宝物
神達はアーキレストの街で一時的に冒険者として過ごして居た。ふとした事から自分の貴いものを語り合う事に為った。彼らの「宝物」とは・・・。
小説 風の吹くままに
第十一章 宝物
「よし、これで依頼完了だな。おめでとう。」
ギルドマスターにそう言われてラミュアは喜んでいた。そう、彼女は初の依頼を完遂したのである。ラミュアは笑顔でディルサイヴに報告する。
「ディルサイヴ、報告が済んだぞ。」
ラミュアを見つつディルサイヴが言った。
「ああ、良くやったな。これでとりあえず、私との冒険は終わりだな。」
「もうやらないのか?」
ラミュアが問う。当惑しつつディルサイヴが言う。
「いや、そう言うわけではないが・・・お前達も何時もここに居るわけではあるまい?」
「そうだな、マスターはいずれ旅に出るはず。」
ラミュアはそう答える。ディルサイヴは少し悲しげに言った。
「そうだろうな。私はすでに高齢でな、あまり旅には向いておらん。それに研究したい魔法も一杯あるのでな。今回でお別れになるだろう。」
「そうか・・・寂しいな。」
ラミュアが悲しげに言う。ディルサイヴが驚きつつ言う。
「ラミュア・・・お前分かるのか?」
「?」
ラミュアはディルサイヴの言う意図が分からず首をかしげる。
「ディルサイヴ、何のことだ?」
そしてラミュアは問いながらそう言った。ディルサイヴは言う。
「お前、寂しいと言っただろう。」
ラミュアは頷きつつ言った。
「ああ、ディルサイヴと別れるのなら寂しいのでそう言った。」
ディルサイヴは感動しながら言った。
「そうか・・・そうか・・・それが分かるか・・・素晴らしい!素晴らしい!私もその境地まで行きたいものだ。」
そう言いつつディルサイヴはラミュアを抱きしめていた。あまりに強いのでラミュアが言う。
「ディルサイヴ、締め付けが強いのだが・・・これはどうしてなのか?」
ラミュアは理解できずに迷っていた。二人の様子を見ながら神が言う。
「ラミュアもえらく進歩したわねぇ・・・」
アーレフが答えて言う。
「そうなんですよ。何がきっかけかは分かりませんがかなり自発的になっていますよ。」
「そう。いい傾向ね。」
神はそう言って喜んだ。
「ところで、ミルのほうはどうなんでしょうね。花嫁の護衛とか言ってたけど。」
神がポツリとそう言った。志郎が答えて言う。
「まぁ、護衛する必要のない花嫁じゃないんだからさぞ可愛らしいんだろう。」
「何か言ったかしら?」
神がきつい口調で言う。志郎が答えて言う。
「お前も可愛いってことさ。」
そう言われて、神は顔を赤くしながら言う。
「もう・・・馬鹿。」
そんな二人をアーレフは微笑ましく見ていた。
「これは?」
ラミュアはディルサイヴが差し出した装飾品を見てそう言った。ディルサイヴは答えて言う。
「これは、私が作った魔道具の一つでな。まぁ、能力はたいしたものではないが装備者を若干守護する働きがある。これから一緒に行けないからな、お前に上げたいと思うのだ。」
そう言ってディルサイヴはラミュアに手渡した。ラミュアが言う。
「これを私に?くれると言うのか?」
「ああ、ぜひ貰って欲しい。私が喜ぶために。」
ディルサイヴはそう言った。ラミュアはそれを手に取った。髪飾りである。しかも手の込んだ装飾が為されており一般に売ったとしても非常に高額で取引されるほどの代物であろう。ラミュアはそれを見ながら言った。
「私が貰って良いのだろうか。」
「もちろんだとも。私のためにもぜひ貰ってくれ。お前のような者に使われるのであれば私もその作品を作った甲斐があるというものだ。」
ディルサイヴはそう答えた。ラミュアはそれを見ていた。が、なぜか、それが見えにくくなった。髪飾りが手の中で次第に濡れていた。そう、ラミュアは泣いていた。
「私は・・・どうしたのか。なぜ、泣いている。」
ラミュアは自分の行動が理解できずにそう言っていた。それを見つつ、晶も泣いていた。
「素晴らしいです。ラミュアさんは。私でも分かるほどに成長されています。」
「当然よ。あたしが創ったんだから。」
神がそう言う。苦笑しつつ志郎とアーレフがラミュアたちを見守っていた。
ラミュアは、ディルサイヴから貰った髪飾りをディルサイヴに向けて差し出した。そして言う。
「ディルサイヴ御願いがある。私にこれをつけて欲しい。」
そう言われてディルサイヴは一瞬躊躇しつつ言った。
「私でいいのか?言っては何だが男ゆえにそう言う良し悪しはあまり分からぬのだが・・・」
ラミュアは「微笑み」つつディルサイヴに言った。
「ぜひ、あなたにして欲しい。駄目だろうか?」
ラミュアのその顔を見てディルサイヴは暫く時が止まったように感じた。そして、言う。
「なんという・・・そのような顔をされて断る男は居ないと思うぞ。ありがたく、その大役を果たさせてもらおう。」
そう言って、ディルサイヴはラミュアから髪飾りを受け取り、ラミュアの頭に飾っていった。それが終わったときラミュアは身体を回しつつ言った。
「どうだ?似合うだろうか?」
その様子はまるで娘がお洒落をしてそれを自慢するかのようであった。ディルサイヴはそれを見て感動しつつ言った。
「ああ、良く似合うとも。本当に、今まで魔道具をいろいろ創ってきたがこれほど充実したことはない・・・」
そう言い、ディルサイヴはそこに倒れてしまった。それを見てラミュアも含め皆が駆け寄る。
「どうした?!」
志郎が声を掛ける。神が「力」を使いつつ言う。
「彼は病気持ちの様ね。結構重症よ。多分、興奮しすぎたので緊張しすぎて今、それが切れちゃったって所ね。」
「とりあえず、彼をベットまで運ぼう。」
志郎がそう言うとラミュアが進み出て言った。
「私がやる。」
そう言ってラミュアはディルサイヴを抱えてベットに連れて行った。それを見ていたアーレフが言う。
「なんだか、もう父娘って感じですね。本当に。」
それに答えて神が言う。
「それはディルサイヴにとっては最高の賛辞ね。魔法を使うものにとって自分が創造したものに敬われるほどの喜びはないはずよ。だからこそ、魔道生命に燃える魔術師が多いのだけれどね。」
「なるほど。ディルサイヴさんの今までの言動はそういわれると納得できます。」
晶はそう言った。一行はディルサイヴを休ませる部屋へと向かった。
目を開けると自分はベットに寝かされていることに気づいた。そうか、私は倒れて・・・。自分の上に何かが覆いかぶさってることに気づいてそこに目をやる。そこにはラミュアがいた。彼女は眠っているのか、私の覆っている布団の上に被さる様に倒れこんでいた。
「目を覚ましたのね。」
そう言う声が聞こえた。声のほうに顔を向けると神が居た。
「ああ、私は倒れてしまったようだ。申し訳ない、ラミュアにも心配させてしまった。」
「全くね。ラミュアのためにもあなたには暫く生き続けてもらうわ。」
私の答えに構わず神はそう言った。私は答えていう。
「それはどういう・・・。」
それを遮り神が言う。
「ま、今回はあなたの意思や意見はまるっきり無視するわ。これからラミュアを連れて行く上でいきなりあなたの死を見せるわけにも行かないからね。最低三十年は死ねないと思いなさいな。」
彼女はそう宣告した。ラミュアのために・・・か。なぜか嬉しく思った。
「それはありがたい。私もラミュアを悲しませたくはないからな。私からもぜひ御願いする。それに・・・あと三十年も頂けるなら私の研究もさぞはかどるだろう。」
私はそう言った。彼女は私の答えを予測したかのようににやりとしつつ言う。
「及第点な答えね。ラミュアも喜ぶと思うわ。お節介だけどね。ここは受け入れてもらうわよ。」
「分かった。」
私はそう答えた。彼女は私に手を伸ばし「力」を私に向けて差し出してきた。「力」が私に入っていくのを私は感じていた。
ラミュアは眠っていた。いつ眠ってしまったのかそれすら気づけなかった。それほどまでに気になっていたのだ。そう、ディルサイヴのことが。ラミュアは目を覚ますと彼を探した。さっきまで寝ていたはずなのに?そう、ベットには誰も居ない。困惑してラミュアは感覚を研ぎ澄ます。彼はどこに??感覚は酒場に彼が居ることを示した。ラミュアは急いでそこを後にして飛び出す。
「お、お姫様が目を覚ましたぞ。」
志郎がそう言う。ラミュアはディルサイヴが居る位置に目を追った。彼は微笑みながらラミュアを見ていた。そして彼が言う。
「おはよう。心配を掛けてすまなかったね。」
彼がそう言うのを見てラミュアは自分が涙を流しているのに気づいた。そして彼に近づいていく。
「ディルサイヴ。もう大丈夫なのか?」
ラミュアはそう言った。ディルサイヴは答えて言う。
「ああ、もう安心しなさい。お前のマスターが私を癒してくださったよ。」
そう言われて、ラミュアはディルサイヴの胸に入るようにして倒れこんだ。そして、泣き崩れた。その声は大きく、また、非常に可愛いものだった。そう、娘が喜びの声を上げるが如く。
「ま、何だな。娘にああやって喜ばれるのは父親冥利って奴なのかな。」
志郎がそう言う。神が微笑みながら言う。
「そうね。そうかもしれないわ。志郎もやりたいの?何なら創るわよ?」
「いきなり俺もかよ。いや、今は遠慮しておこう。それに、娘なんぞ出来たらお前が嫉妬しそうだ。」
志郎がそう答えたのを見て神が頬を膨らませつつ言う。
「なによ。あたしが焼きもち焼きみたいに・・・。」
「違うのか?」
「違わないわよ!」
そう神が言うのを見て志郎はくすりと笑いながら神を抱き寄せて言った。
「だから、お前と一緒になって良かったと思ってるさ。」
神は顔を真っ赤にしつつ言った。
「もう・・・馬鹿。」
くすくすと笑いつつアーレフと晶はその様子を見ていた。
「本当に素敵ですね。神さんたちもラミュアさんも。」
晶がそう言う。アーレフが答えて言う。
「そうですね。私もディルサイヴさんのように言える日が来るといいものです。そう、横にあなたが居れば十二分です。」
「え?」
晶は、アーレフが何を言ったのか理解出来ずそう尋ねてしまっていた。アーレフは躊躇しつつ言う。
「あ~。いや、その。詳しいことはまた二人きりのときにでも・・・。」
そうやってアーレフは誤魔化して言った。晶は微笑みつつ言う。
「はい。お待ちしてます。」
朝。やはり、清清しい朝はいつ来てもいいものである。気持ちを爽やかにし、また、病んでいる気持ちを癒してくれる。
「さて、今日もやりますか。」
「そうだな、昨日とは違うところを見せてやろう。」
神と志郎はそう言いあっていつもの朝の修練を始めた。アーレフは階上からそれを眺める。いつもの日課になりつつあった。最近は酒場の前に街の見物客が集まるようになったほどである。今日も二人は激しく修練をしていた。晶が目を覚ましてやってきた。
「おはようございます。お二人は相変わらずですか。」
そう言われてアーレフは微笑みながら答えて言った。
「ええ、最近は街の方も定期的に見に来られるファンが増えてますね。」
そう言いつつ階下の様子に目を落としていた。暫く時が過ぎた後でラミュアが部屋にやってきた。
「朝食だ。準備がいいようなら降りてきてくれ。」
そう言う。アーレフは答えて言った。
「分かりました。もう少ししたら向かいますよ。」
「分かった、マスターにも言ってくる。」
そうラミュアは答えて階下に下りていった。その様子を晶は見つつ言った。
「数日前とはまるで変わられましたね。」
「ええ。彼女はどんどん成長しています。私も負けられませんね。」
アーレフは微笑みつつそう言った。階下ではラミュアが神たちに声を掛けていた。
「では、もうそろそろミルさんも仕事が終わりそうなんですね。」
アーレフは朝食を取りながらそう言っていた。神が答えて言う。
「ええ、なんでもかなりしつこい奴らしかったけどどうにか撃退したってミルが昨日言ってきたわ。ただ・・・」
「どうかされたんですか?」
晶が聞く。神が答えて言う。
「ああ、うん。なんかミルの様子がおかしいのよねぇ。変というわけじゃなくて。なんて言うんだろ?うまく言えないんだけどおかしいってことだけは分かるって言うか。」
「ふむ、つまり、いつもの様子とは違うって事か。」
志郎が神の言いたいことを代弁して言う。神が頷きつつ言う。
「そう、そんな感じ。なんか変なのよ。まぁ、あの子はしっかりしてるからその点は気にしてないんだけど。なんか変な虫でもついたのかしら?」
そう言う神を見ながら晶は微笑みつつ見ていた。
「では、今日はどうするかな。皆はどうする予定なんだ?」
志郎が問うて来る。神が答えて言う。
「あたしは適当にぶらつく予定よ。変な虫でも引っ掛けようかしら?」
「おいおい・・・旦那を前にそれかよ・・・。」
志郎が苦笑しつつ言う。アーレフが言った。
「私はまた教会で資料を読みに行って来ます。」
「あ、私もアーレフさんに同行します。」
晶がそう言う。神がそれに答えて言った。
「そう、分かったわ。ラミュアはどうする?」
「私か?私は・・・そうだな、またディルサイヴの元で話をしてこようと思う。」
ラミュアは答えてそう言った。神は納得しつつ言う。
「わかったわ。彼によろしくね。ところで言いだしっぺの志郎はどうするのよ?」
「俺か?そりゃ簡単だろ。」
志郎がそう答える。続けていった。
「女房に変な虫がつかないようにするだけさ。」
そう言われて笑いが起こった。神は顔を真っ赤にしつつ言う。
「ば、馬鹿!さっきのは言葉のあやって言ってねぇ・・・」
むきになり言う神を抑えつつ志郎が苦笑して言った。
「落ち着けって。冗談だよ。まぁ、お前と一緒に行くことは変わらないがな。」
「もう・・・。」
神は頬を膨らませつつ志郎に寄り添った。
朝食の後、皆はそれぞれの目的に行動を移した。
「さて、どうする?ナンパでもするのか?」
志郎が冗談ぶいてそう言う。神が答えて言う。
「なーによ、浮気でもされたいわけ?」
「いや、そう言うわけじゃないが。まぁ、あれだ。刺激が少ないからさ。何か出来ないかとな。」
志郎が苦笑紛れにそう言う。その言葉に頷きつつ神が言う。
「そうよねぇ。ラミュアとか皆はいろいろ楽しんでるのだからあたし達も楽しみたいわねぇ。」
「そうだろう?いい方法はないものかな。」
そう言って志郎は腕を組み考え始めた。神は暫く外を眺めていた。
アーレフたちは教会の資料室に来ていた。蔵書が沢山あり、基本的に閲覧であれば自由に出来るものであった。実際、朝早いのに勉強熱心な学生や神官たちが幾人かすでに学習に来ていた。
「初めて入りましたが素晴らしいですね。蔵書がこんなにあります。」
晶はそう感想を述べた。アーレフは微笑みならが答えて言う。
「そうですね、貿易が盛んなせいか、いろんな場所の優れた書物がありました。私も有意義に過ごさせてもらっていますよ。晶さんも興味があるものを読まれたらいいかもしれないですね。」
「はい。そうさせて頂きます。」
晶はそう答えて蔵書に眼をやって選んでいった。アーレフはその様子に微笑みつつ自分も読みかけていた本を開き求めるべき情報を追い始めていった。
ラミュアはディルサイヴの家に来ていた。そして彼の魔法を研究する部屋で彼の研究を手伝うべくいろいろ作業を手伝っていた。もう、一緒に居る時間はあまりない。それがお互いが分かる故に普段通りの様に、はたから見えるが実際は別れが惜しいが故に「普通」に振舞っている二人であった。
「済まぬ。ラミュア、そこの十二番の試薬を取ってくれ。」
「これでいいのか?」
そんな感じで微笑ましい光景が広がっていた。
ミルは困っていた。依頼自体はほぼ完了しているのだが問題があった。
「ミルさま~。」
可愛い声でミルを呼ぶ声があった。ミルはその声を聞きうんざりした様子で答える。
「レネアさん~。あたしはそう言う趣味はないって言ってるんですけど~。」
「何を言ってるんですか~。あなたのような素敵な女性を見過ごす事はこのレネアには出来ませんよ~。」
レネアといわれた女性はそう言いつつミルに抱きついた。ミルは抵抗できないわけではないが諦めつつ言う。
「も~。今はまだお仕事中ですから~。夜までお預けですよ~。」
「分かってます~。お仕事の邪魔はしませんよ~。」
レネアは素直にそう答える。そして、ミルを見ながらニヤニヤしつつ言った。
「えへへ。夜になればミル様と~♪想像するだけでレネアいっちゃいそう~。」
レネアは興奮しつつ耳を立てた。そう、彼女は人間ではなくエルフであった。しかもかなり若い。街中で若いエルフがこうしていること自体が不思議であった。そんなレネアを見つつミルは苦笑しながら言った。
「どうしてこんなになっちゃったんでしょうねぇ・・・。」
ミルは、自分の起きた境遇を少し哀れんでいた。
「宝物ねぇ・・・」
神がそう言った。志郎がそれに答えて言う。
「ああ、お前にはそう言うものはないかな?まぁ別に今持ってるとかでなく以前持ってた、とかでもいいが。」
「そうねぇ・・・あたしにとっては今の仲間かな。特に限定するなら志郎、あなたね。」
神はそう答える。志郎が答えて言う。
「なるほどな、確かに神らしい答えだな。俺はなんだろうな。昔は、鍛え上げたこの能力が一種の宝物だったが・・・。」
「なるほどね。で、今はどうなのかしら?」
神は問う様に言った。志郎は苦笑しつつ答えて言う。
「やはり、お前しかないな。」
「あたし?」
「他には代用が出来ないからな。」
「・・・・・・」
「どうした?」
「馬鹿・・・」
「そう、馬鹿だよ。」
そう言って志郎は神を抱き寄せた。神が言う。
「みんなの宝物は何かしらね。後で聞いてみようかな。」
「そうだな、面白そうだな。」
志郎も賛同しつつそう言った。
「「宝物」ですか。」
アーレフがそう言った。神から質問されていたのである。自分にとって「宝物」は何か?と。神が言う。
「ええ、あたしや志郎が思う「宝物」はさっき言った通りよ。もちろんこれは個々の基準で異なるからそれぞれ違うものであると思うの。もちろん、言うか言わないかは各人の自由よ。」
「そうですね。私にとっては皆さんが「宝物」と言えるでしょう。素晴らしいものを見せていただける。そう言う「宝物」ですね。かけがえの無いものだと思いますよ。」
アーレフがそう言う。神は間髪いれずに突っ込みつつ言った。
「ふ~ん。まぁ、アーレフならそう言うでしょうけど。肝心な点が抜けてるわね。」
「何か言い忘れていましたか?どこか言葉が足りなかったでしょうか?」
神の意図が分からずにアーレフがそう答える。神が言った。
「誰も気づかないなんて思ってるんじゃないでしょうね。もしそう思ってるのなら自分の管理が甘いわよ。」
そう言われて苦笑しつつアーレフは答える。
「分かりました。しかし、言わなければなりませんか?」
「それはあたしが決めることじゃないわ。でも、いい機会だからこの際言ったほうが楽かもよ?」
神がそう言って言うように促す。アーレフは溜息を一つ吐きつつ言った。
「確かにそうですね。あえて機会を作ってくださったわけですし、この際ですから済ませたほうがいいかもしれません。晶さん、お聞きくださいますか?」
晶はそう言われて驚きつつ答えた。
「あ、はい。何でしょうか。」
アーレフは少し間をおいて言い出した。
「私はあなたが好きです。そして是非ご一緒したいと思っている。そう、もっとも大事な「宝物」にしたいのです。初めてお会いしたときからあなたに好意を抱いていました。しかし、ご一緒するうちにこの気持ちは間違いないものかけがえの無いものであることに気づきました。ですから、あなたが宜しければ私と夫婦になって頂けないでしょうか。」
アーレフがそう言うと暫く沈黙が続いた。その後、泣きしゃくる音が聞こえてくる。晶が泣いていた。
「晶、すぐ答えなくてもいいわ。でも、気持ちは早めに伝えたほうがお互い気持ちよくなるのは間違いないわね。あたしもそうだったし志郎に言われるまでどんなにやきもきしたか・・・。」
神は苦笑しつつそう言った。志郎が言う。
「いや・・・あの時はだな・・・。」
「あたしは永遠にこれは引っ張るわよ~。嫉妬深いですからね。」
神は悪戯小僧のように言う。それを見て晶が口を開いた。
「そうですね・・・答えないと折角の「宝物」を失いそうです。私も言わせて貰います。」
そう言って晶はアーレフのほうに向き直った。そして言う。
「私もあなたと同じように、今の仲間が非常に大事な「宝物」です。私はあなた方に命を救われました。それだけでも非常に感謝しています。それだけでなく、このように一緒に楽しませてもらっています。でも、それだけでなく、あなたが、あなたが私に、私個人に愛情を示してくださるので私は心温まることが出来るのです。この温もりは決して手放したくはありません。あなたの申し出を私は是非受けたいと思います。」
それを聞いてアーレフは晶の手を取った。神が言う。
「よく言いました。志郎にも見習って欲しいくらいね。」
「おいおい、ここで俺が出てくるのかよ。」
志郎が苦笑しつつ言う。神が続けて言う。
「まあ、その点は後回しにして、アーレフたちのは聞けたわね。あ、その後については後で話し合うからね。次はラミュア、あなたはどうかしら?」
「私の「宝物」か?」
ラミュアが答えて言う。神がそれに答えて言った。
「ええ。あなたがそう思うものは何かしら?」
「そうだな・・・ここにいる皆もだが、私にとっては今はこれかな。」
ラミュアはそう言って頭にある髪飾りを指した。そして言う。
「私は生まれ変わることが出来た。もちろん、それをしてくれたのはマスターだが、その印としてこれが今私の元にある。大事な思い出。これが私の「宝物」だな。」
「そう。ラミュアもいい経験をしたわね。」
神が微笑みながらそう言った。皆も頷く。
「ところで、ミルは遅いわね。話だと今日帰ってくるらしいのに。」
神がそう言う。志郎が答えて言った。
「確かにな。依頼は無事終わったんだろ?」
「ええ、そう伝えてきたわ。ただ、何か面倒なことがありそうな言い草だったけど、あの子何を抱えてるのかしら?」
神が不思議そうに言う。そう言ってるときにミルの声がしてきた。
「皆さん~。遅くなりました~。」
そう言ってミルが入ってくる。しかも、少女らしい女性を抱えて。
「ミルさんお帰りなさい・・・って、その子はどうされたんですか?」
晶が驚きながら言う。ミルは多少困りつつ言う。
「あ~・・・実は~・・・依頼で護衛をしてたんですけど対象者を付け狙っていたのがこの子だったんですよ~。で、あたしが対応したんですけどなぜか好かれちゃって~。」
神は噴出して言った。
「ミルったら・・・あははは・・・ああ、もう、おかしくて・・・・わざわざエルフのしかも女の子に好かれるなんてミルもやるわねぇ・・・あははは・・・。」
「む~~~。マスターそんなに笑わないでくださいよ~。ミルはこれでも大変なんですから~。」
ミルは頬を膨らませながら言う。神が答えて言った。
「その割には彼女を邪険にはしてないようだけど?」
そう指摘されて、ミルは顔を赤くしつつ言った。
「いや、それは~。あたしを好いてくれてますし~。それにこの子は可愛いし、親切なんですよ~。能力もあるし~。ちょっと、おかしな所がありますけど・・・。でも可愛いんです~。」
「ふむ、つまりミルも気があるということか。」
志郎がそう言う。ミルはあわてて言う。
「志郎様・・・いや、そう言う意味じゃなくて~。あ~、ミルも混乱しそうです~。」
神は一通り笑ってから言った。
「はぁ・・・良く笑ったわ。まぁ、つれて来た以上しっかり面倒を見なさいな。どうせ、そのつもりだったんでしょ?」
「あ、はい~。実はそのお許しを貰おうかとつれて来たんですけどね~。レネアちゃん寝ちゃったんです~。」
ミルはそう答えて言った。神は言う。
「へぇ、レネアって言うのね。可愛いわ。ミルにとって新しい「宝物」になりそうね。」
「「宝物」ですか~?何の話です~?」
ミルが問いながら聞く。神が説明して言う。
「皆が大事な「宝物」は何かって話になってね。お互いに言い合っていたのよ。」
「なるほど~。確かにレネアちゃんも今では大事ですね~。もちろん、マスターも含め皆さんも大事です~、そう言う意味では確かに「宝物」ですね~。どれか一つにはあたしはまだ絞れないですねぇ。」
ミルは答えつつそう言った。微笑みながら神が言う。
「ミルらしい答えね。さて、ミルは今帰ったばかりで知らないでしょうけど、アーレフと晶がさっきやっと告白したわよ。」
そう言われて、二人は赤面する。ミルは二人を見つつ言った。
「それは~。お二人ともおめでとうございます~。ラミュアちゃんと二人で、いつするのか噂してたんですよ~。」
「え?って、皆知ってたんですか?」
アーレフが驚いて言う。神が呆れながら言う。
「アーレフ・・・今までの状況で気づかないほうがどうかしてるわよ・・・あなた人を見る目は確かなんだからもう少し自分も良く見たほうがいいわ。」
神にそう言われて苦笑しつつアーレフが言った。
「確かにそうかもしれないですね。別に隠していたわけじゃないですし。知られていて当然ですよね。」
ラミュアが晶の前に来て言った。
「晶、おめでとう。」
晶は涙を流しつつ答えて言った。
「ありがとう・・・ありがとう・・・。」
そんな彼らを神は微笑ましく見ていた。
「ん~・・・。」
神は志郎とベットで一緒になりつつ考え事をしながらそう言っていた。
「どうした、さっきから悩んでるようだが。」
志郎がそう問う。神が苦笑しつつ答える。
「ああ、ごめんなさい。皆いろいろ行動し始めたのは嬉しいのだけどなんか寂しくてね~。」
「ふむ、確かにそうだな。」
志郎も賛同しつつそう言った。神が続けて言う。
「この際だからさ。志郎、娘の一人でも創らない?」
「はぁ?!」
志郎は神の突然の提案に吃驚して答えた。
「いや、だから、あたしとあなたで「娘」を創らないか?って言ってるのよ。」
神はそう言って、これからしたいことを提案した。志郎は困惑しつつ言う。
「いや、言いたい事は分かるが・・・つまりあれか?夜のをもっと激しくしろとか?」
神は顔を真っ赤にしつつ言う。
「ば、馬鹿!別にそっちで作るとは言ってないわよ。あたし達「人」じゃないのよ?あくまでこの姿は「かりそめ」なんだからね。」
神が言おうとしていることに気づいて志郎が言った。
「ああ・・・すまん。どうもまだそっちの認識が疎くてな。ふむ、って事は何か。お前、欲しくなったのか?」
神は顔を赤くしつつ言った。
「ま、まぁそう言うこと。ラミュアとかそれぞれが自立し始めるとなんか寂しくてねぇ。もちろん今すぐあたし達から離れることはないし、ミルなんかは「使い魔」であることを自称してるからなおさら離れないでしょうけどね。ただ、元々自立できるようには創っているから最終的には離れていくでしょうね。だからかな、折角あなたと一緒になったし二人の「娘」が欲しくなったのよね。駄目かな・・・?」
志郎は得心しつつ言う。
「まぁ、言いたい事は分かったが・・・なぜ「娘」なんだ?「息子」でもいいような気もするが。」
神は答えて言う。
「その点は簡単よ。あたしについてきてあなたも私の一員になったでしょ?つまり「神」に。」
「ああ、そうだな。」
「同じようにさせたいからよ。まぁ選ぶのは本人だから「人」を選ぶ選択肢を考えるかもしれないけどね。あたしはそれを選んで欲しくないからなぁ・・・。」
「なるほどな、確かに、男が言うよりは女が言うほうが効果的だな。」
「それに・・・」
「それに?」
「あなたも嬉しいでしょ、娘でも。息子も欲しいなら両方創る?」
「いきなり二人は相手が大変そうだな。そうだな、お前の意見もあるし、俺も興味があるからまずは娘でいってみるか。で、どうするんだ?」
「えっとね・・・」
そうやって、神は志郎と「娘」について話し始めた。
朝。天気が悪いとやはり気は滅入るものである。そんな時には気分を変えてと思うのが心情である。アーレフはそう思いつつ外を眺めていた。
「こういう日は流石に修練は無理ですよね。あ、でも出来なくは無いのかな?」
そう言いつつ外を眺めていた。外は、今にも雨が降りそうな雰囲気だった。
「おはようございます。」
「あ、おはようございます。晶さん。」
晶は、アーレフの部屋に来て挨拶をしていた。アーレフはそれに答えた。お互いににこやかに挨拶を交わす。そんな中、一人の8~10歳程度に見える女の子が部屋に入って来て言った。
「おはよう!アーレフ、晶、今日は天気がよくないな。」
二人は、いきなりだったので、
「おはよう。」
と、答えただけで立ち止まってしまった。少女はその後すたすたと別の部屋に去っていった。
「今の子は誰でしょうか?私たちの名前を知っているようですけど。」
晶は疑問に思いつつそう言った。アーレフは少し考えてからこう言った。
「私の考えに間違いがなければですが神さんじゃないですかね、原因は。」
「えっと・・・神さんが創られたとかですか?」
晶がアーレフの言いたい事を考えて答える。アーレフは頷きつつ言った。
「恐らくですけどね。レネアさんとは違う方ですし彼女はまだ私たちを知りませんからほぼ間違いないと思いますよ。」
「そうですね、朝食のときには分かるかもしれないですね。」
晶はそう言って納得した。アーレフは晶を見ながら微笑んでいた。
「ふう。初めてやったが結構きついんだな。」
志郎がそう言う。神が微笑みながら答えて言った。
「ん~。まだ志郎は慣れてないのと「力」がまだあまりないからかもね。しかし、志郎。娘なのになんであんな言葉遣いなのよ。」
「あ、いや・・・その、俺と一緒に修練をしてくれる者が欲しくってだな・・・。」
志郎はややしどろもどろに答えて言った。神は苦笑しつつ言った。
「なぁに、あたしじゃ不満なわけ?第一、修練に参加させるのと言葉遣いに何の関係があるのよ。あれじゃまるで男みたいじゃない。」
「まぁ、その見た目は可愛くていいだろ?」
志郎が苦笑しつつ言う。神はキッと睨みながら言った。
「話題を変えて誤魔化すんじゃない!ったく、まぁでも、志郎の気持ちは分かるけどね・・・」
「何か言ったか?」
志郎が聞く。神が答えて言う。
「な、なんでもないわよ。それよりも惺はどこに行ったのかしら?」
「皆に挨拶してくる、とか言ってたぞ。」
志郎が答えて言う。神が呆れつつ言う。
「はぁ・・・活発なのは誰に似たのかしら・・・あたし?それとも?」
志郎は両手を広げて答えた。神はがっくりと首をもたれていた。
「惺ちゃんと言うのですか~。よろしくです~。」
ミルが惺に挨拶をしていた。レネアはミルにくっついたまま惺を見ている。ミルはそれを見て言う。
「あ、この子はレネアちゃんといいます~。今はミルと一緒にいるんですよ~。仲良くしてくださいね~。」
「惺だ、母上と父上から教わっている。これから宜しく頼む。」
惺はそう言って挨拶をしていた。レネアは黙ったまま惺を見ていた。
「なんだか私に似ているな。」
ラミュアはそう言った。神は苦笑しつつ言う。
「まぁ、志郎と二人で創った初めての子供だからね。ちょっと性格とかが問題あるかも。」
「おいおい・・・惺は十分可愛いじゃないか。」
志郎が抗議する。それに答えて神が言う。
「可愛いから困るのよ。あの可愛さでいきなりああいう言葉遣いされたらショックが大きいわよ。もちろん、ギャップによる可愛さはあるでしょうけど・・・。」
「お前だってミルを創ってるしな。あ、でも、ミルはモデルが居たんだっけ。」
志郎がそう言う。神は苦笑した。
「母上。」
惺はそう言って神を呼んだ。神は答えて言う。
「何かしら?惺。」
惺は答えて言った。
「朝食の後、父上と修練をしても宜しいか?」
「ええ、あなたなら問題ないわよ、と言うか、あなたのほうがいいわね。あたしでは弱いものいじめになるから。今後は惺に御願いしようかしら。」
神はそう言った。志郎は苦笑しながら言う。
「事実ではあるが、露骨に言われると結構傷つくな。まぁ、仕方が無い、別の方面で勝つさ。」
「それは楽しみ。」
神が微笑みながら言った。惺が自身ありげに言う。
「うん。俺に任せてくれ。父上と一緒に母上に追いついてみせる。」
「あら、頼もしいわね。気長に待ってるわよ。」
神は笑顔でそう答えた。晶が言う。
「では皆さん、食事を始めましょう。」
そう言って皆は朝食を始めることにした。
志郎と惺は表に出ていた。天候は悪いがまだ雨は降ってはいなかった。二人はやや離れて対峙し、構えを取った。志郎が言う。
「いいぞ。惺、来い。」
「父上、いざ、参る!」
惺はそう言って一気に間合いをつめる。志郎の懐に入ったかと思うと「気」を放った。
「いきなりか!」
志郎はそう言いつつ、自分に展開した「気」を使いダメージを軽減しながら回避する。そしてそのまま惺の側面に回りこみながら攻撃を掛ける。惺はそれを受け流そうとする。志郎はそれを「読み」その面に対して「気」を叩き込んだ。惺はそれにより吹き飛ばされるがすぐさま受身を取る。
「やるな、父上。」
惺はそう言って体勢を整える。そこに間髪いれずに志郎は「気」を使って「力」の塊を惺に向かって放った。惺は自らも「気」を練り上げ「力」を受け止める、更にそれを志郎に向けて打ち返した。
「なっ・・・」
志郎はそう言いつつ、帰ってきた「力」を防ぐために「気」を展開した。大きな衝撃がおき周囲の空気が響く。その大きさにより周囲の家の者たちが出て来たり、見に来たりしてきた。
「あら・・・ちょっと派手にやり過ぎたかな?」
神が苦笑しつつそう言う。アーレフが微笑みながら言う。
「それだけ真剣ですね二人とも。」
皆は頷いた。二人の「戦い」は続いていた。志郎が「気」を溜め上げて惺に向けて「力」を放った。惺はそれに耐え切れず吹き飛ばされる。神はそれを見て言った。
「そこまでよ。二人とももう止めなさい。」
そう言われて、二人は手を止めた。志郎が言う。
「危なかったな。もう少しで惺に負ける所だった。」
「くっ、まだ父上には敵わないか。」
惺は悔しげに答えて言った。苦笑しながら神が言う。
「初日から勝ったら志郎の父親としての威厳が無くなるわね。」
「おいおい、それは御免被りたいぞ。」
焦りながら志郎は言った。皆が苦笑する。そんな時、雨がぽつぽつと降り始めた。
「雨が降り出したわね。宿に戻りましょうか。」
神がそう言い、皆が頷いて宿の中に入って行った。
「ところで、レネアだったわね。」
神がそう言う。レネアが答えて言った。
「はい?何でしょうか~?」
「いつまでミルについて行くつもり?」
神に言われてレネアは少し考えてから言った。
「え~っと、飽きるまで~。じゃ駄目ですか~?」
「いいわよ。」
あっけらかんと神は答える。ミルは焦りつつ言う。
「ええ~!マスターいいんですか~?」
「ええ。嫌ならミルは追い払ってるでしょ?」
神はそう指摘する。ミルは指摘されて苦笑しつつ答える。
「それは、そうですけど~。でもレネアちゃんの「あれ」はちょっと~。」
「「あれ」?「あれ」って何ですか?」
晶が問い尋ねる。レネアが晶の傍に来て言う。
「こういうことですよ~。うふふふ♪」
そう言いつつ、晶の胸などを触り始めた。吃驚して晶が言う。
「ちょ!ちょっと!レネアさん、止めて下さい。」
「あ、晶さんも気持ちいいなぁ。」
レネアが晶をいじりながらそう言った。アーレフが立ち上がり言う。
「止めていただけませんか?」
それを聞いてレネアは「何か」を読み取り、手を控えた。そして言う。
「は~い。お兄さん何か怖い。」
「勘は良いのねぇ。まぁ、ミルだけで我慢なさいな。晶はアーレフと一緒になるんだしね。」
神がそう言う。晶は顔を真っ赤にしていた。アーレフは少し不満げに座る。苦笑しつつ志郎が言った。
「何とも面白いのが来たなぁ。」
「良いんじゃない?あたしは別に構わないと思うわ。」
神はそう言った。惺が言う。
「母上、身体をいじるのに何か不都合でもあるのか?別に問題ないと思うのだが。」
それを聞いて神は苦笑しつつ言った。
「惺、自分のものを不用意に犯されたらあなたはどう思う?」
「それは・・・多分怒るな。」
惺はそう答える。神は微笑みつつ言った。
「つまりそう言うことよ。彼らもそう言う気持ちだったって事。」
「ふむ・・・学ぶことが多いのだな。」
頷きつつ惺はそう言った。ラミュアが言う。
「学ぶのは楽しい。」
それを聞いて惺がラミュアに言った。
「よし、ラミュア、一緒に学びに行こう。」
「どこに?」
「そうだな・・・。」
二人はすでに行動を起こす気で満々であった。苦笑しつつ神が言う。
「なんか、騒々しくなっちゃったわねぇ。」
「良いんじゃないか?俺は良い事だと思うが。」
志郎が答えてそう言う。神は呆れつつ言った。
「まぁそうだけどね。ただ志郎・・・」
「ん?」
「惺に負けないでよ。」
「肝に銘じておこう。」
やれやれと言った様子で志郎が答えて言った。アーレフたちは微笑ましくそれを見ていた。
雨が外では降っていた。しかし、それは次の晴れを予時しているのだ。
お互いに、貴いものを認め合う神達。彼らはアーキレストの街を旅立つ事に為る。次は何処に向かうのか。また、其処には何が待ち構えているのか。
次回「惺」。
貴方にも良い風が吹きますように。