第41話「あっち系」
突然の誘いに、戸惑う、そして、お互いに目で確認する麻友たち。
そこにいたのは、ぷんぷんとお酒の香りをただよせてる、一人の女性であった。
薄着の服装で、唇に指を当てている。
どうやらタバコのようだ。
「あ、あの、私たち困ってるんです。この辺で、黄色いツインテールの女の子と、美しい女の子見ませんでしたか? ちょっと迷子になってしまいまして」
「知らないわ、私はずっとお店にいたから」
麻友の問いかけに、女性はスゥーっとタバコを吸ってははいてる。
タバコは苦手だ。
とても臭い。
すぐにでもここから離れたい気分だが、夕陽はまたやっかいな問題に関わりそうなことを言った。
「お姉さんのところに遊びにいってもいいのかしら」
それはダメだろう。
今は遊ぶより、会長たちを探さないと。
それに、今は夜だ。
夜で未成年者が知らない女性と遊ぶのはよくない。
まさしくも、お店なんて。
「いいわよ、私のお店に来る? 何でもあるわよ」
「じゃあ、失礼するわね」
「ちょっと、夕陽! 私たち未成年者なんだよ、あの感じのお姉さんなんだから、お酒売ってるお店だって」
「大丈夫よ、麻友たちはここにいなさい。私だけが行ってくるから」
「それもそれで危ないって」
「じゃあ、優芽、ここで待ってるのよ」
「…う、うん」
お姉さんと夕陽だけがお店の中に入ってしまった。
麻友と優芽は大人しく夕陽の帰りを待つ。
二人の様子はというと。
「お嬢ちゃん、可愛いわね」
お店に入り、椅子に座るお姉さんと夕陽。
「そうね、私は今まで何人と落としてきたから」
「あら、そうなの。もしかしてそっち系?」
「そっち系よ。お姉さんは、どっち系なのかしら」
「ふふっ、可愛い娘ね。もちろん私もそっち系よ」
カランコロンとコップの中に入った氷を揺らしながら、お姉さんは、椅子に座る時一緒に持ってきた、お酒を飲む。
「ふーん、気が合うわね。今まで、そっち系の人と喋ったことないから」
「あら、さっき一緒にいた子たちは違うの?」
「あの子たちは、別よ。彼女と友達だから」
「そう、その彼女とは何年くらい付き合ってるの?」
夕陽は、ふぅ、と息を吐きだし、答える。
「答えられないわ。私と彼女の関係だし」
「ねぇ、浮気したいと思わない?」
突然の発言に、夕陽は、顔をしかめる。
「何言ってるのかしら、私は優芽一筋よ。浮気なんてしたら、今まで彼女に愛情を注げてきた行為は何だったの」
「そんなのただの遊びじゃない。彼女は貴女と同い年なんでしょ。でも、本物のそっち系は格が違うわ」
「格が違う?」
「そうよ、学生同士じゃないそっち系の大人のお付き合い。夜の営みも、激しいわよ」
お姉さんはニヤニヤとしている。
夕陽は明らかさまに、心の中では、そんなの引っかからないと強く思っていた。
「やめておくわ。もしかしたら、お姉さんより、私のほうが夜の営みの仕方激しいかもしれないわよ?」
「えっ、ほんと? ねぇねぇ、教えて」
くいついてきた。
「お姉さん、S? それとも、M?」
「急な質問ね」
「夜の営みの仕方を教えてって言ってきたお姉さんのほうこそ、急だと思うのだけれど」
「それもそうね。私は普通よ」
「そう、じゃあ、お姉さんとの関係はこれでお終いね」
「どうして?」
「私はS、ドSだから。相手がMの子じゃないと興味がないのよ」
「ふーん。じゃあ、Mの子を紹介してあげましょうか」
「それも…」
カランコロン。
お店のドアが開いた。
そこにいたのは、麻友であった。
「夕陽! もういい加減にしないと怒るよ。こんなところにいたら、会長たちだって黙っていないし、それに、優芽も心配してるから、早く戻ってきて」
そういい残し、麻友は去っていった。
「あの子は何なの?」
「私の友達…可愛らしいおもちゃかしら。ふふっ」
夕陽は微笑んだ。
「やはりあなた可愛いわね」
「顔や笑顔で口説くのもよくないわよ、お姉さん。中身も見ないと」
「あら、私は、本気で貴女のこと外見も中身も気にいってるのだけれど」
「気にいってるだけじゃダメ、心から愛さないと。お姉さん、浮気しそうな感じがするわ」
「そうかしら? 付き合ってみないと分からないじゃない」
「遠慮しておくわ。やはり私には特別な人がいるから」
椅子を引き、夕陽はお姉さんから離れて、お店の入口へと向かった。
すると、お姉さんも立ち上がり、夕陽の元へ駆け寄って、手を握った。
「ちょっと、お姉さん!」
チュッ。
口じゃなくてよかったと、心の底から夕陽は思った。
そう、お姉さんは夕陽の頬にキスをしたのだ。
「私の可愛い、虎さん」
「どうして虎なのかしら? それより、どうしてキスを」
「何となくよ。さあ、行きなさい。友達たちが待ってるんでしょ」
「意味が分からない人ね。それじゃ、もう二度と会わないと思うけれど」
カランコロン。
夕陽はお店から出た。
外には心配して待っている、麻友たちがいたのであった。
お久しぶりです。
今まで、体調不良、百合離れ、小説を書きたいという意欲がなくなってました。
でも、久しぶりに書いてみて、百合漫画読んだりしてみて「私は百合から離れられない、百合を心の底から好きなんだ」と実感することができ、百合を更に愛せることとなりました。
まだ少し体調がよくなくて、頭が働きませんが、無事書くことができて嬉しいです。
次回もいつになるか分からないですが、麻友たちのこと、読者さんのことを思い浮かべながら頑張って続きを書きます!
それでは。