第69話「ライバルという確信」
地下2階にエレベーターを使って到着すると男性が周りのお客に呼び掛けしていた。
「こちら当ホテル自慢のお化け屋敷です。1度入ったら出ることは出来ません。怪我や事故を起こさないように2人1組で入ってください」
お化け屋敷と呼ばれるドアの前に数人のお客さんがざわついて並んでいた。
そこに麻友たち3人は列に並ぶ。
2人1組と言われてるため、林檎はスタッフの男性に声をかけた。
「すみません、3人1組でも入って大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ、ただし1度入ったら入口から出られないので注意してください」
「分かりました」
男性スタッフに確認できると林檎は元いた列に並び怖がってる麻友に話しかけた。
「このくらいどうってことないわ、麻友しっかりしなさい」
「もう帰りたい」
「林檎さん、麻友もかなり怖がってるし安全のためにここは止めておいたほうがいいんじゃないかしら」
「それじゃ夕陽に押されてここまで来た意味がないじゃない」
「でも1度入ったら出られないってスタッフさんも言ってるし、ここは仲良くなってからって考えも」
「仲良くってまるで私たちが仲良くないみたいじゃない」
「お願いだから喧嘩しないで」
麻友は会長と林檎の喧嘩を止めようとした。
「喧嘩じゃないのよ、ただ意見が合わないだけで」
会長はそう言うと少し落ち込んだ。
そこに並んでいた列がどんどん進み麻友たちの番になった。
「それで、入るの入らないの?」
威圧的な林檎の声の後にお化け屋敷のドアが開いた。
男性スタッフは早くお進みくださいと声をかける。
そこに麻友はドンっと林檎と会長の背中を押し2人をお化け屋敷の中に入れた。
急だったので二人は驚くと後ろを振り返った。
「ちょっと!」
「これは私からの宿題!!仲良くなるまで戻ってきちゃダメだからね」
そういうと麻友はお化け屋敷のドアを閉めた。
2人残された林檎と会長は少し明るくそして少し暗い部屋でお互いを見つめた。
「麻友怒ってたわね」
「そうね」
「このままここにいても戻れないし出口を目指しましょう」
そう会長が提案すると林檎は頷き歩き出した。
続けて会長も歩き出す。
周囲はやや暗いという感じでそこまで視界が閉ざされることはなかった。
脅かし要素のためか、お化け屋敷内ではたくさんの女性の叫びBGMが聞こえていた。
「ねぇ、どうしてそんなに私たちについて突っかかってきたの?」
曲がり角を矢印の方向に向けて曲がると会長は林檎に聞いた。
「どうしてかしらね、ただ、上手くいってない姿を見て感情が込み上げてきたのよ」
「時々思うのよ、麻友と離れたほうが幸せなんじゃないかって」
「会長はおバカさんね、そんなこと麻友は望んでないわよ」
「でも、私は来年卒業してしまう、そしたら離ればなれになるのよ」
「一緒の家で暮らしてるんでしょ?いい?私はあなたに自分の思いを託した。麻友と別れるってこと言い出したら許さないわよ」
「もしかして林檎さんはまだ麻友のこと好きなの?」
「好きに決まってるでしょ、あれほど良い子なんて世界中探しても見つからないもの」
そう林檎が言うと第一の脅し区域に入った。
中央には作り物と思われる井戸が置いてありその中から少しずつ髪の長い女性が出てきた。
それを見て、会長と林檎は悲鳴を上げるかと思ったが二人は無言でその区域を通り過ぎた。
「今のあまり怖くなかったわね」
林檎は続けて歩き広い廊下へと出た。
「怖い物と言えば私にはあるわ」
「何?」
「林檎さんに嫌われること、あなたみたいなライバルはどこを探してもいないもの」
「それじゃ私に嫌われないように麻友のこと愛し続けるのね」
「善処します」
歩き止まりお互いの顔を見て林檎と会長は微笑んだ。
2人ともお化け屋敷を楽しむというよりお互いの気持ちをしっかり伝え合うことに集中した。
そのおかげか林檎も会長も前より強い絆で結ばれお互いのことを確信した。
ライバルという友達に。
お化け屋敷というより会長と林檎の気持ちを伝え合うお話になってしまいました、すみません。
でも、実際私はホテルのお化け屋敷を制覇することできなかったんですよね。
入口に入り長い階段を下りてそこで怖くなって入口から戻ってしまいホテルのスタッフさんにきつく注意されてしまったんです。
今となっては何してたんだろうなーと自分を振り返ってみたり笑
まあ、そんな感じで少しでもお話を楽しんでいただけたら嬉しいです。
それでは。