第一章26話 ボク5節 『甘い果実』
一章26話予告編動画
https://youtu.be/KuIBFyP08FA
ハルキが再びフィルミに裏切られそうになっている事を知り、絶望をしていた頃。
空き教室内では、ベリルベッゾがその事を密かに認知していた。
その内面とは打って変わり、表面上二人は熱く深い淫靡な接吻を交わしている。
涎が絡み合い、舌を伝ってそれが怪しく糸を引く。
「(おもしれーことになってるから放置してみたけど、なんだハルキの野郎デバガメで終わりなのだ? やっぱりつまんねーやつなのだな)」
ベリルベッゾはフィルミから接吻による魔力供給を受けながらも、内心では冷静そして毒舌に生徒をディスていた。
人から人への魔力供給は、極端な緊急性がある状況を除いて特に必要もなく一般性もない人工呼吸のようなものだが、ベリルベッゾは優秀な生徒からそれを受けることによって一種の娯楽としていた。
有望な生徒、若々しくパトス溢れるそれを受け取る事により自身が若返るような、相手の力を自らの物にできるような感覚。
なによりも、気持ちがいいのである。
――これがこれこそが、ベリルベッゾの愉悦であった。
「んちゅぱっ……どうですか先生?」
フィルミが上気した頬で具合を尋ねる。
彼女としては自身の進学がかかった応対だ、ここで手を抜いたりミスをするつもりはないのだろう。
そんな一心不乱な彼女にベリルベッゾはとても満足していた。
心が潤っていくのを感じる。
「んっはー……フィルミ、魔力供給が随分と上手くなったのだ」
フィルミは生徒としては優秀な部類ではない、魔力も凡俗でありこの学園では履いて捨てるレベルだ。
しかし彼女は結果の為になりふり構わずに、迷わず手を染める所がある。
ベリルベッゾはその彼女の貪欲さ、一種の生き汚さを特に気に入っていのだった。
そして特筆すべきなのは、彼女の政治力である。
友好関係は隙がなく、一年の中ではトップレベルの政治力持つといってもいいだろう。
フィルミを知らない生徒はいないだろうし、逆もまた然りである。
主要なコミュニティにはほとんど全て参加しており、他人に対する影響力が個人の範囲を超えて大きい。
彼女はそのルックスと、類まれなコミュニケーション能力によって他者へと取り入っていた。
学園というコミュニティ、社会の中では間違いなく強者である。
「ではもうちょっと愉しませてもらうのだ」
ベリルベッゾがフィルミの耳の穴に舌を入れると、フィルミが嬌声を上げた。
彼女がハルキを使い切ろうとしているという事実は知っている。
可哀そうだが正直ハルキは進級できないだろう、ベリルベッゾは教員という立場上、今まで何人もの生徒を見送ってきた。
ポテンシャルはこの学園に所属している時点で確約されているが、それでも芽が出ない生徒もいる。
学生生活の中でそれを出し切れないというのは、現実に対応できないということだ。
誰もがチャンスに恵まれるわけでもない。例えいつか花咲くとしても、そのいつかというのは常に誰かに定められている。
結果社会的弱者であるハルキが他者に食い物にされるのは仕方のないことだ。
それは誰でもない、ハルキ自身のせいなのである。
「ちょ、先生そこは……!」
フィルミが、ヘソまで伝っていくベリルベッゾの舌にくすぐったそうに身をよじった。
「ひーからひーから、このまま舐めさせるのだ。進級試験楽したいのだろ?」
フィルミは担任のその行動を、受け入れるしかなかった……。
強い屈辱を感じる。
いいえ、これれも全ては最後にわたしが立っているための布石。
――そうだ。
わたしはあの日生まれ変わったのだ……!
………
……
…
わたしの最初の記憶はなんだったか……もう思い出せないけど。
だけど一番最初の感情は知っている。
――わたしは強いという事だ。
学園に入学した当初、散発的にコミュニティが形成されていった時期。
その中でわたしは他人に取り入るのが得意だった。相手の感情や表情を読み取り、相手のかけてほしい言葉が手を取るように分かったんだ。
おそらく、そういう他人を見る能力が他者より優れていたんだと思う。
加えて容姿にも自信があったし、男女問わずにとにかく人気があった。
わたしが率先して相手を助けると、それを返すように相手も応じてくれる。
この時のわたしは、全ての人間と友達になれると本気で信じていたのだ。
正直酔っていたと思う。愚かな小娘だったと思う。
でも仕方のない事だった、わたしが少し背中を押せばその相手は思い通りに動いたし。
それをドミノ倒しのように使って、学園内の人間関係をコントロールしていった。
この世の全てはわたしの思い通りだと思っていたんだ。本当に馬鹿だよね。
――あの時までは。
はじめは少しの違和感だった。
約束していたグループ課題を一人でやる羽目になったとき。
示し合わせていたのに、それとは違う事を友達がやったとき。
仲のいい男子生徒がわたしの知らないわたしの話をしたとき。
貸したお金が返ってこなかったとき。
一番の親友だと思っていた相手が、全てを仕組んでいたとわかったとき。
……そうだそうなのだ。
この学園は弱肉強食。
油断をすれば足元をすくわれる。
全員と友人になって全て私の思い通りにしようなどという、甘い幻想を抱いていたわたしはきっと……。
――とても甘い果実に見えたのだろう。
それがやっと分かった。
分からされてしまったのだ。
その日以来わたしは誓った。甘えを捨て生まれ変わったんだ。
必要な事はすべてやったし、そのために血を流すことも厭わない。
この学園の頂点、生徒会にわたしは所属すると決めたんだよ。
そして全てを、実力で支配して見せる……!
その為には、わたしはわたしの全てを使い切ってやるんだ。
まずはあのハルキとかいう劣等生だ。
彼がわたしを好きだという事は明らかだった。
あの態度、あの目。何度も、何度も、何度も同じものを見てきた。
どこにでもいる路傍の石ころ。
わたしは彼が大嫌いだった。
ペットみたいにまとわりついてきて、気持ちが悪い。
何もできないくせにきょろきょろして、他人の顔色を窺ってばかり。
自分に対するプライドゼロのどうしようもない、ろくでもない奴。
毎回嬉しそうにお金を持ってきて、利用されているのに本当に気が付いてないのかな?
結局一人でアーティファクトの代金を稼いでしまった。
それもまた気に食わない、何をやり遂げているのあの子は……!
まぁ、おかげで生徒会入りは確定したんだけどね……。
彼を扉から突き落としたときは、最高に気持ちがよかった。
まるで付き物が晴れたような感覚。
あの感覚は快感の一言だったよ……。
だけどその付き物は何故か生き残り、復学してきたのだ。
許せない。許せない。許せない。
――許せないよ。
君はわたしに使い切られたはずだよ。
そうまでして戻ってきたんだったら、最後までわたしの役に立ってもらうからね。
そうやってわたしは、彼に対する殺意を再び手に取った。
読んでくれてありがとうゴブ!
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反応があると、とってもうれしーゴブ!
今日は牛肉のなんかよくわかないやつ食べたゴブ!




