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第22話「仮先生」

翌日、麗華さんは本当に高持へと転校してきた。

林檎と同じ転校者。

何だか、今年は転校者が多いなと心の中で思った。

そして、麗華監視作戦は何事もなく終了し、次に偉い人たちが来る作戦会議が生徒会室で始まった。


「ということで、クリスマスに偉い人たちが来る作戦会議を始めたいと思います」


今度は麗華さんも交えての作戦会議である。

林檎はホワイトボートの前に立ち、座ってる私たちに話した。


「はい」


「偉い人、つまり、PTAの会長みたいなものよね。それなら簡単、ただ、学校を綺麗にして丁寧に会話すればいいことだけよ」


林檎はそういうが、何だか、違う雰囲気が私の隣で漂っていた。

それは、麗華であった。


「違います、林檎さん。PTAの会長ならいいけど来るのはそうじゃなくて、その上の人たちが来ます」


「その上の人たち? それは一体……」


「私にも分かりません。でも、ただこれだけは言っておくようにと言われました。それは…」


「そ、それは…?」


みんなが麗華に注目する。


「礼儀正しく、礼習え。その全てが自分の力となる……と」


「何だか難しそうね」


夕陽がそう答えると、会長は。


「でも、いい言葉の響きだわ」


「そうでしょうか?」


私はいまいち分からないが、会長はニコニコとしていた。

一体誰が来るのか、みんな分からないのだった。




そして、当日となり。

学校全体が慌ただしくなり始めた。

偉い人を迎えに行く人はきちんと制服をまとい、先生たちも、何やら忙しそうだった。

私たち生徒会も忙しく、こっちは違う意味でのことだった。

そう、生徒全員に偉い人の情報を集めていたのだった。

生徒会が知らないのだから、当然、在校生も知らないだろう。

と、思っていたのだが、林檎と麗華は情報集めが好きなのでそのペースにはまっていた。


「ねぇねぇ、偉い人の噂知らない?」


林檎がある一年生に聞いている。

って、誰かと思ったらさつきじゃん!?


「えーと、詳しくは知らないけど、気性の荒いおばあさんだとか」


「えっ、それ本当?」


「うん、私の情報はばっちり正確だから。そうだったよね、麻友♪」


さつきは私に声をかけてきた。


「そうだね、さつきには結構助かってたよ」


何故だろう、すごい視線が痛いのは。


「さぁ、行くよ、麻友」


手を握られ、あらあらと自分の教室から連れ出されてしまった。

まったく、生徒会で忙しくてめったにさつきと話せないのに、林檎ったら。

こんな感じでぶつぶつと思っていると、何やら、麗華が昇降口のほうへと視線を向けた。


「何かしらね」


「よし、行って見よう」


そう言って、林檎は昇降口へと突っ走って行った。

すると!?


「こらああああああああ!? 待ちなさあああああああい!?」


突然の大声に誰もがびくっと驚いた。


「え?」


林檎はその場に立ちどまった。

するとその先にいた大声の主はどかどかと歩いてこっちへ向かってきた。

外見からすると、七十代ぐらいのおばあさんで腰を曲げず、ピンと立っていた。

とてもゴージャスな洋服を着ている。


「廊下を走ってはいけません!!!! これが決まりですよ」


「は、はぁ……」


林檎はまぬけた声で返事をした。


「返事は【はい!】でしょう!」


「は、はい!」


「まったく最近の若者ときたら……」


ぶつぶつと独り言を言いながら、そのおばあさんは去って行った。

慌てて、私と麗華は近づく。


「大丈夫?」


「う、うん、大丈夫だよ。これぐらい」


少し引きつった顔がそこにあった。

で、それから十五分のこと。

その偉い人の情報がすぐに生徒会室で報告された。


「報告します。偉い人のあだ名【口うるさいばあさん、仮先生でもいいわ】、身長百五十四センチ、体重…」


「林檎、そういうことはいいから、他のことを」


相当頭にきたのか、林檎はそのおばあさんのことを嫌っていた。


「分かってるよ。えーと、N県出身、高持女子高を卒業、地元の方ではとても有名となっている超セレブママと呼ばれています。そして、教育には厳しく、特に小さいことでも注意する仮先生だそうです。以上」


「ええーっ!?」


会長全員が驚いた。


「高持女子高の卒業生って、まさか、嘘だよね?」


「いや、事実だよ。それに、仮先生は一週間学校に現れるそうです。つまり、この学園の様子を見て見習いや生徒たちの教え方が悪い先生には厳しく注意するみたいなものですね」


「何だか、厄介な人が来たって感じね」


夕陽はそう言った。


「確かにそうね…あまりに厳しくても、みんなの成長にはならないと思うし…困ったわね」


珍しく、会長はみんなと同じように困っていた。

そう、みんなが困ってるのは厳しさが原因だった。

そして、あまりにもの大声。

これでは学校全体が崩れて、崩壊してしまいそうな状況だった。

だが、先生たちは理解してくれず、仮先生の言うがままとなっていた。

仮先生が来て、まだ半日も経ってないが、どうやら本日だけではなく一週間続けて来るらしい。

その情報が入ってきた。


「みんな遅れてごめんね。ちょっと変な先生に絡まれちゃって」


息をあげながら、優芽が生徒会室に入ってきた。


「変な先生? それってもしかして……」


夕陽は考えた。

いや、そのまさかなのだろう。

未だ知らされてない優芽はぽか~んと口を開け、意味が分からない状況だった。

そして。


「うん、普通に歩いてたんだけど、途中、変な女の先生が通り過ぎて声をかけられ、制服が乱れてる、首元に変なマークがあるとか言ってきて」


私もよく考えてみると、まぁ、制服は分かるけど首元のマークは夕陽が原因じゃないかと思った。

そう、それは恐らく。


「キスマークね! 私もいつか麻友に……」


キスマークという言葉は聞こえたが、その後が聞こえづらかった。

何?と林檎に聞いてみようと思ったその時、会長がゴホンとせきばらいした。

私は聞くのを止め、夕陽たちに注目する。


「それで、これからどうするの? このままじゃ、私の優芽が仮先生に注意されまくれいつも通りの触れ合いができなくなるじゃない」


「いや、そのほうが学校的にいいんじゃない」


と、私は言うと、夕陽は。


「放課後体育館の裏であなただけにできる特別なことをしてあげましょうか…」


「いや、結構です。さっきの言葉は撤去してください!」


「そう、それでいいのよ。それより、会長、このままではいけないと思います。何とかしないと」


「ええ、分かってるわ。まず、この生徒会室に入られたら人たまりもないわ」


「どうしてですか?」


「それは……見ての通り、大事な書類がテーブルにいっぱい置かれていてきちんと整理してないからよ。これを見たら生徒会室は注意を受けることになるわ。だから、今からここに【仮先生、追い出し作戦】を始めることにします」


会長がそういうと、歓声が起き上がった。

何だか仮先生に悪いことをしているような、そんな気もするが、とりあえずこのまま進むしか方法はなかった。

何とかして、仮先生から出て行ってもらわないと、この学園が崩壊するかもしれない。

そうなるのは嫌なので、私はこの作戦に参加することにした。

もちろん、生徒会全員で。



更新遅くてすみません。

そして、久しぶりすぎの麻友の友達、さつきも登場しました。

一言だけでしたが、頑張って登場させます。

では、ノシ。

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