第44話「すれ違い?」
「……好き……」
ぽつりと呟いてみた。
でも、何故だかピンとこない。
「あぁ、よく分からないよ…!」
「何が分からないのかしら?」
「ゆ、夕陽!? あぁ、びっくりした」
「誰と思ったの? ふふ、もしかして会長?」
中庭のベンチで呑気に横になり、ぶつぶつ独り言を言っているといつの間にか夕陽がいたようだ。
聞こえていたのか。
「さぁね」
「隠しても無駄よ。麻友はすぐに顔に出るんだから」
「うぅ…」
「それで、何をそんなに悩んでいるの? やっぱり、例の告白のこと?」
「…うん。私、好きとかそういうの分からなくて。男子に告白されたことはあるけど、女子に告白されたこと初めてで、それで」
「そうね。例えば会長とキスができる?」
「き、キス!?」
「いや、それ以前に会長とエッチなことできる?」
「え、ええええ、エッ……」
その言葉を聞いて、麻友は顔を赤らめてしまった。
「それができないなら、会長のこと恋愛対象に入ってないんじゃないかしら」
「で、でも、性欲がなくたって、人は思う気持ちだけで生きていけるし」
「そうとも限らないわよ? 私は毎日優芽と色々なことをしてるけど、気持ちだけで生きていけない」
「それは単に夕陽の性欲が強いだけなんじゃないの?」
「何か言ったかしら?」
「いや別に」
「とにかく、自分の気持ちと向き合うことね」
チャイムが鳴り、夕陽は中庭から離れて行った。
残された麻友は色々と考えた。
会長とキスできるのか…それは…友達としてならできるかもしれない。
でも、愛してのキスはどうなのか。
まだ分からない。
会長とエッチなことはできるのか…それはまだ考えるの早いんじゃないだろうか。
そう思った。
「よし! とにかく、行動に移さないと分からないことだらけだよね」
バッと立ち上がり、麻友も自分の教室へと向かった。
お昼や午後の授業も終わり生徒会の仕事も終えた麻友たち。
帰ろうと、みんな生徒会室を後にする。
「おつかれさまでした、会長」
そう言って夕陽たちは去っていく。
残されたのは麻友と会長だけ。
でも、一人帰っていない人がいた。
それは。
「麻友に話したいことがあるの」
「何? 林檎」
それは林檎であった。
麻友と林檎は向き合い会話を始める。
一方、会長は少し離れたところで後片付けをしていた。
「麻友、私も貴女のことが好きなのよ」
「へ?」
「へ? じゃなくて、本当に心の底から好きなの」
「えーっ!?」
麻友は驚いた。
だって、会長に続き、林檎にまで告白されたから。
しかも、同姓に。
このことは二人きりでする話じゃないかと考えながら、混乱する。
「会長さんも聞いてるわよね? さっきの私の告白」
「ええ、もちろん聞いてるわ」
「ちょっと待ってよ。どうして会長がいるこの部屋で私に告白してきたの? 普通、告白なら二人きりでするもんなんじゃ」
あたふたと動揺する。
意味が分からない。
二人の考えてることが。
「会長も私が麻友と同じ好きなのは知ってるからよ。だから、会長にも麻友からの返事聞いてもらおうと思って」
「ということは林檎も会長もグルだったってこと?」
「そういうことになるわね」
「ますます意味が分からなくなってきた」
「麻友?」
「何ですか、会長」
「もしかして怒ってる?」
「怒ってたらどうします?」
「麻友が傷ついてるなら謝るわ。ごめんなさい」
「ということは、会長は私に悪気があっての好意だったということですよね?」
「えっ、何で…」
「だって謝るくらいのことしてたっていうことですから。そうなりません?」
だんだんと空気が悪くなっていく。
「それは、ちがっ…」
違うと会長は言いかけようとすると、麻友は。
「私、みんなに遊ばれてたんですね。すみません、今日は帰ります」
走って生徒会室を出ていく麻友。
残された会長と林檎は目で語り合った。
「追いかけなさいよ」
「え、でも…」
「追いかけなさいって言ってるの! 違うことを証明してあげなさい」
「分かったわ…!」
林檎に言われ、会長も生徒会室を出ていく。
そして、林檎はため息をつき。
「まったく、困ったものね」
生徒会室の窓から差し込む夕陽を見て、ぽつり呟いた。
自分で書いていて話が矛盾してるような気がしてきました。
もしそうだったらすみません。
でも、会長も麻友も一生懸命自分の気持ちに向こうとしてるんです。
恋愛系は難しいですが、次回も頑張ります!
それでは。