第74話「すすり泣き声」
どかどかと足を鳴らしながら歩く音は麻友たちの部屋にも響いてた。
今は夜中の3時、誰もが寝てるところを夕陽と優芽はその音に目が覚め徐々に意識を起こしていった。
だが、この部屋に来ないだろうと思い、2人とも寝返りを打ってまた寝ようとする。
その束の間、足音は急に静かになりこれで寝れると思った2人はキィーという音が聞こえそっちの方向に意識を向けた。
すると、夕陽の枕元に誰かが暗闇の中、立っていた。
不審者かと思い夕陽は横になってた身体を起こした。
「誰!?」
「シーッ」
その人物は人差し指を自分の口に当て夕陽を静かにさせようとした。
夕陽はその声でお姉さんだと実感する。
「ちょっと、あなたねぇ」
夕陽と歌津はすごく小さい声で会話をする。
「黙って、外へ行きましょ」
「今何時だと思っているの、いくらお姉さんでも夜中に未成年を連れ出しちゃダメなことは知ってるはずよ」
「今は誰も見てないから未成年でも大丈夫よ」
「そういう問題じゃなくて法律的に」
「私は見てるけど」
2人とも自分の声じゃないと思い声のしたほうへと目線を向けた。
そこには優芽が横になって自分たちのほうを見上げていた。
「優芽、起こしちゃったわね」
「廊下で足音が聞こえていた時から目が覚めてたよ」
「ごめんなさい、あなたの恋人まで起こしちゃってたわね」
歌津は謝ると、夕陽は気を取り直してお姉さんと向き合う。
「謝る気持ちがあるならこの場から出て行くことを優先してほしいのだけれど」
「今の気持ちじゃ出て行くことはできない」
「どうしてよ」
「恋人と揉めちゃったのよ、さっき部屋から出てきたところ」
「その事と私とどういう関係があるわけ?」
「冷たいわね」
「冷たくしないとお姉さんは諦めかけてくれないでしょ」
既に小声で会話出来ないことに2人とも普通に会話してると麻友までもが目を覚ました。
「…夕陽?誰と会話してるの」
眠そうに麻友は横になりながら目をこする。
「ほら、私たちの監視員が起きちゃったわよ」
そう夕陽がいうと麻友は上半身を起こした。
「お姉さん、この時間に何でまた」
「ちょっとしたトラブルよ」
歌津は申し訳なさそうにしゅんと静まった。
「とにかくこのままじゃ全員起きちゃうわ、私と無関係なら早く部屋から出て行って」
夕陽は言葉に強く気持ちを込めると歌津は諦めかけようとした。
その時、夕陽の唇に温かいものを感じた。
それがキスなんだと分かると夕陽は驚いて歌津を振り払った。
「何てことするのよ!!」
「ちょっとした出来心」
「夕陽……」
優芽は不安そうな目で夕陽を見ていた。
同じく夕陽も目の前の歌津ではなく優芽を見た。
「これはちょっとした事故よ。だから深く考え込まないで」
優芽と同じ位置で会話するため夕陽はしゃがみ込んだ。
「事故なのは分かってるよ、気にしてない気にしてない」
言葉の通り気にしてない表情を見せたが優芽は布団から起きた。
少し涙目を浮かびながらうつむく。
「思いっきり気にしてるじゃない。いい?私は優芽一筋、それだけは忘れないで」
「…うん」
優芽を安心させたがそれでもまだ涙目を浮かべていた。
歌津はいけないことをしてしまったと思い夕陽に謝る。
「ごめんなさい、傷つけるつもりじゃなかったのよ」
涙目から少しずつ頬に涙が流れると夕陽は優芽を抱きしめた。
「傷つけるつもりじゃなかったらキスなんてしないでしょ」
「それは…」
夕陽は歌津に背中を向けその後黙った。
部屋の中では優芽のすすり声だけが聞こえる。
夕陽に背中を向けられた歌津はもう終わったんだと思い後ずさりした。
「ごめんなさい」
そう呟くと歌津は夕陽たちの部屋を出て行った。
107号室のドア前では優芽のすすり泣く声だけが僅かに響いていたのであった。
歌津と夕陽がキスをしてそれを見た優芽が部屋を出て行くシーンを書きたかったのですがその通りに書けなかったです。
ただ優芽が思い悩む雰囲気になれたのでその後の展開は大体想像付いてます。
次こそそのイメージ通りに書くんだ!!頑張れ自分。
ということで、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
それでは。