第40話「揉め合い」
「で、何でこうなってるわけ?」
その一言は夕陽であった。
今の状況を振り返ってみるとこうだ。
「みんな、旅館にも着いたことだし、これから町へおみやげを買いに行きましょう」
「いいわね、お土産。優芽、何か欲しいものがあったら言うのよ、買ってあげるから」
「ほんと、嬉しい」
会長の提案でお土産を買うことになったのだ。
まだ旅行して一日目、お土産を買うのは早すぎると思ったが、みんな楽しみで仕方ないようだ。
旅館から出て、歩いて、十分程度。
服装はまだ普段着だ。
旅館から出てみると、昼間では見えない風景が見えた。
暗い中、営業してるお店の明かり、そこに行きかう人々。
そして、何よりいいのは、昼間より涼しいことだ。
涼しいからか、夜の町は、人でいっぱい。
迷子にならないように気を付けるため、みんな、注意していた。
「それで、何を買いましょうか。おまんじゅうに漬物、キーホルダーに、この町でしか買えない限定のお菓子もあるわね」
「うーん、そうですね。会長は誰にあげる予定ですか?」
麻友は会長に聞いてみた。
「そうね、やはり家族とかかしら。あと」
「あと?」
「好きな人ね」
「す、好きな人!? こういっては失礼なんですけど、会長に好きな人いたんですか?」
「ええ、もちろんいるわよ。め…」
「め?」
目の前にと言おうとした時、林檎が止めに入った。
「会長さん、遊びはそこまでよ」
「あら、ごめんなさい、林檎さん」
「二人とも仲がいいですね」
楽しそうに会話してる会長と林檎を見て、麻友はそう思った。
「「どこが!」」
「そういう意気のあうところですよ」
そう麻友が言うと、会長と林檎はふん!とそっぽを向いた。
「ちょっと麻友! あまり離れて歩いてると迷子になるわよ」
先に歩いている夕陽に言われ、麻友は慌てて追いかける。
「あ、待って」
会長と林檎を残し、麻友は夕陽と優芽がいる場所へと向かった。
後ろを振り返ってみると、未だ、林檎と会長は仲良くしていた。
夕陽たちのところに到着すると、二人は既に何かを買っていた。
「ごめん、遅れた」
「もう何やってるのよ。それで、麻友は何を買うつもりなの? 私たちはお揃いのハンカチを買ったわよ」
「何でハンカチ? ハンカチならどこでも買えるんじゃ」
「分かってないのね、このハンカチでお互いの蜜を拭うのよ」
「お互いの蜜って?」
麻友は分かっているようで分かっていないような聞き方をした。
たぶんあのことだろう、それしか夕陽には思いつかない。
「私に言わせる気? 麻友、貴女知ってるんでしょ。言ってごらんなさい」
「どうして私が」
「麻友にもそういう時がくるからよ。さあ、何の蜜かしら」
「う…ゆ、優芽に聞いてこようっと」
逃げよう、それしかない。
優芽に聞きにいこうとすると、夕陽は止めた。
腕を掴まれ、止められる。
「ちょっと待ちなさい。優芽は私の物、優芽にそう言わせていいのは私だけなのよ」
「ぐっ…わ、分かった。言うよ」
「そう素直になればいいのよ。それでこそ私の麻友」
「み、蜜は…」
「蜜は?」
麻友が言おうとした時、夕陽の隣でちょんちょんと邪魔がはいる。
「何かしら? 今、ちょうどいいところで」
それは優芽であった。
「会長さんと林檎さんがいないよ」
「え」
優芽に言われ、夕陽は辺りを見回す。
麻友も同じように辺りを見回す。
本当だ、どこにもいない。
「私たちまた迷子になっちゃったの」
また、というのは、前回の会長での別荘の迷路のことを思いだす。
あの時も、麻友、夕陽、優芽の三人であった。
「まったく、困ったものね。何でこうなってるわけ?」
「いや、夕陽のせいでしょ」
「何で私?」
「夕陽があんなこと言うから」
「あら、あんなことって何のことかしら?」
「うぅ…まあ、いいや。それより二人を探さないと」
スタスタと歩いて行く麻友。
それを見た、夕陽は止めに入った。
「ちょっと待ちなさい」
「何?」
「むやみに探し回っても見つからないわ。こういう時は周囲の人に聞くことが重要よ」
「いや、でも、周囲の人って言っても、二人のこと覚えてるかどうか」
夕陽と麻友が相談し合ってると、とある女性が近づいてきた。
それに気付いた優芽は釘つけになる。
「二人の特徴を言えばいいのよ」
「二人の特徴ねぇ」
「ねぇ、夕陽」
「今度は何?」
「あの人」
優芽に言われ、夕陽はその人のことを見る。
そして。
「ねぇ、そこのお嬢ちゃんたち、私たちのところへ遊びにこない?」
麻友、夕陽、優芽はその人に目を奪われた。
だって、とても美しい人であったから。
甘い蜜の香りがその人から漂っていた。
そうまるで、花の蜜のように。
今回は会長と林檎も揉め合ってますし、夕陽と麻友も揉め合い?ってますね。
旅行に来た旅の移動編は省略させていただきました。
さて、次回から新キャラとはいわないですけど、今回の話だけ登場するキャラだけ出現します。
まあ、今回のお話が終わったらその人は登場するか分からないですけど、まあ、モブ?キャラみたいな感じでしょうか。
ちょっと今回の話、セリフとか前と同じようなことばかり、似たようなことばかり言ってますけど、すみません。
次回はたぶん、会長と林檎の出番はないと思います、麻友、夕陽、優芽とその人の出番になるかと思います。
それでは。