第42話「会長の告白」
外に出た夕陽は汗をかいていた。
これは冷や汗というより、大人のドキドキを知った焦りの汗であった。
「どうしたの? 夕陽」
「何でもないわ。さぁ、迷子になってる会長たちを探しにいくわよ」
「う、うん」
優芽の問いかけに夕陽は、話題をそらした。
麻友たちが会長を探している時、本人たちはというと。
こっちはこっちで男性に捕まっていた。
「お嬢ちゃん、俺たちと一緒に遊ばない?」
「遊んだら、いいものあげるよ~。ねぇねぇ」
「まったく、やっかいなものが来たわね」
最初に発言したのは林檎だった。
「あぁ? 今、何て言った!」
「やっかいなものが来たわねと言ったの。今は貴方たちと遊んでる暇はないのよ。さぁ、行くわよ、会長」
「会長? ふっ、今、こいつ会長って言ったよな?」
「あぁ、言った言った。もしかして、そういうプレイでもしてんの?」
男性たちが話始めた。
「失礼な、この人は、高持女子高生徒会、会長よ」
「ふぅ~ん、でもさ、ここでは関係なくね?」
「そうそう、ここは俺たちのナワバリなんだし」
「貴方たちのナワバリかは知らなかったの、許してちょうだい。だから、ここを」
林檎は急いで逃げようとする。
左手にはちゃんと会長の手を握りしめ、一緒だ。
「やだね。ここを通りたいのならば、礼儀っていうものがある。さぁ、ここを通してくださいご主人様って言ってみ?」
その発言に、林檎は身を引いた。
こんな野蛮な連中に対して、そんな恥ずかしいセリフ、しかも麻友に言わせたいセリフをここで言うのはためらうものがある。
会長だってそうであろう。
「早く言えって」
「会長、どうするの?」
後ろにいた会長に相談をした。
「大丈夫、私が何とかするわ。林檎さんはここにいて」
「はい」
今度は会長が前に出た。
「あ?」
「麻友! 近くにいるんでしょ! だったら話を聞いてちょうだい!」
「何言ってるんだ、このアマ」
男性たちと会長たちが揉め合ってる中、いきなり、麻友の名前を口にした会長。
「貴女との出会いは学校の屋上だったわよね。私が手紙を出して麻友を呼び出した。あの時、麻友は告白かと思って来てくれたけど、実はそうだったのよ。告白しようとした、だけど、一番最初に振られてしまった。そう、貴女にね」
会長は話を進める。
「あの時は傷ついたわ。告白で呼び出したのに、いきなり麻友から振ってくるなんて。だから、私は冗談でごまかした。心の中はとても悲しくて、もう、張り裂けそうなくらいに辛かった」
「どうして、私が麻友に恋をしたと思う? それは、学校での噂よ。噂では有名な生徒会長に興味を持たない女の子がいるって流れてたの。生徒たちはみんな私のこと興味持って追いかけてくるのに、その子だけは見向きもしてくれなかった。だから、私のほうから興味持って、チラッと貴女の教室を見にいったの。そしたら、心臓が跳ね上がったわ。友達と喋って笑ってる笑顔が素敵で、風でなびく髪が綺麗で、まるでお嬢様を見てるみたいな気持ちになった」
「おい、いい加減にしないと殴るぞ!」
「そこで貴女は言ってたわよね。『生徒会長に対してはloveじゃなくてlikeだって』それを聞いて私はこの娘に決めようと思ったの。最後の恋に」
「この、クソアマー!!」
バシンッ。
男性が拳を会長に降りかかろうとした瞬間、風が走った。
そう、助けに来てくれたのだ。
例の女の子が。
「ちょっと、酷すぎませんかね。女の子に対して暴力を振るうなんて」
グリグリ。
麻友は痛そうな表情をしている。
なにせ、大人の男性の拳を自分の手で受け止め、支えているのだから。
「あ、話を聞かないこのアマが…」
「警察呼びましたから!!! 私のお父さんがそこにいるんですよ!!」
その言葉を聞いて、男性は拳を下ろした。
麻友はハァハァと息を乱している。
「な、何言って、警察なんてどこに…あ」
「いたぞ! あいつだ!」
「やばい、逃げるぞ」
男性たちは逃げて行った。
周りには人影の姿はない。
いるのは、麻友、夕陽、優芽、会長、林檎だけ。
痛そうにヒリヒリと麻友の手が神経を通って伝わってくる。
「あ、あの、麻友」
「会長」
「何?」
「私、先に帰りますね」
「え。で、でも、旅行が」
麻友を呼び止めようとした会長の肩にポンと手を置かれた。
「林檎さん?」
「私は貴女の負けね、麻友に対する愛情が。それより、今は放っておきなさい。麻友は麻友で考えることがあるんでしょ」
「ええ」
一足先に一人だけ帰った麻友。
もう夜だ。
自分のベッドにバタンっと倒れ込み、真っ暗闇の中あることを考える。
それは会長と自分の家のことである。
お久しぶりです。
書きたいのに中々病気のせいで書けない日々が続いております。
最近、頭も追いついていかなくなってしまって…でも、なるべく早く投稿できるよう努力してますので、読者の皆様ご理解いただけると嬉しいです。
さて、今回は突然会長が告白するシーンを書きました。
ちょっと早すぎましたかね?
でも、そろそろ恋愛編に入ってもいいんじゃないかと思って書いてみました。
ちなみに、会長のセリフで麻友が「loveとlike」と言ってましたが、ここは第1話を読んでいただけたらこのシーンが出てきます。
第1話とか懐かしいですね、あの頃は無我夢中で書いてました。
当時を思いだすと、字の文が今より良かったんだなとしみじみ思いました(笑)
まぁ、そんな感じで、昔と比べるのもありですね。
それでは。