番外編「お仕置き」
6話の後日談です。
あの後のことを書いてみました。
夕陽が熱を出して、二日後。
生徒会室に向かってみると、中に、元気な姿をした夕陽がいた。
「お邪魔します」
まだ生徒会室に入ることに慣れてない私は、ぎこちなく挨拶をした。
「あ」
夕陽と目が合う。
熱を出す前は、あのことでお説教とかされるところだったので、何となく気まずい。
「麻友」
歩を進める夕陽。
そして、私の前へと来た。
「え、えっと、熱下がったんだね。よかった」
「ええ、おかげさまで。これも、看病してくれた両親のおかげね」
とても感謝してるようだ。
「とりあえず、治ってよかったよ。これで一緒に生徒会ができるね」
「――そうね、そう」
夕陽は何かを思い出したかのように、嬉しそうな、待ってましたというような表情で目をつぶった。
そして、目を開き、私に言う。
「これからお仕置きができるわね」
やっぱり思い出したかと、私は少し後ずさりをした。
「ええと、まだ前のこと根に持ってる?」
おそるおそる、聞いてみた。
「ええ、お仕置きをしないと、気が済まないわ」
本当に何かしないと、夕陽は許してもらえないようだ。
私は痛いのは嫌なので、するなら、簡単なものならと思っていた。
「分かった。するから、痛いのは止めて」
「どうしようかしら」
お願いだから、悩まないでと強く思った。
「お願い、簡単なもので」
すると、私の願いが届いたのか、夕陽はニヤリと笑み答えた。
「分かったわ、なら、私にこう言って指に口づけをしなさい」
それなら簡単で、痛くないと心の中で舞い上がった。
「うん、それで何て言えばいいの?」
「そうね、『夕陽様の下僕です、世界で一番美しいのはあなた』と」
下僕という言葉が出てきて、戸惑った。
でも、これを言って、手に口づけをしないと許してもらえない。
「あの、下僕ってこれからもずっとって意味じゃないよね?」
「ええ、もちろんよ」
それなら、と思い、安心した。
もし、ずっと下僕という関係なら、私は耐えられない。
「分かった、じゃあ、するね」
本当は下僕という言葉を言うのは嫌だが、これも、許してもらうため仕方がなかった。
今、生徒会室には二人きりだ。
『夕陽様の下僕です、世界で一番美しいのはあなた』
私は夕陽の前でしゃがみ込んで、そういった。
そして、手に口づけをした。
少し顔を上げる。
「ふふ、お利口ね。なんて可愛いのかしら」
これは心の底から喜んでるなと感じた。
お仕置きも終わったので、私は立ち上がると、生徒会室の扉が開いた。
すると、会長とはと、そして、優芽がいた。
「ごめんなさい、見てしまったわ」
「まさか、麻友ちゃんにこんな趣味があったなんて」
「夕陽――」
会長、はと、優芽と私たちのことを見つめていた。
「ち、違うんです、これは誤解で」
「分かってるわ、内緒にしておくわね」
一番誤解してるのは会長のようだ。
「違うんですよ、会長」
その後、会長だけ、嬉しそうにニコニコとして過ごしたのであった。
一方、麻友は、どうやって誤解を解こうか悩むのだった。