第20話「作戦会議」
家に帰り、落ち着こうと思い、ベッドの上に座った。
すると一件のメールが届いていた。
メールにはこう書かれてあった。
「明日、相川麻友を誘拐することにする」
これは一体何だろう。
というか、これ私の名前――。
誘拐って、えー!?
「――明日、不安だな――」
ボソっとつぶやいて、他人事みたいに放っておくことにした。
すると、夜中、メールの着信音が鳴りっぱなしだった。
そのことは、忘れたい気分である。
翌日。
私はいつも通り、いや、警戒しながら学校へ到着した。
このことを誰かに相談したい。
そう思い、昼休み、生徒会室を訪ねた。
「こんにちは」
「いらっしゃい、小さな子猫ちゃん。ふふふふふ」
相変わらずのテンションで、近寄ってきた、夕陽。
その横で、しかる?優芽。
「こら、麻友をくどかないでって言ったでしょ。もう忘れてるの?」
「くどいかないわ。ただの遊びよ」
「もう、夕陽ったら」
いつもの空気で、私はホッとした。
いや、今日はいつもと違うのだ。
そう、あのことを相談しに来たんだ。
誰に相談しようかなと生徒会室の中を見渡したけど、やっぱり、思いつくのはあの人しかいなかった。
「あの、会長。ちょっと相談したいことがあるんですけど――」
直ぐに気にかけて、今まで作業してたのを中断した。
「何かしら?」
「実はこれなんですけど」
私は夜中に送られてきたたくさんの誘拐メールを見せた。
見せたのはいいものの、ズカズカと夕陽と優芽も入ってきて、一緒に見る形となってしまった。
「これは大変ね。このメールはいつから送られてきているの?」
「昨日の夜からです。林檎が帰ってからすぐに」
「麻友、心当たりはないのかしら?」
「それがなくて――」
会長と私は悩んだ。
「こういうのは警察に突き出したほうが早いんじゃないの?」
簡単に夕陽は言ったけど、警察までとなると、後々大変なことになるのは誰もが知っていることだ。
警察に出せば、会長だけでなく、学校全員に迷惑がかかってしまう。
そうなると、責任を取らないといけなくなるのが、会長ただ一人だ。
そうなる前に何とか解決したいのだが。
「だったら、私が守ればいいんじゃない?」
後ろで声がした。
振り返ってみてみると、そこにいたのは林檎だった。
「林檎」
「私がその犯人から麻友を守ればいい。これで解決でしょ? これでも、元スパイだったんだから、それなりに鍛えてあるから」
「そうはいっても、もし、相手が武器を持ってたらどうするの?」
「その時も私は武器を持つ。これで解決!」
何だかすごい空気になってしまったようだ。
林檎がそういうものの、会長は考えているようだった。
すると。
「ねぇ、林檎さん。私と良かったら勝負でもしてみないかしら?」
勝負!?
どうしてそんな結果になってしまうのか。
「いきなり大口叩いちゃっていいんですか、生徒会長」
林檎はもう勝った気満々でいる。
「ええ、もちろんよ。ねぇ、いいわよね? 麻友」
「うっ――ま、まぁ、いいですけど、あまり無理をしないでくださいね」
「分かってるわよ」
林檎と会長、同時に頷いた。
これからどうなるのか、生徒会室内では話題の勝負となった。
「じゃあ、問題点というか、今後の作戦を立てますね。まず、始まったのが昨日の夜でいいんだよね? 麻友」
「う、うん。昨日、学校から帰ってきて、それからこのメールだから」
林檎が会長より前に出た。
まるで、先生みたいだ。
「なるほど。麻友に心当たりがないのなら、誰か心当たりがある人はいない?」
「は、はーい、心当たりあります」
珍しく優芽が手をあげた。
「はい、どうぞ」
「ツインテールをした女の子が、私が帰る時、うろちょろしていたのを覚えています。でも、見覚えのある人でした」
「ツインテール――もしかしたら、夕陽じゃないの?」
「そうかもしれないわ――って、どうして私が出てくるのよ」
どうやら漫才が始まったらしい。
「夕陽、たまにストーカーみたいなことしてるから」
「してないわ、気のせいよ。それより、本題だけど、優芽が見たツインテールなら見覚えがあるわ。確か、麗華って言ってたわよ」
そうだ、ツインテールといえば夕陽もそうだけど、麗華さんもそうなんだ。
でも、あの人がこんなメール送ってくるか分からないし。
どうなんだろう。
「麗華、それなら、知ってる。私がスパイの時もいたから」
「とにかく、麗華さんを監視するしかないわね。純光女学院のことだから、何か企んでいるかもしれないし」
会長の言う通りだ。
とりあえず、時間に任せ、そして戦っている?会長と林檎にお世話になろうと思った。
あまり生徒会以外で話題にならないよう、みんなに説得をし、この日はこれで終了となった。
翌日からストーカー、名付けて、麗華監視作戦が行われることになった。