第一章24話 ボク5節 『親の顔が見たい』
一章24話予告編動画
https://youtu.be/Kh9ZWdFGPog
ボクは全身の痛みによって覚醒する。
「い、痛いよ……」
目覚めると学園の救護室にボクは横たわっていた。
全身に包帯が巻かれ、まるでミイラ男のようだ。
そうだあの後、ボクは気絶して……。
頭がぼぉっとして要領を得ない。
腕を上げようとしたが、まるで力が入らないぞ。
ボクはボクの体と数秒格闘した後、無為を悟った。
時折走る、神経の痛みのような痛覚から察するにボクの体はどうやら大変な状態になっているらしい……。
「(そうだあの時……)」
ボクはモアちんさんとネズミ博士とのやり取りを思い出す。
よくあれで生きていられたよ、過負荷を超える過負荷。
そしてあの魔法陣はなんだったのだろうか……。
結局不発だったし……でも、とてつもない物がボクの中から出てきたんだ。
「(はぁ……あれはすごかったなぁ……)」
今思い出しても震える、あんなすごいものを見たのは人生で初めてだった。
それをボクが……。
落第生なボクが出したという実感がまるで湧いてこない、夢の中のような出来事に思えてきちゃう。
「(確かモアちんさんは手伝ったって言ってたな……そして一人でできるようになってって……)」
何故か彼女はボクの事を買ってくれているらしい。
初めて会ったバイトの時に、至近距離で見つめられたことを思い出す。
もしかしてボクって実はすごいのかも……
そんな事をぼんやり考えながらボクは再び気絶するように眠りに落ちた。
数日後、驚いたことにボクは再び学園に復学していた。
生徒会には固い口封じを言い渡され、なんと通常の学園生活を許されたのである。
「本当に復学できたんだ……」
人生の終着点まで行きついたと思っていたボクは、その先があったことに実感がわかない。
最近の出来事があまりにも目まぐるしく、この日常こそが異常なのではないかというよくわからない感覚に陥っていた。
あれからバイトもなんだかんだ続けている。
以前悪魔先輩に言われたように、ボクは確かに格段に作業スピードが向上していた。
しかも、終わった後にあまり疲れていないのだ!
以前は終日までかかっていた作業が、いまや職場内でも1、2番目に早く終える事ができている。
「んへーまじで早くなったなぁ、お前」
お褒めの言葉を頂き、ボクはウキウキしてしまう。
普通以上にこなせているいるという事実が嬉しくて、ボクはちょっぴりこの仕事が好きになっていたんだと思う。
なんだか自分のできることが増えてみたいで、それは自信と自己肯定に繋がったのだ。
実際作業ではもうほとんど怒られることはない。
出入りが激しいこの職場で、ボクはやっていけてるんだ!
一方ボクを貶めた彼女――フィルミさんは完全にボクを無視している。
表面上は以前の状態だが、いわゆる学級の友人というような範囲から出ずに必要な際に最低限のやり取りをするといった感じだ。
ボクは彼女のフラットな態度にどうしていいか分からずに、現状維持に甘んじていた。
「(ボクはフィルミさんに利用され大変な目に、いや殺されそうになったんだぞ……!)」
怒りや疑念は感じつつも、どうしても一歩踏み出せないでいた。
この感情は偽物なのか、ボクの意思が弱いだけなのだろうか……。
ぐるぐると頭の中で言葉や感情が交じり合い、結局ボクは何もできていない。
はぁ……ボクってあんなすごい経験をしても何も変わらないんだな……。
本当の自分に早くなりたいよ。
手持無沙汰になったボクは、日々の空いた時間に魔法の訓練を開始することに決めた。
せっかく生き残ったのに、進級できなければ元も子もないよ。
ボクは生徒魔法練習用の防護部屋に向かった。
ここは白い対魔法コーティングがされた10メートル四方の特注ルームである。
生徒は皆この部屋で、日々魔法の腕を磨いているのだ。
落第生のボクは優先時間には入れず、なんとか合間や遅い時間、早い時間を使うしかなかった。
もう慣れたけどね。
まずボクが始めに試したこと、それは勿論――。
あの強大な魔法陣をもう一度出せるのか?
顔を真っ赤にして踏ん張って、なんとかかんとか挑戦してみたが……
やはりボクの出力は変わっておらず、いつものサイズしか出すことはできない。
「はぁ……やっぱり一場春夢って感じだよぉ……」
ボクは予想できた現実に落胆するが、その慣れない覚えたての四字熟語を使った違和感の方を大きく感じてた。
なんだかなぁ……ボクらしいと言えばそうなんだろうけど……。
気を取り直して基礎訓練に励むボクだが、徐々に集中力が途切れていく。
体を雑に動かしながらも色んなことを考えてしまう。
はぁ、フィルミさんはなんであんな事をしたんだろう、そしてあの学園の外の機械はなんだったんだろう。
とっても怖かったなぁ……。
「ぁ」
ボクはすっかり忘れていた事実に思い至る。
そうだあんまりにも色々なことがありすぎて、大事なことを忘れていた。
あの時、ボク障壁魔法使った……?
確かにボクはあの機械の攻撃を障壁魔法を使って防いでいた。
無詠唱故にすぐ破られてしまったが、もしかして……
ゴクリ。
ボクは生唾を飲み込みゆっくり腕を構える。
何万回も練習した魔法陣を展開させ詠唱を開始した。
『わ、我を守れ。』
『魔力の盾よ。』
その瞬間ボクの魔力が形どり、指向を持ち始めた。
それはつまり――。
「ぁぁっ……! やった。やったよ! ボク魔法が使えたんだ……!」
ボクの涙腺はついに崩壊した。
入学以来一度もできなかった魔法、それがついに実を結んだんだ……!
ぁぁぁっ! 嬉しい……こんなにも嬉しい……!
ボクは感涙を流しながらその真実に浸る。
『最初に比べて弾作りできるようになってんじゃん』
悪魔先輩の言葉を思い出す。
もしかして、あの辛いバイトをやってたから上達した……のかも?
というかそうだ、今までボクは出力の訓練しかやってこなかった。
より具体的な制御と向き合う事によって、ボクの魔法力は昇華したんだ。
「うぉっ……! やったよぉ……」
ボクはボクの努力で手に入れたその現実に。
今までにない、薄っぺらじゃない、本当の自分に近づけた気がして、その事実に改めて感動した。
よし、よぉおおし!! 頑張るぞ!!
ボクは途轍もない気合を入れて、何度も障壁魔法を構築するのだった。
そして夜の時間は、なつかしお馴染み。
――読書タイムだ。
ボクは例の倉庫に向かうと、おもむろに掌をすり合わせその宝の山に垂涎した。
ついに小説の、フィクションの、ファンタジー世界の安寧が返ってきた。
やっぱり読書は楽しいなぁ。
ボクは久々の娯楽に大満足である。
夢中で読み進めていると、文章の中にふと気になる一文があった。
『親の顔が見たい』
???
親ってなんだろう。
ボクは知らない単語を見つけ、倉庫にあった辞書を引っ張り出す。
ナニナニ――子を産んだ父親と母親の総称?
母、父、子? ってなんだろ……
調べたことを要約すると、男性と女性が一緒になりどうにかすると子供が生まれる。
その子供の面倒を見ている状態が親という事になるらしい。
親は子供を育てるか……
そういえばボクって親いるのかな?
今更ながら、幼少期の記憶がないという事にボクは気が付く。
たしか最初の一番古い記憶は……学園に入学した所からだった……。
あれ? おかしいよねコレ……。
なんでそんなこと今の今まで忘れていたんだろう。
ボクは疑問に頭をひねるが、どうやってもその先は思い出すことができなかった。
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今日はから揚げ食べたゴブ!




