第51話「取り調べ」
「ダメです………っ」
「何がダメなのかしら?」
「こういうことする事です」
「こういう事ってどういう事?」
「…っ……言えません…っ」
騒がしい繁華街でビルの裏側に壁ドンをしている女性の姿があった。
「ねぇ、やめてほしいなら、やめてあげてもいいけどその代わり条件があるの。分かるかしら?」
サラリと長い髪の毛が相手の肩に当たる。
「で、でも、これはあなた達に関係ないことでは?」
「そうね、関係ないことね、でも学校に通学してる生徒である以上これは関係あることなのよ」
「わ、私、何か悪いことしましたか?」
「もちろん、とんでもないことをしたわね」
その後相手の女性は考え込む。
その二人の光景を心配そうに眺めているものがいた。
麻友と優芽だ。
「あわわわ、夕陽大丈夫かな」
「大丈夫だよ、性的なことはしないって言ってたし、待ってようよ」
優芽の不安そうな姿に麻友は落ち着かせた。
どこに優芽と麻友が隠れているのかというとゴミ箱の裏だ。
とてもじゃないけど臭いはきつい。
「ねぇ、なんでお金を受け取っていたの?」
「何のことかさっぱり分かりません」
「へぇ、まだ意地張るんだ?」
夕陽は女の子の脇腹を強くひねった。
「……っ」
「痛いでしょ? でもその内快感に変わるかも」
「こ、こんな仕打ちをして生徒会長さんが怒りますよ?」
「大丈夫、許しは得てるのよ」
「そんなっ」
女の子は悲劇の顔になる。
「うふふふ、あなたのその顔好きだわ。ねぇ、もっと私に喜びをちょうだい」
夕陽は嬉しそうに問い詰める。
すると。
「おいっ、やめろ!!」
どこからか声が聞こえた。
振り返ると男の人が立っていた。
「今警察を呼んだから、逃げ場はないぞ」
どうやら一般市民のようだ。
夕陽たちの姿を見て悪いことをしているように見えたのだろう。
警察を呼ばれたようだ。
「助けてください」
女の子は夕陽をどかして男の人の裏に隠れた。
「ちょっと夕陽」
麻友は慌てて夕陽を呼んだ。
すると大丈夫かのようにアイコンタクトをする。
「お兄さん、別に悪いことしてたんじゃないですよ。私は学校の生徒会の者です、ちょっと訳ありで取り調べをしてたんです」
「そうは見えなかったけどな。ほら、警察が来たぞ」
駅の近くにある交番から来たのだろう。
自転車を降りて警察の人は近寄ってきた。
「君たち、何をしている」
「助けてください、おまわりさん。この人が酷いことしてくるんです」
女の子は男の人から警察に近寄る。
「大丈夫だよ。ちょっとそこの君、交番まで来てもらおうか」
「なんで私が悪い人になってるのよ。麻友、優芽、説明しなさい」
夕陽は隠れていた二人を呼んだ。
慌てて、二人は警官の前に飛び出す。
「ちょっとおまわりさん、これには事情があるんです」
「どんな事情であれ、こんな夜に女の子たちが騒いでちゃダメじゃないか。交番まで来てもらおうか」
中々引き下がってくれない警官に麻友たちは困惑する。
どうしようかと考えていると、夕陽はある行動に出た。
「おまわりさん、あなたお酒飲んでるわよね?」
「えっ」
お酒という単語に反応したのか警官はドキッとしていた。
「私達を指導する前に自分を指導したほうがいいんじゃないかしら」
「ど、どこにお酒を飲んだって証拠はあるんだ」
「顔が真っ赤で呼吸が荒い。それにお酒臭いわ」
「そんな理由で警官を問い詰めるのは早いぞ」
「あら、じゃあこうされたいの?」
ぐいっ、どんっ。
夕陽は警官を壁ドンした。
「あまり男の人に興味がないのだけれど、今は仕方ないから我慢するわ」
「な、なにをする」
「私、高持女子高の中で第一のドSなのよ。それを踏まえてここに来たのよね?」
「高持女子高って、もしかしてあの高持家の娘さんがいる」
「そうよ、高持美沙さん」
「ぐっ…そうだったのか。これは失礼した」
警官はするりと夕陽の腕から離れた。
「あの高持家が関わってるなら仕方ない。あまり騒ぎを起こすんじゃないぞ」
そう言って、警官は自転車を乗りその場から離れていった。
「さあて、続きをするわよ」
と、手をポキポキ鳴らし女の子に続きを再開しようと周囲を見回したが女の子の存在はなかった。
「逃げたわね、私から簡単に逃げられると思ったら大間違いってことを証明しないと気が済まないわ」
ごうごうと熱いのは気のせいだろうか。
夕陽の裏からやる気の炎が舞い上がっていた。
お久しぶりです。
やる気が出たので少しだけ書いてみました。
ちょっと夕陽を暴走するのも久しぶりなのでどう書いたらいいか忘れてました。
夕陽は最初の話あたりがちょうどく暴走してたのになと思う今日この頃です。
それでは。