第50話「ある問題」
翌日、会長と麻友は一緒に登校していた。
「なんだか二人一緒に登校するの初めてですね」
「そうね、お互い家が違ったし」
歩幅は同じように歩き学校へと向かう。
「ねぇ、麻友」
「何ですか?」
「その、手を繋いでもいいかしら?」
「良いですよ、でも、学校に着いたら放しますよ」
「ええ」
二人は手を繋ぐ。
まるで恋人同士のようだ。
いや、もう両想いだろう。
「すごく嬉しいわ」
「なんだかこうしてると初めて出会った時とすごい変わりましたよね、私たち」
「そうね。お互い縁もなかったし、麻友は私に目もくれない子だったし」
「あのころを思い出すとなんか今こうしてるのがすごい不思議です」
「よく言うじゃない? 興味ない同士は惹かれ合うって」
「それにしても、惹かれ合いすぎじゃないですか?」
「ふふ、それは運命だったのよ私たち」
「はぁ。 あ、もう学校に着きますよ、手を放しますね」
麻友はそういうと手を放した。
だがその瞬間を見ていた生徒がいた。
それは。
「キャー!! 会長と麻友さんが手を繋いでいたわー」
学校の生徒だ。
それを見られてしまい、麻友は慌てた。
「まずっ、これが全校生徒たちに知られたら」
「いいじゃない、別に減るもんじゃないし」
「会長は良くても私が困るんです」
「そうなの? ねぇ、もう見られてしまったのだしこのまま手を繋いでいきましょう?」
「嫌です。私、先に行ってますからね」
会長を残し麻友は学校の中へ入ってしまった。
自分の教室へと入ると何やら慌ただしかった。
「麻友、あの噂ほんとうなの?」
声をかけられたのはさつきだ。
「噂? 何?」
「しらばくれないで、会長と麻友が手を繋いでたってこと。あと会長と一緒に住んでるって本当なの?」
もうここまで噂が広がっているのか。
これは怖い。
「そ、それは…」
「ねぇ、麻友教えてよ。私たち友達でしょ?」
「そうだけど、うーん」
ここで本音を言ってしまっていいのであろうか。
認めたい気持ちはあるけど、いじめとかエスカレートしないであろうか。
「麻友!」
「麻友さん」
そこに夕陽と優芽が来た。
「げっ、来てもらいたくない二人がきた」
「げっ、とは何よ。麻友。それより会長と一緒に住んでるのって本当なのかしら?」
「どうなの、麻友さん」
むむっと三人に問い詰められる。
「ええと、それは」
「教えないと私の調教が来るわよ。それでもいいのかしら?」
夕陽の調教だからまた例のことだ。
いつものことだから慣れてはいるが。
「分かったよ、三人がそこまで聞きたいっていうのなら教える」
麻友は今までのことをすべて話した。
「ふーん、やっぱり噂は本当だったのね。ねぇ、ところでエッチはしたのかしら?」
「はぁ?!」
夕陽の問いに麻友は顔を真っ赤にして驚く。
「その様子だとまだのようね。一緒に住んでるのだからエッチくらいするでしょ。私と優芽は何回もしてるわよ」
「ちょっと夕陽、そんな恥ずかしいことみんなの前で言わないで」
「恥ずかしい? じゃあもっと言ってあげる。優芽とはね、両手首を縛って開放的にしてあげて…」
「ダメェー」
夕陽の口を優芽が塞ぐ。
よほど恥ずかしいようだ。
「え、エッチなんてまだするわけないじゃん」
「あら、じゃあ早くしたほうがいいわよ。お互い両思いなら愛を深めないと」
「でも、私だって心の準備というものが、それにやり方だって分からないし」
「やり方? じゃあ麻友、私が教えてあげましょうか」
「いい!! 夕陽は優芽として」
「もったいぶらなくていいのよ、私はいつか麻友でもしてみたいと思ってたの」
「私はしたくない!」
「そう、残念ね。行きましょう優芽。チャイムが鳴るわ」
その同時に学校のチャイムが鳴った。
生徒たちはみんな自分の席に着く。
さつきも夕陽も優芽もいなくなったことで麻友は一人になれた。
そう一人考える時間ができたのだ。
会長のことは好き。
でもエッチってなんだろう。
ちょっと学校の帰りに本屋でも行ってみようか。
そう考えながら放課後になった。
麻友は生徒会室へと向かった。
いつもの生徒会室のドアを開くとそこは見慣れた景色があった。
会長はいつものように書類に目を向けている、林檎も同じようだ。
麗華さんはホワイトボードに何かをまとめている。
夕陽と優芽はまだ来てないようだ。
「ただいま終わりました」
「あら、授業お疲れ様、麻友」
「会長もお疲れさまでした。今、大変そうですね」
「ええ、ちょっと林檎さんと話し合っていたのだけれど、学校の生徒たちが夜遊びしてるみたいなのよ」
「夜遊びですか? 夜遊びってあの、学校の終わりに夜に遊ぶってことですか?」
「そうなのよ、それが問題で先生たちも揉めてるの。いくら注意しても聞かない生徒たちが多くて」
「それってバイトじゃないんですか?」
「バイトだったらいいのだけれど、ある日、林檎さんが見たっていうのよ。生徒がある男性と夜に二人きりで会ってホテルから出てきたってところを」
ホテル?
それはつまり。
「ラブホね」
バンと扉が開きそれを言ったのは夕陽であった。
「ちょっといきなりは失礼だよ、夕陽」
その後ろであたふたしてる優芽。
「で、でも、ラブホって付き合ってるかもしれないですし別にいいんじゃないですか?」
「あれが付き合ってると思うの、麻友」
横から林檎が入ってきた。
「あれって?」
「ラブホから出てきた後お金をその生徒が受け取ってたのよ」
「えー!!」
それは付き合ってるとはいえない。
援助交際だ。
「それは大変じゃないですか。会長どうするんですか」
「それで悩んでるのよ。いくらその子にやめなさいって言ってるんだけどやめてくれる気配もなくて」
会長が悩んで困ってる。
こういう時助けるのが普通だよね。
「分かりました、私が行ってきます」
「でも、麻友。その子はちょっと事情があって」
「事情ってなんですか?」
「男性以外にも女性とも付き合ってるのよ」
「えー!!」
更にびっくりだ。
これはどういうことだ。
よく考えろ。
男性とお付き合い、まあ、援助交際だけど。
それに女性ともお付き合い、これも援助交際というのだろうか。
「かなりの浮気性ね」
夕陽の言葉に麻友は考えた。
「ねぇ、夕陽お願いがあるんだけど」
「何かしら、私と援助交際でもしたいというの?」
「そうじゃなくて、その子にやめてくれないか調教してくれないかな?」
思い切った大胆の言葉に自分でも驚いていた。
その後夕陽はとても喜んだ表情で頷いていた。
お待たせしました。
次はたぶん恐らく夕陽が暴走すると思いますw
お楽しみに。