Reisende(ライゼンデ)「旅人」
作者「ふい~………。今回は難産だったわ。」
神 「やぁっと出来たのね。」
作者「うん、やっと……。」
神 「えらく掛かったじゃないのよ。」
作者「片手間で始めた「蓬の旅」の話のアイデアがサクサク沸いちゃってねぇ…。」
神 「で、こっちのアイデアは沸かなかったと。」
作者「うん。」
神 「さて、覚悟は出来てるんでしょうね?」
作者「ちょ!いや、作品は書き上げたし…なんで…。」
神 「今までアレだけ遅れた責任は取って貰わないとねぇ…。」
作者「あ、いやぁ!神ちゃんやめてぇ!」
神 「ええい!往生際が悪いわ!問答無用!」
作者「ギャ━━━━ヽ(〃▽〃 )ノ━━━━ス!!!!」
神 「さて、すっきりした処で本編をどうぞ。」
作者「ううぅぅぅ……。ばたり。」
小説 風の吹くままに
第二十四章 Reisende「旅人」
(ザード=フェリティアを出た街道で)
「なんだか久々に街道を歩いてる気がするわねぇ。」
神がそう言っていた。頷くようにミルが言う。
「そうですねぇ…およそ一月くらい、結婚式だの戦争だのでごたごたでしたものねぇ。」
今、一行はザード=フェリティアから南下して街道を下って行く所であった。目的地は、元帝国の衛星都市ロギュールミュント。シェレーヌの情報により神が行きたがる様な都市と言う。つまり、御節介を焼きたく為る様な、と言う意味だ。
現在一行は八人+十人。普通の人間には八名しか見えない。残りはガイストとリッターだから。神、志郎、ミル、レネア、惺、セレナ、玲、エミリア。以上八名がまったりと街道を南下していた。
「さて、現地に行くのは良いとして、まったり行くので良いのか?いきなり目的地前でも良いような気もするが。」
志郎がそう言う。其れに対して、セレナが言う。
「其れは、志郎様。既に旅をされてる方は其れで良いでしょうが…、私やエミリアさんは旅などほぼ初めてですから出来れば楽しみたいのですのよ。」
神は其の答えに肯定しつつ、こう言う。
「まあ、志郎。そう言う訳だから今回はまったり行きましょう。其れに急ぎの事情が出ない限りは基本的に歩こうって言ってたしね。」
「まあ、そうなるか。分かったそうしよう。」
志郎はそう答え、一行は南へと緩やかに歩みを進めていた。
(数日後、暫く進んだ街道上で)
街道では、かなりの人々が往来していた。帝都がザード=フェリティアに生まれ変わって、其の情報が伝わり、帝国の旧支配から逃れる為にザード=フェリティアに向かう人々。逆に帝都での一財産を元手に、旧帝国の息の掛かる都市で再び一儲けしようと企む者、ザード=フェリティアの支配体制に恐れをなして逃げている者等、様々に居た。
「結構往来が激しいな。」
様子を見つつ惺がそう言う。其れにセレナが答えて言う。
「そうですわね。新国家の噂を聞いて其処に逃れる者、逆に嫌に為り出て行く者、様々でしょうね。」
其の答えに全員が頷いていた。そんな時……
「御爺様、しっかり為さって下さい。」
街道を歩いていた女性が老人にそう言っている場面に出くわした。惺がすぐさま駆けつけて言う。
「如何したのだ?我々で何か出来る事があるなら手伝うが?」
女性は老人を介抱しつつ答えてこう言った。
「あ、有難う御座います。御爺様が持病で調子を悪く為さって歩くのが大変なのです。それで如何しようかと思っていたところで…。」
其れに答えてエミリアが言う。
「その様な事でしたらライエルに任せれば宜しいですわ。ライエル。其処の御老人を抱えて差し上げなさい。」
「お任せを~~。」
何処からとも無くライエルが現れて老人を抱える。女性はやや驚きつつこう言った。
「あ、あの……この方は、何時の間に…。」
「ご心配には及びませんわ。ライエルは私に仕える忠実な者。どちらまで参られるのかは存じ上げませんが御手伝い致しますわ。」
エミリアがそう答えて言う。やや、自慢げであるようだ。其れを玲は微笑みつつ見ていた。感謝しつつ女性は語った。
「御親切に有難う御座います。私、フローレンスと申します。此方はお世話に為っている御爺様で、ローグレント様と仰られます。此れから、ロギュールミュントに向かおうとしていたのですが、急に御爺様の持病が悪化した様で……。」
話を聞きつつ、ふと疑問に思ってセレナが言う。
「フローレンスさんと仰られましたね。御爺様を様付けで呼ばれておられますが、御血縁ではないのですか?」
其の質問に、フローレンスはやや俯きつつ答えてこう言った。
「あ、はい…私は、ローグレント様の御好意で養女として先日迎え入れられました。ですので、まだ中々、其の侭御名前で呼ぶ事が出来なくて……。」
其の言葉に、頷きながら神が言う。
「そうよねぇ、急に言い方を変えるなんて難しいわよね。御爺様は、ちょっと後で癒しましょうか。」
そう言って、一行は街道沿いにある少し大きな樹の下に来ていた。ライエルが其処に老人を横たえる。老人は、些か胸を押さえながら苦しそうにしていた。神が軽く手を当てる。
「あの……お医者様か何かなのでしょうか?」
フローレンスがそう尋ねる。苦笑しつつ神が答える。
「あ~……。そうじゃないけれど。多少癒す力があるだけよ。」
誤魔化しつつそう言っていた。志郎は苦笑しつつ其れを見ている。調べ終わって神がやや重い口調でこう言った。
「かなり酷いわね。このまま旅は如何考えても無理よ。此の人も何か目的がありそうだし、ロギュールミュントまで送り届けましょうか?」
其れに、やや慌てる様にフローレンスが答えて言う。
「あ、はい!是非御願いします。詳しくは知らないのですが御爺様は、何としても生きてロギュールミュントに行かねば為らない、そう仰ってたので。ですのに、私は大した事も出来なくて……。」
ミルが魔法をかけつつ、こう言う。
「では~。御爺様は魔法で寝かせておきましょう~。その方が苦しまなくて済みますし~。」
「お、良いアイデアね、ミル。お願いするわ。ライエル、其の後でまた抱えてもらえるかな。「時空門」で今回は行きましょう。」
ミルの言葉に神がそう答えて、ライエルに言いながら全員に伝えた。ライエルは、「了解~。俺に任せたまえ~。」と軽く言いつつ、的確に仕事を始める。神の言葉を聞いた全員は肯定の返事をした。
神はそこで、其処より街道から少し離れた場所に行き、「時空門」を開く。
「こ、此れは………。」
突然現れた「時空門」を驚いて見つつ、フローレンスはそう言っていた。苦笑しながら神が言う。
「驚いてる処悪いけれど。御爺さんの状態が状態だし、急いでロギュールミュントに向かいましょう。」
そう言われて、フローレンスも神一行と共に「時空門」に入っていった。
(ロギュールミュント近くの街道に近い丘で)
「時空門」はとある丘の上に開いた。其処には誰も居なかったが、たまたま草を食んでいた動物達は驚いて走り去る。其処に神一行が出てくる。
「ほう、あれがロギュールミュントか。」
志郎が街を眺めつつそう言った。その街は堅固な城壁に囲まれた城塞都市で、以前に見たレミアルト王都と同様非常に堅固に見えた。
「まあ、都市国家だし、基本は見た目似てるわよね。」
志郎の横で同じ様に眺めながら神がそう言う。
「では、参りましょう。」
フローレンスがそう言う。其れを遮るように、神がこう言った。
「直接入るのであれば、然るべき身分であたし達を保証できないと、多分あたし達は普通の手段では入れないけれど、如何しようかな?」
「ああ、そうか……。仮にも帝国を倒した張本人が来るわけだしな……。いっその事変装でもするか?」
志郎がそう言う。玲が苦笑しつつ、
「別にそんな事をしなくても、意識に働きかければ行けますが、まあ、味気ないかもしれませんわね。」
そう言った。エミリアが、
「神様が直接街中に「時空門」を出されると言うのは如何でしょう?」
と提案する。神は苦笑しつつ、
「まあ、其の方法もあるけどね。さて、如何しましょうかね……。」
そう言いながら考え込み始めた。皆がそうやって考え始めて暫く経った時、
「私が保証しよう。」
ライエルが抱えていた老人がそう言った。ライエルは、老人が目覚めたので抱えていた状態から地面に立たせた。
ややふらつく様にしながらも老人は神達の前に立ち、毅然とした態度を取る。
「御迷惑を掛けたな。フローレンスから紹介されたとは思うが私が、ローグレント。ローグレント=ゲッシェルヴァーグと言う。今後とも御願いしたい事もある故に御同行を願いたい。」
老人はそう言った。神は溜息を一つ吐きつつ、
「何か結構な仔細がある様ね。歩きながら話して貰えるかしら?」
そう言いつつ老人に手を掛けた。そしてさりげなく「力」を使う。
「了解した。貴女方は只者ではない様だ。此方からも是非御願いしたい。」
ローグレントはそう答えて、一行は歩き始め、彼は事の次第を話し始めた。
ゲッシェルヴァーグ家は、帝国時代に一財産を築き上げた名家の一つであった。ローグレントの前の代の時には皇帝から「爵位」まで貰い、貴族としても歩み始めていたのだった。そしてローグレントの時代にも順調とも言える歩みを続け「伯爵」まで上っていたのである。が、彼には問題があった。自分の後を継ぐ者の事である。彼には三人の息子と一人の娘が居たが内二人の息子は流行り病で幼い内に死亡。娘は、嫁ぐ前に事故で亡くなっていた。残った一人息子も最近に亡くなっていたのだ。で、近親の者が、という事に為りそうだが、元々急成長して「貴族」と為った訳である。親族は基本的に一般人や商人ばかりだった。そんな処に、財産が転がり込むかも?と言う事に為れば…。富に目が眩めば如何為るかは一目瞭然であった。其れまで仲の良かった親族は反目し合い、影ではお互いに揶揄し、公では、さりげない嫌味を飛ばしあう、そんなぎすぎすとした関係に為り、ローグレントも嫌気が差している処だったのだ。そんな時、帝都で彼はフローレンスと出会う。彼女は、真面目に彼に尽くしてくれた。勿論、メイドとして始めは来た訳だから仕事をするのは当たり前かもしれない。しかし、一緒に接している内にローグレントは、フローレンスが親身に自分を気遣ってくれている事に気が付いた。故に彼は、彼女を養女として身請け、自分が亡き後に、安心して託せる「身内」を作ろうとしたのだが…。彼自身は既にかなり病気に侵されており、法的手続きをする為の移動が困難な状況であった。そんな折、倒れていた時に、神達に出会った。そう、彼は説明したのだった。
「成程ねぇ…。しかし、手続き自体は其れで良いとしても、あなたが居なくなれば誰がフローレンスを守るのかしら?」
神はローグレントの説明を聞いてそう言った。確かに、尤もな質問である。其れに答えて、ローグレントは、
「其れに関しては問題は無い。今は住居をザード=フェリティアに構えている上に其処に、信頼の出来る者が何人か居るのでな。」
そう答えた。セレナはふと疑問に思い、
「御用件は分かりましたが……。伯爵までの爵位を持たれるのなら、旅の為に部下を用いての移動など容易な筈では?」
そう言った。志郎が苦笑しつつこう言う。
「セレナ、気持ちは分かるが………。さっきローグレント殿も言っていただろう。身近な親族が虎視眈々と狙っているんだ。そんな時に、此れから移動します。って態度を示したら如何為ると思う?」
「ふむ…難しい事は俺には分からないが、恐らく、そう言う奴等なら、街道で襲ったりしそうだな。下手に取り巻きが居る方が目立って危険だし。そう言う意味では確かに二人旅の方が安全と言えるか。」
考えつつ惺がそう言う。セレナも、暫く考えた後、
「確かに惺の言う通りですわね。下手に引き連れたら、折角、フローレンスさんに親族として相続させようとする事の妨害はほぼ間違いなくありそうですし。」
そう言った。そうやって取り敢えず疑問が解決した処で神が、
「さて、悩みが解決した処で、ローグレントが此処でやるべき事を私達も手伝いましょうか。まあ、邪魔者の始末がメインでしょうけれどね。」
そう言った。其れに、神一行全員が肯定の答えを出すのであった。ローグレントは深く頭を下げながら、
「済まないな、私が元気だったらこんな事を頼まなくても良かったのだが……。」
そう言った。其れに答えるように志郎が言う。
「何、心配しなくてもいいさ。神は、お前さんみたいな困っている人が居ると首を突っ込みたくて居られない性質なんでな。」
「ちょ!人をお節介の塊みたいに…。あたしは好きでやってるんですからね!」
神は一生懸命に弁明に為らない反論をそう言っていた。そんな神を微笑ましく見る一行であった。
(暫く経ちロギュールミュントの市内で一行が歩いているときに)
「あっさり通してくれたわねぇ。」
神は簡単に街の番兵が入れてくれたので拍子抜けに為り、そう言っていた。苦笑しつつ志郎が言う。
「何か起きないといけない様な台詞だな。」
「な!あたしは只……。ああ!もう!わかったわよ!そうよ!何か起きて欲しいと思ってたわよ!」
最後には自棄に為るような口調で神はそう言っていた。やや驚きつつ志郎が、
「お、落ち着けって。フローレンスも驚いてるぞ?」
そう言う。神がふとフローレンスを見る。彼女は目を丸々として此方を見ていた。そして、
「あ、え?!いや、その。お二人は仲が宜しいのですね。恋人同士なのですか?」
そう言ってくる。神は苦笑しながら答える。
「あ~。そう言えば言って無かったわね。あたしと志郎は夫婦なの。あたしたちは一応、全員が家族みたいなものなのよ。血縁か、親しい関係と言う意味でね。」
神達一行は、フローレンスにそうやって笑みを見せた。其れを見つつフローレンスは答えて、
「素晴らしいですね。誰もがそんな風に出来れば幸せに為りそうなのですが………。」
そう言った。そんな彼女の肩を抱きながらローグレントが言う。
「何、此れからお前も其れを作る立場に為るんだ。私が生きている限り、お前を手伝うから、頑張るのだよ。」
フローレンスはそう言われ、「はい、御爺様。」と、短く答えるのであった。
一行は、ロギュールミュント中央部、城郭までやってきた。其処に行政の中核である、行政局があるからである。
入り口で呼び止められるものの、ローグレントが身分を明かすと、あっけなく中に入ることに為る。
「ローグレントさんは、此処での知名度はかなり高いのですわね。一般の兵士ですら名前をご存知のようですし。」
玲が歩きがてらにそう言った。其れに答える様にローグレントが、
「ははは。まあ、貴族としてもだが、元々我が家は商人だったからな。有名で有力な商人と言う事に為れば地元では知らない者が居なくなるんだよ。」
軽く笑いながらそう答えた。そうして、一行は、目的の行政の管轄部門に到着する。
中に入る。中では、職員たちが縦横に走り回っていた。役所と言う所は暇ではない。一つの事を決定するにも、様々な法的手続きが必要となり、其の手順をきちんとこなさないと為らなくなるからだ。不正を行うと良くニュース等に為るが、まじめにやっている者こそニュースにすべきであるのだが…。まぁ、読者の世界に関しての注釈はこの辺にしておいて、そんな訳で、忙しく働いている中に一行は入った。
「おや、これはローグレント様。今日は如何なる御用でしょうか?」
窓口で作業をしていた女性が作業を止めてそう、声を掛ける。ローグレントが答えて言う。
「忙しい処済まないな。此の度養女とした、此のフローレンスに、私の持つ財産の相続をしたいので其の手続きに来たのだよ。」
二人を見つつ女性が答えてこう言った。
「成程、御用件は分かりました。隣の別室に資料を御届け致しますので、御先に其処で暫く御待ちください。」
そう言いながら女性は、其の部屋を手で案内した。其れに答えてローグレントは、
「有難う。では、先に待たせて貰うとしよう。フローレンス、そして皆さん、行きましょう。」
そう言って一行を促した。一行は其の部屋へ向かう。
そこは広い部屋で、一行十人が入っても十分過ぎる広さがあった。如何やら応接室の様で、あちらこちらに調度品も置いてある。
「此れは何だろうな?」
惺が、調度品の一つを不思議そうに眺めて言う。ローグレントが答えて、
「ああ、其れは此の都市出身の彫刻家ラミセウスの作品だな。躍動感のある人物を彫るのが上手な作家だよ。」
そう言って、其処にある様々な調度品の説明が始まった。
「流石と言うべきか。俺みたいな武術馬鹿だと、聞いて関心と言うか圧倒されるな。」
志郎は丁寧に説明するローグレントを見つつそう言っていた。神は傍によりながら、
「でも、あたしは志郎がいいのよ?」
そう言う。苦笑しながら志郎は神の肩を寄せてこう言う。
「そんな心配は不要さ、神。俺は、俺だ。此れだって自慢なんだぞ?」
「うん……。」
神は顔を真っ赤にしながら志郎に寄り添っていた。
暫くそんな形で談笑が続いていたが、役所の人間が所定の手続きの為の書類を揃えてやって来る。其れにより、手続きを行う為、厳粛な時が始まるのであった。
(役所での手続きが取り敢えず終わり、其処から街に出た一行)
「ふう。何処でも役所の手続きは大変ね。」
神がそう言う。やや苦笑しながらローグレントが答える。
「まあ、公平に公正にしようとすれば、きちんと手続きや記録が必要に為りますからな。人である以上、神たり得ませんからな。」
其の言葉に、神達は頷くのであった。
「然し、先程のご様子では手続きは全て終わった訳ではないのでしょう?如何されるのですか?」
玲がそう言う。其れに答えてローグレントが、
「そうなのだ。貴女方に御願いしたのも其処にある。法的手続きは少し時間がかかり、最終的な完了までに、一週間ばかり掛かるのが普通だ。其処で、私達を守る事を御願いしたいのだ。特に、此のフローレンスを。」
そう言いながら深々と頭を下げる。フローレンスが、
「御爺様、私は、御爺様と一緒が宜しいですわ。どうか御自分も大切に為さって下さいませ。」
そう言っていた。そんな二人を見つつ神が答えて言う。
「大丈夫、ザード=フェリティアを打ち立てるよりは此の件は楽だからね。」
そう言われた時点で、漸く、ローグレントは神達が何者かに気づく。
「そうか…貴女方が…此れは杞憂と言うべきだ。此れで私の肩の荷は降りたも同然だな。」
そう言って微笑んだ。神も其れに微笑み返す。そして、
「では、手っ取り早く宿でも借りましょうか。一週間掛かるのなら一悶着は有りそうだしね。」
そう言って歩き始めた。一行は其れに付いて行く。
こうして、新たな行動が始まる事と為った。
(一行が泊まる事に為った宿屋にて)
神達一行とローグレント爺娘は、ロギュールミュントにある中堅の宿に入った。一般の旅行客相手に営業しているごく普通の宿で、適度な綺麗さと、過ごしやすい環境の宿であった。神は志郎と、ローグレント爺娘が一緒に、惺とセレナが、ミルとレネアが、そして、玲とエミリアが、それぞれの部屋に分かれて泊まる事になった。
神は部屋に入り、ベットに腰を掛けながら、
「なんか、一気に来ちゃったわね。」
そう言った。志郎は神を抱え上げる。
「な!ちょ、ちょっと、志郎。如何したのよ。」
慌てるように神が言う。志郎が答えて、
「何、こうしたくなった。其れだけさ。」
そう言った。神は顔を赤らめながら、
「うん………。」
そう言いつつ、志郎の顔を触りつつ、其の顔を火照った顔で見つめていた。
隣の部屋では、ローグレント爺娘が休んでいた。
「御身体は大丈夫ですか?御爺様。」
フローレンスが心配しながらそう言う。苦笑しながらローグレントは、
「大丈夫だ。お前に全てを渡し、安心して見届ける迄は死ねんよ。其れに、神殿の御陰で身体が随分楽に為ったのでな。」
そう答えた。フローレンスは泣きながら、
「私は…御爺様が生きていて下されば其れで構わないのです…。財産とか、そんな物は如何でも……。」
そう言っていた。ローグレントは、
「お前ならそう言うと思っていたよ。然し、此れは私の我侭なのだ。言うなれば、私からの押し付けだ。其れを其の後で如何するかは、お前に掛かっている。無論、より良い事に使うと信じているがね。そんな、爺の我侭は駄目かな?」
そう言う。フローレンスは首を振りながら答える。
「いいえ!御爺様の我侭であれば、フローレンスはしっかりとお受けいたします。分かりました。必ず、御爺様の御希望に添えるように致しますわ。」
そう答えるフローレンスをローグレントは優しく抱くのであった。
其処には、微笑ましい爺娘の姿があった。
更に其の隣では……。
「セレナ…、お前気が早いんじゃないか?」
惺がそう言う。既にセレナは服を着ていなかった。答えて言う。
「あら?私たち二人に部屋を宛がって下さったんですもの。折角だし楽しまないといけないと思いません?」
「いや、言いたい事は分かるが…。来て早々なのかと思うとな…。」
惺はそう言い苦笑する。セレナは答えて、
「いいえ、楽しむべきです。折角ですから、旅の途中では皆の目もありますし、こうして中々出来ませんでしょ?」
そう言って、惺が座るベットにやってくる。更にセレナは、
「さあ、惺。二人で楽しみましょう。」
そう言って、惺の顔に手を伸ばす。惺もセレナの顔に手を伸ばし、
「そうだな、せっかくの機会だ。楽しもうか。」
そう言った。
そうして二人は熱烈に愛し合うのであった。
更に其の隣の部屋では。
「今回の旅も楽しめそうですねぇ。」
ミルがそう言う。其れに答えてレネアが、
「そうですね~。ミル様、又一緒に楽しみましょ~。」
そう言ってミルに抱きつく。
そんなレネアを見ながらミルは微笑みつつ、
「そうですね~。折角ですから楽しみましょうか~。」
そう答えるのであった。其処でも愛の営みが始まろうとしていた。
更に其の隣でも。
「さて、どの様な邪魔者が来るのか楽しみですわね。」
玲がそう言う。エミリアが答えて、
「然し、人間の間者だと、リッターやガイスト達で終わりそうな気が致しますわね。」
そう言う。玲がくすくすと笑いながら、
「そうですわね。では、其れはアイン達に任せて私たちは楽しみましょうか。御出でなさい、エミリア。私が可愛がってあげるわ。」
そう言いながらエミリアに手を差し伸べる。エミリアはウットリしながら玲に近づき、
「は…はい…玲御姉様。今日もエミリアを可愛がって下さいませ。」
そう言うのであった。
そして二人はベットに入って行く。お互いの愛を確認しあう為にも。
外では、物々しさがあったが、此の宿では、お互いの愛を確認しあう一時が流れているのであった。
(ロギュールミュント。ある商人の家にて)
「では、ローグレントは既にこちらに来ていると?」
男がそう言う。言われた相手の男が答え、
「ああ、役所に現れて財産移譲の手続きに入ったと言う事らしい。役所の奴らが話しているのを聞いたんだ。」
そう言った。始めの男は、やや地団駄を踏みながら、
「くそ!と言う事は時間は余り無いな。折角財産を分捕れるチャンスだったのに。」
そう言った。もう一人の男が言う。
「少し投資に為るかも知れないが。」
そう言って、相手の男の関心を誘う。男が関心を示すと続けてこう言った。
「謀殺を手がける者を数人知っている。そいつ等に依頼して「消して」貰うってのは如何だ?」
そう持ちかけた。始めに喋っていた男は少し考えた後頷きながら、
「そうだな、今は形振り構う余裕は無い。お前の提案に乗ってみよう。で、幾ら掛かるんだ?」
そう答えた。其処では、怪しい「商談」が行われようとしていた。
(翌日、神達が泊まっている宿屋にて)
朝日の陽光が窓から差し込む。其の暖かな光に促される様にフローレンスは目覚めた。そして、服を着替えながら、寝ているローグレントの姿を確認する。彼の姿を見て安心し、部屋から出ようとした。その時、
「お早う御座います。フローレンス様。」
扉を開けた、其処で、三人の美男子が立っているのが見えた。うち一人は見た覚えがある。確か、ライエルと言っていた筈だ。
「あ、えっと。お早う御座います。あの、貴方方は?」
フローレンスはそう尋ねる。代表するようにシェルエルが答えて言う。
「失礼致しました。私共は、エミリア様に御仕えする者で、此の度、フローレンス様の一件が終了する迄、御傍に居るようにと命じられ此の様に馳せ参じた次第で御座います。ライエルは御覧に為っているので御存知かと思います。私はシェルエル。此方はウィサウレルと申します。以上三名、一時的ではありますが、フローレンス様の騎士として御仕えさせて頂きます。」
突然の申し出に、暫く呆気に取られていたが、気を取り直してフローレンスが答えた。
「あの、有難う御座います。しかし、エミリアさんの方は行かなくても宜しいのですか?私としては有難いのですが…。」
尤もな質問をする。其れに答えてウィサウレルが言う。
「其の事であれば問題は無い。エミリア様には玲様が常に傍に居られる。あの御方は私達とは比較に為らない方なので安心なのだ。」
其の言葉を聞き、安心しつつも、フローレンスは、疑問に思いこう言う。
「あの…不都合でなければ御聞きしたいのですが…貴方方は一体…。」
尤もな、必ず聞かれるであろう質問を聞き、シェルエルは苦笑しつつ答えてこう言った。
「尤もな質問ですな。直接御答えは出来かねますが、そうですね、困った方々を助けたがるお節介な一行。とでも申しておきましょう。」
そう言われ、フローレンスは、「はぁ……。」と呆けた様に答えていた。無理も無い事ではあるが。
そんな折、部屋から神が出てくる。
「あら?フローレンスも起きていたのね。お早う。って。シェルエル達如何して一緒に居るの?」
神はフローレンス達を見つけてそう言っていた。シェルエルは仔細の説明を始めるのであった。
(其れから暫く経ち朝食時に為って全員が揃っている場所で)
宿屋の一階は酒場兼食堂と為っていた。街の人達も団欒できる場所と為っており、故に其処で情報交換や交流が行われるのである。
神達一行も、其処に降りて食事を楽しんでいた。
「全く。セレナはもう少し程度と言うものをだな……。」
惺が食事を口に運びながらそう言う。セレナは、顔を多少赤くしながら、
「な!惺だって喜んでいた癖に!そんな言い方はあんまりですわ!あれだけ楽しんでいるのに…。」
些かいきり立ってそう答えるのであった。
苦笑しながら志郎が、
「やれやれ、皆考えることは同じか。神、此れからも苦労と楽しみがありそうだな。」
そう言う。神は顔を赤くしながら、
「ちょ!あたしに迄其れを振る訳?!志郎だって昨日は……。」
そう言いかけた処で志郎が口を塞ぐ。そして、
「ちょ!待て!分かった、分かったから落ち着け。幾らなんでも其処迄此処で言うのは不味い。」
焦りながらそう言う。
くすくすと笑いながらミルが、
「皆さん激しい様ですねぇ。」
そう言った。レネアが其れに答えて、
「レネアたちは何時も通りですものねぇ。」
と、そう言う。言っている事は普通ぽいがやってる事は……、此処ではあえて言わないでおこう。
「私達は何時も通りよね、エミリア。」
玲がエミリアにそう言う。エミリアは答えて、
「はい。エミリアは昨日も玲御姉様に愛されましたわ。」
と、ドストレートに答える。そんな姿を見て、フローレンスは苦笑するのであった。
ローグレントが言う。
「此れから如何為さるのかな?」
其れに答えて神が、
「特に予定は無いわね。ゆっくりしようと思ってるし。其れに動かない方が、邪魔な奴の退治は楽だと思うわよ?」
そう答えた。志郎も賛同しながら、
「確かに、動き回ると対応が面倒だしな。どうせなら手続きが終わるまでのんびりした方が良さそうだ。」
そう言う。ローグレントは其の答えを聞き、
「そうか、では私達もそうさせて貰おう。感謝する、神殿。」
そう言った。神は答えて、
「別に大した事じゃないわよ。貴方が困っていてあたし達は其れを助けたかった。そして助ける力もあった。だからやっている。其れだけよ。」
そう言う。確かに其の通りかもしれないが、助けられる身としてはこの上なくも嬉しい言葉である。ローグレントとフローレンスは二人で深く頭を下げたのであった。
尚、此の数日後、ローグレント達を襲いに来た刺客が居たが、リッター達に滅ぼされたのは言うまでも無い。
澱み行く空気がある場所にも爽やかな風が吹き行こうとしているのであった。
志郎 「なんだか……。」
神 「ん?」
志郎 「いちゃついてるだけの回だった様な?」
神 「うん。多分そうね。」
志郎 「いいのか此れで?」
神 「いいんじゃない?少なくともあたしはいいと思うし。」
玲 「愛し合う場面が見せれれば私は其れでいいですわ。」
エミリア「玲御姉様の言う通りですわ。」
神 「はいはい、貴女達はそうでしょうよ。」
セレナ 「さあ惺…。」
惺 「ま、待て!セレナ此処は後書きだ!」
セレナ 「後書きでもいいじゃありませんか…。」
惺 「ちょ!待て…あぁ…あぁん!」
ミル 「あらあら、ますますお盛んですわねぇ。」
レネア 「レネア達も向こうでしちゃいましょう!」
ミル 「では、行きましょうか~。」
神 「………。」
志郎 「好き放題だな…。」
神 「頭痛くなってきたわ…。」
志郎 「取り敢えず次回予告と行くか。次回は「Geliebte「恋人」」だそうだ。又何かありそうだな。」
神 「まぁ、楽しめれば其れで良いのよ。」
志郎 「まあ、そうなんだけどな。」
神 「まあ、次回をお楽しみに。」
貴方にも良い風が吹きますように。




