第31話「飛行機の中」
ゆさゆさ、揺さぶられる。
何だろうと思い、麻友は目を開けた。
「ん?」
「あ、起きたのね。麻友、着いたわよ。会長の別荘に」
「え、ほんと」
思い切って、体を起こす。
そして、バスの窓から外を見た。
そこには何台ものバスが止まっていた。
「って、どこに会長の別荘があるの!」
「あはは、ごめん」
突っ込みを入れる麻友。
そこに、林檎は笑っていた。
「それよりみんな外に出ちゃったよ、早く出よう」
「うん」
林檎の言うとおり、バスの中は誰もいなかった。
寝てる時、みんな、外に出たのだろう。
麻友は林檎の後に付いて行きながら、とある場所に、たどり着いた。
「お待たせ、みんな」
そこには生徒会役員が集まっていた。
「遅いわよ、まったく何してたんだか。麻友がいない内に私は優芽を口説いて…」
「ちょ、ちょっと」
夕陽と優芽は相変わらずラブラブだ。
「それで会長の別荘はどこに?」
バスがたどり着いたのだから、当然、会長の別荘があるはずだ。
もう目の前にあってもおかしくないと思うのだが、周りにあるのは、生徒たちとバスだけ。
もしかしたらここから、何かで移動して到着なのか、そう思った麻友は少しだけ顔を動かすと頬に何か当たった。
それは。
「会長」
「んふふ、あれで行くのよ」
頬に当たったのは会長の指であった。
遊び心で、会長は麻友の頬に指でツンとしたのだ。
油断していた。
それはそうと、ブロロロロロ、と大きいエンジン音が鳴っているのが聞こえる。
バスの音かと思ったが、違うらしい。
とてつもなく大きい音だ。
「か、会長、あれって…」
麻友もそうだが、他の生徒も驚いていた。
それはというと、高持女子高生徒全員が乗れる飛行機であった。
その飛行機は突然大きい音と共に地下から現れた。
飛行機が、徐々に全貌を表す。
「うわあああ、すごい」
「これって本物?」
「これに乗ってどこに行くのかしら」
生徒たちは驚いていた。
無理もない、いきなり、地下から姿を表し、目の前にあるのだから。
「会長、これに乗ってどこに行くか当ててみましょうか?」
夕陽は、飛行機からによる風で髪をなびかせている会長に言った。
「どこに行くのか当たるかしら」
「北海道ね」
「正解」
パチパチパチと会長は拍手した。
「あと、これは余談だけど、会長はアメリカに行こうかと考えていたんじゃないの」
「夕陽さんには何でも分かるのね。ええ、もちろんそうよ。でも、アメリカだと交通費が高いし、言葉との通じ合いもあるから、諦めたの。生徒たちの安全を考えてね」
「今考えてみると、会長の結論が正しいと思うわ。よかったわ、北海道で。うふふ、これで優芽と二人乗りができるわね」
最後、夕陽は小さい声で呟いた。
「二人乗り? 何、それ」
「優芽と一緒に馬に乗って大草原へ…って、何を言わせるのかしら」
バンッ、麻友は夕陽に、背中を押された。
「それより、早く乗ろうよ。私、飛行機乗るの初めてなんだ」
ウキウキと麻友は楽しみにしているようだ。
目の前では、続々と、生徒たちが会長の飛行機に乗っていく。
「そうね、行きましょう」
飛行機の中に入ると既に座っている生徒がいた。
どうやら、飛行機内の座席の順番はどうでもいいらしい。
麻友は生徒会のみんなと一緒になった。
ぶぉおおおおん、それぞれ座席に着くと、飛行機のドアが閉められて少しずつ動き始めた。
出発だ。
座席はというと。
会長にとって嬉しい、麻友の隣であった。
「麻友、飛行機は初めてでしょう?」
「あ、はい、初めてです」
「気分が悪くなったら早めに教えてね。対処するから」
「ありがとうございます」
それからしばらく沈黙が続いた。
会長は何を話したらいいのか分からないのだ。
いつもは生徒会室で、他の役員と一緒に話しながら楽しんでいるが、こうして二人きりの時はきまずくなる。
「麻友。一億円の宝くじが当たったら何がしたいかしら?」
「んー、そうですね。私は、困ってる人たちを助けたいです。だから、そういう困ってる人たちに一億円寄付します」
「偉いのね。私はそういう助けたいと思う優しい気持ち好きよ」
「あ、ありがとうございます///」
麻友は顔を真っ赤にして、下に向いた。
照れたのだろう。
麻友は滅多に褒められることがないのだから。
「むぅ、麻友!」
突然、林檎は、会長と麻友の真ん中に座った。
麻友と会長が座ってる席は、三人用の座椅子だったのだ。
「うわ、いきなり。飛行機が飛んでる時は動いちゃダメだよ」
真ん中に座席を移動した林檎に麻友は注意した。
「じゃあ、トイレ行きたくなったらどうするのよ」
「え、それは、えーと、うーん」
「何をそこまで真剣に考えてるの。飛行機はシートベルト着用を外してもいいようにアナウンサー、もしくは、サインが出たら取ってもいいのよ」
「そうなんだ。知らなかったな」
「えっへん、これが常識」
腰に手を当てて、威張る林檎。
すると、会長が。
「林檎さん、あまりはしゃがないようにね」
「以後、気を付けます」
その後、麻友、林檎、会長の順に座り、いろいろ談話した。
夕陽と優芽も、二人で、楽しそうだ。
夕陽のSの話が聞こえてくるが、麻友は、いつものように過ごした。
それから数時間、麻友たちが乗った飛行機は、とある別荘の前に到着した。
とてつもなく大きい別荘、この地下に、一億円の宝くじが眠ってるとは信じられない。
そんな気持ちを持ちながら、麻友は、飛行機から降りた。
最近では少しずつ書いてます。
でも、昔の高持の雰囲気が、今となると壊れていますね。
難しい。
あと、飛行機の件なのですが、それが常識なのか分からずもしかしたら違ってるかもしれません。
一応、「飛行機 常識」とかでネットで検索して飛行機の常識を調べたのですが、合ってるかどうか…。
とりあえず私が知ってる常識はこれだけです、違ってたらすみません。
教えてくれたら嬉しいです。
それでは。