第一章28話 オレ5節 『分かっているのか?』
一章28話予告編動画
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そして投票日がやってきた。
当然にオレ達にも投票権はあるため、首輪を外され一時的に謹慎が解かれる。
「んん~つかの間の開放って感じ?」
キリエは伸びをしながら、自由を満喫していた。
性格上、自身が罪人扱いされるというのはキリエとしても堪えたのだろう。
投票の為の一時釈放である為、オレ達には生徒会員の同伴が付いた。
やれやれ、今日は何もしないというのに。
その足でオレ達は投票会場に向かう。
道中は、誰に投票するかの話でそこかしこ持ち切りであった。
やはりルゥガかコガミか、そこで二分されているような印象だ。
今後の学生生活に大きく寄与する選択に、皆々が湧きたっているのが分かった。
「みんな盛り上がってるわね……」
「今期の選挙は中々面白い状況だからな、浮かれるのも無理はない」
自主的なものなのか命令されているのか、投票会場入り口ではコガミに投票すべしというような集団がデモを行っている。
オレ達はその刺すような視線の歓迎を受けながら、会場に入っていった。
「何よ……私たちに威嚇したって票は変えないんだから」
ぷりぷりキリエをなだめ、俺たちは列に並ぶ。
投票先は勿論ルゥガだ。
魔力を投票紙に込めた後、ジンクの確かな一票を投票箱に入れた。
「さて、これでやることはやったな……」
寮に帰ると、キリエは名残惜しむように首輪をつけられられている。
溜息をつきながら背中を丸める彼女は、この後の軟禁生活にげんなりしているようだった。
あとは開票を待つだけ――。
なのだが、オレ達にはまだまだやることが残されている。
ルゥガの進級試験対策と投票への工作だ。
「(……オレに必要な物、それは覚悟だな)」
それから通日が経過した。
時刻は11時を回ったところ。本日進級試験が行われるのであった。
ルゥガ陣営の三人は各々自分の仕事を全うすべく動き始める。
………
……
…
――ルゥガ視点。
「ざっけンな!」
俺は怒りを露にして壁を蹴りつけた。
進級試験当日だというのに、俺は生徒会の罠にかかっていたのだ。
当日になって、適当な罪をおっかぶされ、検査という名目で魔力を奪われている。
「まぁこれはあなたの為でもありますから気持ちはわかりますがこれで罪が晴れるとなれば安い物でしょう」
おなじみ早口野郎が俺をなだめていた。まったくうるせぇよ。
こっちは今日で生き死にが決るんだぞ。それを魔力を5割徴収とは舐めてンのか?
「まじてめぇぶっ殺すぞ……」
俺は怒りにまかせて生徒会員の胸ぐらをつかむ。
線の細いそいつは怯んだ様に小さく悲鳴を上げながらも、声を震わせ反論してきた。
「あなたが本日進級試験だという事は了解しています非常に残念な事ですしかしこれも必要なことなのです私に暴力を振るったとしても何も変わりませんよ」
「死に腐れ……っ!」
奴を勢いよく突き飛ばすと、俺は試験会場に向かって怒りに任せながら肩を揺らして歩き出す。
とても機嫌が悪そうに見えるよう乱雑に手続きを済ませ、そのままドアを叩きつけるように試験待機室に入室したのだった。
「(……なんてな。このくらいそーてー済みだっちゅーの)」
勿論全て演技である……ちょっと本当だけど。
俺は待機室で密かに用意しておいた、魔力回復用のポーションを飲み干し回復した。
これで精々俺を舐めてかかってくれるといいが……。
………
……
…
――キリエ視点。
ガチャリ。
魔力によって鍵が外され、数日ぶりに私の首輪が外された。
生徒会役員を私は睨みつける。
「(まったく毎日毎日、最低の気分だったわ……)」
私は自分の役割、進級試験の監視役として会場入りするために風紀委員の腕章をつけると、早速会場へと向かった。
そこに当然のように邪魔者が――そいつが現れた。
「まぁこうなるよな」
もう見慣れた顔。三度、あのキルト先輩であった。
そしてその仲間達である。
いつものように徒党を組み、私に立ち塞がったのだ。
二回目となる今回は、ジンの阻害魔法は用意していなかった。
「はぁ……あなたたち懲りないですね。このまま生徒会に尽くしてもいずれは使い潰されますよ?」
相手の三下ムーブに、私は思わず呆れてしまう。
しかし意外にも相手の反応は冷静だった。
「あれは俺がミスったからだ……正直俺らも追い込まれちまってる。今日は、ガチだぜ……?」
いつもと雰囲気が違う、言葉ぶりからも最初から本気のようだ。
その体には魔力を充実させ、一触即発戦闘モードであることは一目瞭然であった。
確かルーカス会長の言では、この男は一度退学扱いになっていたはず。
なるほど、飴と鞭ね……。
まったく人を必死にさせるのがお上手。
「女一人を袋にするのは趣味じゃねーが、やらせてもらうぜ……!」
その言葉とともに油断なく、攻撃が開始された。
………
……
…
――ジンク視点。
豪華な生徒会室の窓から、後ろに手を組んだルーカスが構内を見ている。
彼が何を考えているかはわからない、何時もの強面な無表情で何かを思案していた。
その後ろで、ドアがぎぃと音をたてゆっくりと開かれていく。
「ほう、やはりここまできたか。一人かね?」
「そうですね……今日は一人です」
ルーカスは振り返ることなく、入室したオレを認知したようだ。
何かの能力か……?
「謹慎破り、そして選挙への工作……。貴様はこれで退学確定だな?」
奴はやっと振り返り、少し顔を緩ませながらオレへの死刑宣告をした。
「寮を出た以外はまだ何もしていませんよ」
ルーカスはジンクの意外な行動に、内心驚いていた。
本来ジンクがここに来なければ、キリエとジンクを進級試験でぶつけ、潰しあいをさせる手はずだったのだが……
それを見れないというのは残念な事だ。
まあいい、手間が省けたというもの……。
「ふん、私が報告すれば同じことだ。ここまで来た褒美に良いことを教えてやろう……コガミとルゥガの投票差は1票差でお前らの勝ちだった。すさまじいな誉めてやろう」
――学園某所、ハルキがくしゃみをした。
意外にも饒舌に結果を教えるルーカスだったが、当然にその後の言葉が続く。
勝ち誇った顔で、生徒会長は威圧するようにオレに言い放った。
「だが今は、5票差で我々の勝ちだ」
ルーカスが投票箱を撫でる。
「(……なるほど、本来勝っていたというのは朗報だな。結果はともかく今までの努力の甲斐があったものだ)」
自分でもこの感情は意外であった、ここまでの過程その物を、努力その物を評価したのである。
結果が全てのこの世の中で、そういった価値観を自身が持っていた事に少し戸惑う。
……確実にオレも変わってしまったな、これはいい事なのか、あるいは……
「貴様……何を考えている?」
オレが自己分析をしていると、その様子を訝しんだのかルーカスが声をかけてくる。
いかんな、まずは目の前の仕事をこなす事が肝要だ。
オレは改めて会長を見据えた。
「まったく。オレの素行をなじっておいて、その舌の根が乾かないうちに会長が不正発言ですか?」
ルゥガの真似をして相手を煽りながら、オレはルーカスの注目を引いた。
「……人聞きの悪い。私は投票先の間違いを確認して、相手が認めただけだ。これでも私はお前のことを高く評価しているのだよジンク君。せめての手向けの言葉を君に渡したかったのだ」
「手向け……ね……」
オレは自分の指先に、魔力制御に集中していった。
神経が研ぎ澄まされていく……。
「貴様はこの後退学になるんだぞ、分かっているのか?」
相手が話半分なのを察したのか、ルーカスは訝しみながらオレを伺う。
その反応を見てオレは不敵に笑った。
「お前こそ分かっているのか?」
少年の鼻血が静かに滴った。
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