第7話「純光女学院」
その日、たくさんの生徒が生徒会の人たちを囲んでいた。
もちろん、私も囲まれてる事態となっており。
「きゃー、美沙様」
「こっち向いて、夕陽様」
どうしてこんなことになってるのか、それは、少し前にさかのぼる。
私はいつもと同じよう、夕陽たちと一緒に生徒会室に向かっていた。
すると、生徒会室の扉の前に、会長とはとがいたのだ。
「あ、ちょうどよかったわ。今、これから、あなたたちを迎えに行こうとしてたの」
落ち着いた感じで、そう会長は言った。
「私たちをですか?」
「ええ、これから、純光女学院に向かおうとしてたの。あちらの生徒会の人たちに用事があって、ついでに、あなたも紹介しないとと思って」
純光女学院、高持女子高とライバル校みたいな関係だ。
特に、純光の生徒会長は、とても怖いという噂だが本当かどうかは分からない。
それを確かめることも兼ねて、行くには、問題なかった。
「なるほど、でも、全員で行かないといけないことなんですか?」
質問をした。
ただ、用件を済ませて、私の紹介をするのであれば会長と私だけでいいはず。
それなのに、全員で行くつもりみたいだ。
「ええ、今日は特別よ。はともあちらの役員に話があるみたいで、それに、夕陽も優芽もまだ挨拶したことないから」
「え、そうなの? 私より先に生徒会に入ってたのに」
「ちょっと忙しくて、行く暇がなかったのよ」
優芽の変わりに夕陽が答えた。
「だから、今日はみんなで行くのは特別。何だか、ピクニックに行くみたいで楽しいわね」
手を合わせて、楽しそうに会長は言った。
だんだんと私の中の会長のイメージが崩れかけていた。
そして、今、私たちは高持女子高の校門の所にいて、部活帰りの生徒に囲まれていたのであった。
「はと様ー、握手を」
「ちょ、ちょっと、そんなに押さないで」
私は必死に逃れようとした。
だが、ファンの子たちは大勢で押してるため、力が強い。
すると、夕陽が強く言った。
「あなたたち、会長のファンならば、道を開けるべきだと思うわ」
あまりの夕陽の怖さに、ファンの子たちは、ためらった。
「ごめんなさい、これから用事があるの。また今度にしましょう」
その後、会長の微笑みで、ファンの子たちはいつもの明るさに戻り。
「はい、すみませんでした。また今度」
素早く道を開け、その場を離れて行った。
これが夕陽と会長の必殺技かと、改めて、すごいと思った。
怖くし、それから、優しくする。
まるで、二人はいいパートナーのようだ。
「何とか退いてくれてよかったわ。さぁ、行きましょう」
「はい」
私たちは目的の純光女学院へと向かった。
高持女子高から歩いて、三十分のところにある。
できたら、バスとか乗り物があれば便利なのだが、そういった物はなく。
自転車があればいいなと思ったが、あいにく、女子高は乙女たちなので乗ってこないのだ。
通学は徒歩、それか、バスや親の車に乗って通学してくる。
「着いたわ」
会長の一声で、私は驚いた。
高持女子高とは違い、大きい校舎で、美しいのだ。
「うわー、大きい」
「麻友、こっちよ」
「あ、はい」
一人で校舎を見上げてると、会長に呼ばれ、みんなの所に集まった。
そして、職員や来賓が使う玄関を利用し、校舎の中へと入る。
今は放課後なので、生徒は少ない。
コンコンとノックをし、挨拶する。
「入りなさい」
部屋の中から、冷たいような声が聞こえた。
「失礼します」
「し、失礼します」
会長に続いて、私たちは入った。
純光女学院の生徒会室はとても綺麗で、どれも、お金がかかってそうなものばかり置いてあった。
そして、豪華な会長らしい机に座ってるのは、会長と同じロングの黒髪で、とても冷たそうな人だった。
「それで何の用かしら? もしかして、偵察に来たとか。ふっ、残念ね、今はあなたたちに教えることはないわ」
「ごめんなさい、急に来てしまって。実は、新しく入った役員と、前から渡そうと思ってた資料を持ってきたのよ」
「役員? もしかして、その隣にいる子たちがそう?」
冷たい会長は、私たちを見た。
一瞬、目が合い、私は寒気がした。
「ええ、あなたに紹介した方がいいと思って。これからお世話になるんだし」
「私から見たら、邪魔になるわ」
何て人だと、怒りそうになるのをこらえた。
一方、夕陽もこらえてそうに見えるが、手を見てみると拳ができてる。
「そういうこと言わないの。それで、はい資料」
「ええ、確かに受け取ったわ」
会長から冷たい会長は、資料を受け取った。
すると、バン!と生徒会室の扉が開いた。
「伊織様、こちらに高持女子高の生徒会が来てると――あっ!」
ツインテールをした女の子が、大きな声をあげた。
それを聞いて、冷たい会長、伊織は注意をする。
「麗華、落ち着きなさい。うるさいわ」
「ご、ごめんなさい、それより」
ツインテールをした女の子は麗華といい、私たちの方を見て、それから何故か会長を見た。
「じゃあ、私たちはこれで失礼するわね」
もう用は済んだみたいで、会長は生徒会から出ようとする。
私たちも会長の後ろを歩き、出ようとした。
すると、伊織は私たちに聞こえるように言った。
「美沙、来月のこと分かってるわよね?」
来月?
何か行事でもあるのだろうか、それとも、二人で遊ぶ約束がと考えてると、会長は振り向かずそのまま答えた。
「ええ、もちろんよ。楽しみにしてるわ」
「私もよ、どっちが勝とうが恨みっこなしだから、覚えておきなさい」
伊織がそう告げると、同時に生徒会の扉はバタンと閉められた。
そして、私たちは、高持女子高に帰る途中、来月のことは何のことか会長に聞いてみた。
だが、会長は、まだ教えるのは早いと言って、教えてくれないまま学校へと着いた。




