Hölle(ヘレ) und(ウント) himmel(ヒメル)「地獄と天国」
神 「あら?此処は前書きじゃない。」
作者「うん、今回から此処にも出演して貰おうと。」
神 「いったい何の魂胆かしら?」
作者「あ~……。話の展開に詰まって執筆が遅々としてるからその気まぐれに……とか。」
神 「どうせそんな事だろうと思ったわよ!旅をするだけなのに如何してそう為るのかしら?」
作者「いや、だけってのが逆にネックに為るのよね。派手なイベント噛ますと其れは其れで問題があるし…、かと言って普段通りだと、いちゃつくシーンしか描けないしなぁ……。」
神 「あ、あたしは、いちゃつくだけでも良いんだけど?」
作者「じゃあ、今の事件が終わったら考えておく……。」
神 「えらく、沈んでるわね……。」
作者「月末が近くて体調が悪くてね……。」
神 「あ~……。其れはご愁傷様…。」
作者「あ…ではお楽しみ下さい…。」
小説 風の吹くままに
第二十三章 Hölle und himmel「地獄と天国」
(一行は「時空門」を抜けて「魔界」に入る)
神達は「時空門」を抜けてきた。
「ほう。此処が「魔界」か。」
辺りを見ながら志郎がそう言う。人だとまず行かない場所、其処に自分が居る。そう言う感慨に浸るように、そう言っていた。
「あまり、我々の世界と変わらないような気がしますわね。」
セレナが周囲を見渡しながらそう言う。実際辺りには木々があったり、動植物が居たりと、知らないものばかりとはいえ、同じ感覚に感じたのだ。神が答えて言う。
「まあ、世界そのものは基本的に似てるかもね。根本的に違うのは、主要種族が此処では魔族って事。そして、魔族の基本形態は精神生命体だと言う事かしらね。」
『最大の違いは、地上世界と異なり、此処の属性は「闇」と言う事だな。』
一同に割り込むように声が聞こえてきた。全員が其の声の方向へ振り向く。其処には、無駄の無い筋肉が付いた美しい男性が立っていた。其の姿を見て神が言う。
「お久しぶり、グラニデウス。」
「今日は、えらく大勢で来たのだな。何事か起きたのか?」
グラニデウスがそう聞く。苦笑しつつ神が答えた。
「いいえ。そうじゃないの。向こうでのごたごたが一段落したから、玲を貴方に会わせようって話に為ってね。」
「あきら?」
意図が分からずにグラニデウスがそう聞く。神が苦笑しながら補完して説明する。
「ああ、ごめんなさい。此の子よ。あたしと貴方の子供。玲と言うの。」
そう言って神は玲をグラニデウスに紹介した。玲はグラニデウスの前に出て挨拶をする。
「初めまして、父上。杜玲と申しますわ。」
グラニデウスはじっくりと玲を眺めていた。しばし時間が経った後に口を開きこう言った。
「素晴らしい。神、お前に「力」を渡して正解だったな。此の娘には、「地獄と天国」がある。」
其の言い方に、神は微笑みながら答えた。
「流石ね、グラニデウス。いい比喩だわ。」
「どういうことだ?」
志郎は良く分からずに神に聞く。神は苦笑しつつ説明した。
「闇と光の力、つまり、魔族と神の力が、共存している、彼はそう言いたいのよ。」
「ああ…。」
志郎はそう言われて得心しつつそう言った。惺がグラニデウスに近づいて言う。
「お初にお目にかかる、グラニデウス叔父上。つかぬ事を尋ねるが其の御身体は御自分で身に付けられた物なのか?」
グラニデウスの身体に興味津々に惺はそう尋ねた。其れに対し、グラニデウスは答えてこう言った。
「ああ、此れか。此れは、私が無理やり地上に召喚された際に、神が、分かりやすいからと言う理由で与えてくれた身体だ。」
「なるほど、此れは母上からの贈り物だったのだな。非常に素敵だと思う。」
素直に惺はそう言った。其の答えに微笑みつつグラニデウスが言う。
「そうだな、私も気に入っているのだ。さて、玲よ。私に何か言う事があるのかな?」
そう、玲にグラニデウスは話しかけた。玲は答えて言う。
「そうですね。出来れば父上と二人だけでお話がしたいのですが。」
神は其の意図を悟り、こう言った。
「分かったわ。じゃあ、皆、二人だけ残して一旦帰りましょうか。玲、後で迎えに来るわね。」
神はそう言って、他の皆を促しながら「時空門」に入っていった。其れを見つつグラニデウスが言う。
「神は何時もあんな感じなのか?」
「そうですわね。母上は優しすぎると思いますわ。」
玲は素直にそう答えた。苦笑しながらグラニデウスが言う。
「まあ、其処があいつの良い所でもある。それに、玲、お前もそんな母だからこそ慕うのだろう?」
そう問われて、玲もくすりと笑いながら答えた。
「まぁ、父上はお見通しですのね。確かに其の通りですわね。処で父上。父上は母上とはいっしょに行動は為さらないのですか?」
其の質問にグラニデウスは苦笑しつつ答えた。
「そうだな…神に呼ばれれば考えるかもしれないが…一応私も「魔神」なのでな…。そう、ここから離れるわけにも行かないのだ。」
玲は少し気落ちしながら、
「そうですか…。」
と、そう答えた。そんな玲を見ながら微笑むようにグラニデウスが言う。
「まあ、私はすぐにお前達と、どうこうは出来ないが、そうだな、お前の助けと為る様に、もう少し私の「力」を与えるとしよう。」
玲は其の言葉を聞いて、喜びつつ答えた。こう言う。
「有難う御座います、父上。今はまだ私の「力」は御見せ出来ませんがいずれ御見せ出来る時がありますわ。」
其の言葉に喜びつつグラニデウスは答えて言う。
「其れは楽しみにしておこう。Hölle und himmel 此の言葉がお前の力となる。心に置いておけ。」
そしてグラニデウスは玲に「力」を与える為に「力」を使い始めた。其れを見つつ玲は答えて言った。
「分かりました。父上の言葉は間違いなく私の心の中に。私、父上を父上と呼ばせて頂ける事に誇りを感じますわ。」
其れを聞きながらグラニデウスは「力」を玲に手渡した。そんな折、神がやってくる。
「お邪魔だったかしら?」
「いや、大丈夫だ。」
神の問いにグラニデウスがそう答える。微笑みつつ神が玲に言う。
「父親との話は楽しめたのかな?」
「はい。ますます私自身に誇りが持てる様に為りました。」
玲は自信を持ってはっきりとそう言った。抱き寄せながら神が言う。
「良かったわね。少しの間またお別れに為るけれど今日は此れで帰りましょうか。」
「分かりました。では、父上、また会いに参ります。」
玲は神に返事をしつつ、グラニデウスにそう言った。グラニデウスは微笑みつつ答えて言った。
「また、いつでも来るがよい。離れてはいるが私は何時でもお前達を見ている。」
「有難う、グラニデウス。では、また会いましょう。」
神はそう言って別れを告げた。其の姿を見届けつつグラニデウスはこう言った。
「やはり、偶然とはいえ、「神」同士での出会いは、良いものだと言えるのかもしれないな。」
出会えた偶然と、その後の素晴らしい結果、そして先の希望を見つつ、グラニデウスは笑みを湛えていた。
(「時空門」の中、神と玲が歩きながら)
「で、どうだったの?」
「時空門」の途中で神は玲にそう聞いていた。玲が答えて言う。
「はい。父上から素晴らしい言葉を頂きました。」
其の言葉に神は微笑みつつ、
「多分其れが、玲の「力」の鍵になるわ。貴女の「力」を使う時には、グラニデウスの事と、其の言葉を忘れないようにね。」
「はい。分かりました、母上。」
強く頷きつつ、玲は神にそう答えていた。そうして二人は元の場所に戻ろうとしていた。
(ほぼ同じ頃、ザード=フェリティア城のある一室で)
「ふう……。」
それとなく志郎は溜息を吐いていた。其の様子を見ながら惺が言う。
「父上、如何したのだ?」
其の言葉にやや苦笑しながら志郎が答える。
「ああ……なんか、神が選んでくれてるとはいえ、グラニデウスのような立派な存在を見ると俺はかなりちっぽけだな、そう思えてな。」
其の言い分をしばらく惺は考えていたが志郎の方に向きながら言う。
「父上の言いたい事も分かる、俺も玲のような「力」を扱いたいと思う時もある、だが……。」
「ん?どうした?」
志郎は聞きたい素振りを見せて惺に、話すように促す。惺は意を決して言い始めた。
「父上には誰にも無い物がある。それは、母上の絶対的な信頼を勝ち得られていると言うものだ。其れは、どんな「力」よりも素晴らしい物ではないだろうか。」
其の言葉に、志郎は暫くじっくりと自分自身に噛み締める様に聞いていた。そして頷きながら答えてこう言う。
「そうだな…神は、俺を選んでくれた。其れは何物にも換えられない俺だけの物だな。確かに、どんな「力」よりも良い物だ。有難う惺、お前に気づかせてもらうだなんて、俺も父親としてもっと励まないといけないな。」
そう言って苦笑した。そんな折、神達が帰還する。
「ただいま~。あら、如何したのしんみりしちゃって。悩み事?」
帰って、開口一番神はそう言っていた。そんな神を見て志郎は苦笑しつつこう言った。
「いや、俺はお前が大好きだなって話してたのさ。」
そう言われて、神は顔を赤くしつつこう答えた。
「な…何よいきなり…そんなの当たり前じゃない!貴方は、あたしだけを見るんだからね!」
其の可愛い仕草に志郎は苦笑しつつも幸せを感じていた。
(其れから暫しの時間がたった神達一行がいる部屋で)
ザード=フェリティア城内の一室で神達一行は集まっていた。今後の事を話し合うためである。当面の大きな問題は回避できた為、本来の神の旅、つまり、ぶらり旅へ戻ろうかと言う提案であった。
「然して懸案が無いのであれば問題は無いのではないでしょうか。」
玲がそう述べた。誰も反論が無い様なので神が其れに答えて言った。
「じゃあ、旅に戻るとして。当面は何処に向かうかよね。行きたい場所とかある?」
そう言われて一同は暫く悩む。志郎は兎も角、殆どが他国に行った事すらない面々である。迷うのも当然であった。そんな中、志郎が言う。
「皆、そうだな、レネア以外は恐らくあまり外国とかは行ってないだろうし決めるのは難しいのではないかな?」
そう言われて神は苦笑しながら答えてこう言った。
「まあ、そうかもねぇ。今まではアーレフが居たけど、今は旅に慣れたのは志郎とレネア位だもんね。なら、如何しましょうかねぇ。」
そんな風に、悩んでいる所に、部屋に入ってくる人物が居た。
「おやおや。皆で悩み事かい?御姐さんが相談に乗ろうか?」
入り様にそう言ってきたのはシェレーヌであった。今は美女の姿で居る。彼女を見て神は答えてこう言った。
「あら、良い所に来たわね。シェレーヌ相談があるんだけど。」
「おやおや、神さんの相談とあれば、いつでも引き受けるよ。で、なんだい?」
そう言いつつ、シェレーヌは一行の中に混ざっていった。神は今までの経緯を話し始めた。
(ザード=フェリティアの玉座の間にて)
「神殿は旅立たれるのですか。」
玉座の傍でランカスターはそう言っていた。永が答えて言う。
「ええ、とりあえずここは、私に任せるとの事です。まあ、神様の事です。旅立った先でも色々事を為されるでしょう。」
笑みを湛えつつ永はそう言った。そう言いながらも、自分の前にある新国家に対する様々な書類群を手際良く捌いているのであった。其の様子を見つつ、ランカスターが言う。
「しかし、永様が其処まで優れておられますと、私共が何かを言うほどの事でもない様に思われますが…。」
それに答えて永はこう言った。
「別に私の替わりや代理をする為に貴方を据えた訳ではありませんよ、神様は。あのお方は優しいのです。私が一人では寂しいと思われたので傍に居て安心できる者として選ばれたのですよ。そう言う意味ではランカスター、貴方はもっと誇りに思うべきです。」
そう言われ、ランカスターは恭しく一礼をした。永は黙々と書類を捌いているのであった。
(ザード=フェリティア城大将軍執務室にて)
「そうか、旅立たれるか。早い出立だが、希望であれば仕方が無いな。」
神に旅立つ事を伝えられ、セイルはそう言っていた。此処は大将軍の執務室、今はセイルの仕事部屋である。神は其処に来ていたのであった。
「で、まあ、お節介なんだけどね。」
悪戯小僧のように微笑みながら神がそう言う。少し、やばい状況かも、とセイルは感じていた。続けて神が言う。
「貴方とラーナさんをくっつけたくて此処に来ちゃったって訳。」
「はぁ?!」
セイルとラーナは二人してそう言った。その後二人は顔を赤くしながら答えて言う。
「いや、いきなりそう言われても俺はだな…。」
「ちょ、ちょっと神様、私、心の準備が……。」
そんな二人の様子を見て、神はうんうんと納得しながら見ていた。そして暫くしてからこう言う。
「つまり、オッケーて事よねぇ?」
押しの強い、ドスが利いた口調で神はそう言った。セイルはやれやれと両手を広げつつ言う。
「先日、レミアルト国王から書簡が来て「神殿はお節介だから。」と口添えがあったが…。こう言う事だったのか。」
セイルにそう言われて、今度は神が逆に赤くなりながらこう言った。
「んな!ったく……あの人も、人の楽しみの揚げ足取らなくてもいいのに……。」
そんな神を見てラーナはくすりと笑っていた。神は二人を見ながら言う。
「こんな感じなら、変なお節介も要らなかったかな?」
それに答えてセイルが言った。
「いや、有難いと思う。今まで、上官と部下との関係に慣れすぎていたからな。そうやって意識する機会が無かった、と言うよりは、理由にして逃げていた、かな。やっと言えそうだよ。」
其の清清しい笑顔を見ながら神は安心しつつ、答えてこう言った。
「そう。なら良かったわ。じゃあ、お邪魔虫は退散しますか。今度は、貴方達の子供が出来た頃にでも会いましょう。」
そう言って神は、執務室から出て行った。しばし静寂が起きた後にセイルが言う。
「ラーナ、そう言う事だから、今後はそう言う関係でも、お前は良いのかな。」
暫し、間を置いた後でラーナが答えて言う。
「はい。セイルがそう望むなら。」
セイルは「セイル」と呼ばれてラーナを傍に抱き寄せながらこう言った。
「お前も我慢していたのかもしれないな。今度は遠慮なく言ってくれ。」
そう言って二人の絆はより一層強くなるのであった。
(神達一行が集まっている部屋にて)
「決まったぞ。」
自分達の部屋に帰ってきた神に志郎がそう言った。
「あら、早かったわね。で、如何するの?」
神が答えつつそう聞く。志郎は答えてこう言った。
「先ずは南下して旧帝国の衛星都市の一つ「ロギュールミュント」に向かう事になった。」
「へぇ、どうして其処へ?」
神がそう尋ねる。シェレーヌが其れに答えて言った。
「神さんがちょっかい出したくなる様な場所だからさ。」
其の言い分に神はやや顔を赤らめつつ、
「ちょ…シェレーヌまで…ったく、分かったわよ。そう言う事ならまず其処へ向かいましょうか。じゃあ、今日は仕度などをして明日出発と言う事で、ここは解散にしましょう。」
そう言った。此れにより、一行は解散し、各自がそれぞれ仕度をしに部屋に戻っていった。
新たな風が吹き始めた。しかし、澱み行く空気もまだまだあるのであった。
神 「しっかし…「地獄と天国」って…まるっきり…「勇者王」じゃ……。」
作者「あ~……。まぁ、二つの相反する「力」を合わせる訳だし、実質同じ様な物でしょ……。」
神 「原理的には似てるかもねぇ……。」
玲 「と、言う事は、私も、「ゲン、ギル、ガム、ヴォクホ……」と、言わないといけないとかでしょうか?」
作者「あ、いや、其処まで真似しなくていいから……。って言うか、その台詞合ってるか分かってないし……。」
神 「まあ、とりあえず、次回で再び旅に戻るのね。」
作者「うん。神のお節介の旅がね。」
神 「其処、五月蝿いわよ!まあ、次回予告ね。玲御願い。」
玲 「はい、母上。次回「Reisende「旅人」」と為ります。皆様、お楽しみに。」
作者「只、作者が些かブルー状態なので更新は遅れます……。」
玲 「あらあら。」
貴方にも良い風が吹きますように。