止まりに行くとは。道でも間違えたかな?」
男はそう言ってきた。晶が答えて言う。
「そのようですね。人通りの多いほうへご案内できますか?」
そう言われて男は怪しい笑みを浮かべながら答えた。
「そうだな、案内はしてやるが、無事にできるかは答えかねるな。」
そう言ってる間に広場に男達が続々と集まってくる。十数人は居る様である。
「まぁ、良くこんなに集めましたねぇ・・・。」
ミルが呆れながら言う。男は答えて言う。
「お前が一番邪魔そうなのでな。数を揃えさせてもらったまでだ。」
「ん~・・・。残念ですが、ミルよりラミュアちゃんのほうが怖いですよ~。あ、結界を張りますから張り終わったらラミュアちゃん思いっきりやってくださいねぇ。」
ミルが答えてそう言う。ラミュアはミルの意図を理解して答えて言う。
「了解、確認後攻撃する。」
その言葉を聞いてミルは結界を張り始めた。あたりの様相が変わり始め男達は動揺する。
「な、魔術師だったのか!早く奴等を襲え!」
男は焦りつつ仲間に命じた。言われた男達は襲い掛かる。しかし、男達の手がミルに届く前に、手自体があさっての方向に飛んでいた。男は、青い髪の少女が手から光る剣を出しているのを見た。その剣が一瞬のうちに仲間の腕を切り裂いたのである。しかも、紙を切るよりも容易く。
「な・・・貴様ら何者・・・」
驚異的な状況で男は腰を落としつつそう言っていた。ラミュアが近づいてくる。
「マスターの命令、実行。」
そう言って、ラミュアは男を「始末」した。
「晶さん、もういいですよぉ。」
ミルに言われて、晶は目を開けた。そこには晶たち以外は誰もいなかった。そう、彼女は、ミルが結界を張ったときに目を閉じておくように言われてそうしていたのである。
「あの・・・さっきの人たちは?」
晶はそう言って、事態の結果を聞く。ラミュアが答えて言った。
「ラミュアが始末して、ミルが処分した。」
晶は直接的な意味は理解できなかったがラミュアが何を言おうとしていたかは理解した。
「そうですか・・・分かりました。私の買い物は済みましたが皆さんはどうするのですか?」
晶はそう言って、二人に聞いた。
「そうですねぇ、晶さんの買い物であたしは楽しめましたので~、特にもうやりたいことはないですねぇ。」
「街を少し歩きたい。」
ミルとラミュアはそう答えた。くすりと晶は笑って言った。
「分かりました。では、ラミュアさんの意見に沿って少し街を歩きませんか。」
そう言って、晶は歩き始めた。二人がついて行く。
道場の師範は志郎に鋭い突きを繰り出した。しかし、志郎にとってそれは「鋭くない」突きだった。喚声が上がる中で志郎はかわす。その後、師範は攻撃をやめた。
「?」
志郎は分からずに立っていた。師範が言う。
「これ以上は無意味だな。私の負けだ。」
周囲の観客も大半は何が起こったか理解できなかった。師範の側近の弟子の一人が言う。
「師範は拳を出してお分かりになったのですね。彼が師範よりも強いことに。」
そう、強さを持つ人間は、ある程度、相手の強さも理解できるようになるのである。言い換えるなら分からない人間は例え強くても、真の強さとは言えないのである。
「御主のような者に出会えたことを私は誇りに思うぞ。」
師範はそう志郎に言った。志郎は、戸惑っていたが神を見た後で、師範に向き直り握手を交わした。その後、道場から帰る途中。
「結局、分からずじまいだったなぁ・・・」
志郎がぼやきながら言う。神がそれに答えて言った。
「何が分からないの?」
「俺の強さだよ。師範は俺の方が強いといったけどいまいち分からないし。」
神は志郎がそう言うのを聞いてくすくす笑った。
「な、何がおかしいんだ、神。」
志郎が戸惑いながら言う。神は答えて言った。
「やはり説明しないといけないわね。」
「どういうことだ?」
志郎は訳が分からないといった様子で神に問い尋ねた。神が答えて言う。
「志郎はすでに人の域を超え始めてるって事よ。」
「はっ?」
理解できずに志郎は素っ頓狂な返事をしてしまった。苦笑しつつ神が続けて言う。
「まぁ、すぐ理解はできないでしょうけどね。実は、あたしが一緒に稽古してる間にあたしの「力」があなたにも入っていたのよ。竜族と戦ったときのあれもそうだしね。」
そう言われて、志郎は竜族と戦ったときのあれを思い起こしていた。
「あの、気を飛ばすものも「力」の一端だと?」
「ええ。それも、あたし独自のものでなくあなたのアレンジが入った独特のね。言うなればあたしの「力」を元にあなたが創り上げた新しい「力」ってところかしら。」
神はそう説明する。更に加えて言った。
「更にね、あたしと結婚したのが大きいのよ。」
「お前との結婚が?どうしてそうなる。」
「忘れたの?あたしは一応「神」なのよ?」
「忘れるわけがないさ。」
「なら、人のままでどうやって一生死なずについていくつもり?」
「あ・・・。」
神にそう言われて合点がいく。つまり一緒になると宣言した時点で「人」をやめねばならなかったのだ。弱きとはいえ「神」に為らねば為らなかったのである。
「つまり、俺も弱いとは言え「神」だと?」
「簡単に言うとそうなるわね。だから、普通の人相手では、まるっきり相手にはならないのよ。そうね、身近で相手になるのはミルやラミュアあたりね。」
「そう言うことか・・・では、そのうち、俺も「力」を使えるようになるのかな。」
「そうね、急いで覚えたいのなら、すぐ「渡す」こともできるけど、あなたのことだから自分で捜し求めたいんじゃないのかな。」
神にそう言われて志郎は苦笑した。
「確かにその通りだな。俺ならそう言いそうだ。まぁ、分かってスッとしたよ。そう言うことなら仕方がないな。今後はミルやラミュアに頼むとしよう。」
志郎がそう言うので、神はややはぶてて言った。
「あら。あたしは無視するのね。」
そう言われて、志郎はあわてて言う。
「いや、そうじゃなくて・・・お前相手では俺は勝てないだろう?」
「それでもあたしは相手して欲しいの!」
神のその言い草を見て、志郎はつい笑いながら言った。
「分かった分かった。神にも相手をしてもらうさ。まったく、甘えだすときりが無いなぁ、お前は。」
そう言われて神は顔を赤くしながら志郎に寄り添った。
「とりあえず、ゆっくり歩きながら宿に向かうか。」
志郎がそう言った。神は頷いて答えた。
風が吹き抜けていた。
街の人々に祝福され、幸せに結婚式を終えた神。彼女達は暫く此処で逗留する事になる。其処で出会う人々、出来事とは・・・。
次回「冒険者」をお楽しみに。
貴方にも良い風が吹きますように。