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第一章34話 ボク7節 『カラカラ』

一章34話予告編動画

https://youtu.be/l1DzagACa7k

 ボク(ハルキ)は夢を見ていた。

 ――それは確かに存在しない記憶。


 フィルミさんと一緒に買い物した日。

 フィルミさんと雨の日、一緒に読書をした日。

 フィルミさんと魔法の訓練をした日。

 フィルミさんが風邪をひいたボクを看病してくれた日。

 フィルミさんとキスをした日。

 そんな彼女とのありえない恋愛模様――。


「……フィルミさん……」


 ボクは目の奥に熱い物を感じ、覚醒する。

 暖かい感涙が、まるで肌に爪を立てるかのように頬を伝った。

 ぼやける視界を、未だ夢心地の気分を、瞬きが消し去っていく……。


 以前と同じようにボクはグルグル巻きで救護室の上に横たわっていた。

 全身から感じる痛みは今はどうでもいい。

 ボクはxxxxさんと戦って……そして……。

 ブチリ。

 脳に強烈なノイズが走る。

 思考を遮るように、激しい頭痛と共に、無意識がそれをシャットアウトするように嘔吐感がこみ上げてくる。

 怪我と疲労によって首を動かせず、ボクは上向きのまま嘔吐してしまう。


「え゛……ッ ゲッェ……!」


 汚物が気管支に入り込み、激しくせき込む。

 く、るしぃよ……。

 ボクの肩に暖かい液体が広がって気持ちが悪い……。

 室内にボクの胃液の匂いが充満した。


「だ、れ……か……いな……ですか……?」


 声が上手く出せず、か細い空気が抜ける音がボクの喉から捻り上がった。

 う、気持ちが悪い……。


 前回のようにボクの意識が薄れていく……。

 ああ、また気絶するのか……。

 プールの上に浮かんで揺られるようにボクの意識は徐々に途切れる……。

 ――事は無かった。


 衝撃。

 突如として強烈な魔力の余波がボクを貫いた。

 骨に直接振動が叩きつけられたような、ビリリとしびれたような感覚。

 あまりの強烈な怒涛にボクはベッドの上で、反射的に飛び跳ねてしまう。


「が……ッ ぁぁぁ……ッ!?」


 ケガの痛みとささくれた魔力が沸き立ち、全身を針で刺されたかのような痛みが駆け巡る。

 瞬間的な痛みにボクは全身の筋肉をこわばらせ、激痛に涙を流す。

 身をよじる事もできない状態に、ただ浅く息を吐きながら痛みが治まるのを待つしかなかった。


「(……ッ なんで、何が。起こったんだ……? 今のは地下から……?)」


 全身から冷や汗をかきながらも、先ほどの波について考える程度には落ち着いていた。

 ボクの短い人生経験上こんなことは無かったはずだ……学園の地下……。あのネズミ博士がいた所。

 ――学園の中枢……。

 なんだかボクは嫌な予感がしてきた、これは異常事態……だよね……?


 キュイ! キュイ! キュイ! キュイ! キュイ! キュイ! キュイ! 


「(な、なんだ!? うるさい……ッ!?)」


 けたたましい警告音(サイレン)が学園中に成りび響く。

 反響が反響を呼び、耳がおかしくなりそうだ……!

 どうしたんだ? 何が、何が起こってるんだよ……!

 ボクは身をよじりながらも状況を確認したいが、痛みで身体が動かない。

 緊急事態に動くことができないという現状にボクは焦りを感じ始めた。

 どうしよう、どうしよう。どうしよう……!

 その焦りは汗となって、ボクの体を心を包帯をぐちょりと濡らしていく。


「ぐっ……うぅ……ッ」


 時間にして2、3分だろうか、ボクはいまだベッドの上で動けないでいた。

 今すぐここから立ち去らなくては……でもどこに?

 ボクはいわれもない恐怖、いまや確信しているこの後迫る何か悪い予感へなんとか対抗しようとしている。


 サイレンの音に耳がもう慣れ始めた頃、再び爆発が起こった。

 衝撃、振動。

 建物ががたがたと揺れボクは未だかつてない巨大な衝撃が学園を襲った事を感じ取る。

 天井からチリがパラパラと降ってきて埃が部屋中に舞った。


「(あががががっ……)」


 な、なんだろう? 今度は先ほどの魔力の広がりではなく何か物理的な何かが破壊された衝撃だった。

 そう例えば、学園の外壁が破壊されたかのような音だ……。

 外壁……外……機械……今の時間は?

 衝撃によって床に落ちた時計をボクは見た。


 ――今は0時だ。


 破壊音、悲鳴、怒声、再び破壊音。

 学園のあちこちから危険な音が鳴り始める。

 そして各方向から魔力の波動が感じはじめた……まさかこれは……。


 その答えにたどり着いた瞬間、ボクの体は吹き飛ばされた。

 世界が回転し、ボクはなにもできず物理法法則に乗っ取り壁にぐしゃりと叩きつけられた。

 再び全身に痛みが走り、血を吐き出す。


「ぎッ……ぁ……ぁ……ッ……!」


 グギリという音から察するにアバラや足の骨も折れてたかな……?

 ボクは何故か客観視するようにボクの体の現状を捉えていた。

 だって体動かせないし……。


 上下逆さまのまま、かすむ目で何度も瞬きするとやっと状況が見えてきた。

 壁に大穴が開いており、ベッドや医療品、ボク。

 まぁとにかくいろんなものが方々へめちゃくちゃに吹き飛ばされている。

 何が起こったんだ……?


 ガシャリ。

 聞き覚えがある駆動音が聞こえる。

 やはりそれは、想像していたそれは、あの夜の機械であった。

 冷たい目が、冷徹な殺人マシーンがボクを再び捉えていたのである。


 「(なるほど……)」


 ボクは意外にも現実を冷静に受け止められていた。

 一度同じような目にあっているからだろうか?

 おそらく地下で何かが起こり、それに乗じて学園の外壁が砕かれたのだ。

 そこから学園に機械が侵入し、おそらく外では機械たち殺戮が行われているのだろう。

 ――まるで物語のようだな……。


 ボクはボクのモラトリアム(にちじょう)が壊されたという事実を理解しながら、迫りくる死という現実をぼうと眺めていた。

 ガシャガシャガシャ。

 待ったなしで機械の脚がボクに突き立てられる。

 直前。その機械は何かの魔法によって消え去った。


「(あれ……? なんだろう攻撃魔法じゃ……ない?)」


 周囲に魔法の残滓が霧散していく……。

 助かったという事実以前にボクはその魔法の種類を分析している。

 ボクの知識外であったそれは、おそらく異能力としか判断することができない。


「大丈夫かい? ハルキ君」


 優しい声がかけられる。

 ボクは首が動かせず目線だけで声を追いかけた。

 この声は――あの優しい学食のお兄さん……。

 なんで……この人が……?


 優しく笑うお兄さんはボクを瓦礫の中から助け起こした。

 表情と同じようなやさしい魔力がボクを包み、なんだか体がこそばゆくなって、そして軽くなる。

 あれ……動けるくらいには回復した……?


「あのあの、ありがとうございます……学食のお兄さん」


 赤い瞳でボクを見つめるお兄さんは、少し笑みを深くすると


「よかったよ、危機一髪って所だったね」


「お兄さん、魔法使えたんですね……えとお名前は……」


「うん? 僕の名前はエンゲルだよ」


 エプロンにつけられたネームプレートを指さす。

 そこには学食員エンゲルと書かれていた。

 そうなんだ……お名前も知らないでごめんなさい……。


「じゃあ僕は他の子を助けてくるから、ハルキ君も逃げて」


 最後まで柔和に微笑むエンゲルさんは、最後までその優しい包容力を残したまま立ち去った。

 ボクは数秒固まり、現実感の無さをなんとか蹴り飛ばすと動き出す。


「逃げなくちゃ……」


 破壊された壁から外に出ると構内には火の手が上がり、各地で戦いが起きている。

 泣き叫ぶ声、叫び声、悲鳴、魔法の攻防、周囲ではざまざまなドラマが展開されており、ボクは目移りしながらもどうしようもなくさ迷っていた。

 どこに、何を……ボクは……わからないよ……。


 ふと、学園の天井に穴が開いているのが見えた。

 それが原因か、本来天井に映し出されているはずの偽物の夜は解除されていた。

 穴からはまるで木漏れ日のように闇が、以前学園の外でボクが見たあの一切の暗黒が差し込んでいる。


「ぁぁ……」


 穴と闇からは大量の機械が天井を伝って入り込んでいる。

 その動向は無機質な昆虫、命令のまま仕事をただ遂行する――まるでアリの大群のようである。

 ボクはそれを見て驚愕と恐怖と混乱が、心の中で渦を巻いてどうしようもなく突っ立っていた。


 そのままガシャリガシャリという音が聞こえ、いつの間にか周囲を器械に囲まれてしまう。


「ぁ……う……ぁぇ……」


 ボクは恐怖心と向き合いながらも魔法陣を形成しようとする。

 知っていた事だけどボクの魔法はダメになっており、うんともすんとも言わない。

 何も起こらず何もできず。


 ――ボクは魔法が使えない。


 はぁ……またこんなつまらない事を……何もできないんだ……。

 折角あんな魔法陣まで出してxxxxさんを……。

 ボクは再び気持ちが悪くなって、吐き出す。吐き出す。

 胃の中は空っぽで、ただ涎と少しの胃液が排出されただけだった。


 ガシャリ。

 そんなボクを理解することも無く、その機械たちは一斉にボクに――獲物に追い掛かった。

 ボクはまた死を受け入れ、目をつぶる。


「(ぁ、ぁあ……ごめんなさいエンゲルさん。ボク何もできずに死んじゃいそうです)」


 カラカラカラカラ。

 瞬間、頭の中に何か転がる音が響いた。


「カラカラ……?」


 ボクが音と疑問に目を開けた瞬間、周囲の景色が一気に変貌する。

 見たことの無い、感じたことの無い、知らない魔力の奔流――。

 足元から沸き上がった、まるで滝つぼのような激流がボクを飲み込み激しく流れていく。


「あががががががぁッ!?」


 ボクはただ圧倒されその勢いの中で何もできずに、もがく、もがく……。

 だんだんと苦しくなって、視界が薄くなって、気を失って……。

 はぁ……最近何度目だろう……? じゃあボクは気を失いますから。

 ボクは誰に言うわけでもなく、ただそう自分の中で告げると意識を失った。

読んでくれてありがとうゴブ!

ゴブリンのやる気を上げるために、よければ

【ブックマークに追加】や下の【★★★★★】で応援してくださいゴブ!

反応があると、とってもうれしーゴブ!


今日はおろしポン酢をかけた豚肉を食べたゴブ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 大変な情勢の中で、ハルキ君は未知の力を持っているのか、ある種底知れないですね。学食のお兄さんも何やら強そうで、スマートでかっこ良かったです。 [一言] 何が起こっているのか、混沌とした状況…
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