第2話「告白?」
今日もいつもと変わらない、生徒会長にも目もくれない普通の生活が始まるものだと思っていた。
だけど、それは昨日までの生活で、今日から変わるだなんて思ってもみなかった。
生徒会長の強引なお誘いがなければ。
今日は少し寝坊をしてしまったので、いつもより遅れて登校してきた。
まだ、LHRが始まる十分前だったので、安心して玄関に入り、自分の下駄箱を開けた。
すると、下駄箱の中に手紙が入っているのに気がつき、私はその手紙を手に持って差出人が誰なのかチェックをした。
「誰からの手紙だろう?」
下駄箱の前で誰からなのか考えていたが、私はLHRにギリギリだったことを思い出し、手紙を慌ててカバンの中に入れ走って教室に向かった。
「いけないっ!」
教室に着くと、まだLHRは始まっていなかった。
先生もいなかったので、私は無事安心して自分の席に着いた。
それから先生が来て、今日に関係する話に入る。
先生が話している最中、私はずっとあの手紙のことを考えていた。
(あの手紙、一体誰からなんだろう?あ、そう言えばまだ手紙の中身見てないや)
先生の話が終わり、自由の時間になった。
自由と言っても、十分後には一時間目が始まる。
私は、あの手紙のことが気になったので、カバンを開けて手紙を取り出す。
手紙を手に持って封も開けず見ていると、友達のさつきがやって来た。
「おはよう、麻友。あれ、その手紙どうしたの?」
さつきはやっぱり手紙に目がいったようで、手紙のことを気にした。
「うん、今日学校に来た時私の下駄箱に入ってたんだ」
「えー!それってラブレターとかじゃないの。ほら、麻友も生徒会長みたいに有名だから、きっと好きになっちゃた子がいるんだよ」
「そうかな〜」
「きっとそうだって!早く開けちゃいなよ」
「う、うん」
私はさつきに勧められながら、丁寧に手紙の封を開けた。
中を見てみると、可愛らしい紙が出てきたので、それを開けて読んでみた。
すると、二分ぐらい経ってからさつきは私にどんな内容だったかを聞いてきた。
「で、どんな内容だったの?やっぱり、『好きです』とか書いてあったの?」
「え、それはないけど・・」
「けど?いいから、言っちゃいなよ。麻友」
「今日の放課後、屋上に来て欲しいって」
屋上に来て欲しい。
つまり、それは告白なのだろうか。
私は、こういうのは初めてだったので、どうすればいいか分からなかった。
でも、答えはもう出ている。
私は女の子とは付き合う気はない。
「それって、告白だよ麻友。頑張ってね」
「頑張ってて言われても、私は女の子とは付き合う気ないよ」
「付き合う気がなくても相手の勇気を無駄にしちゃ失礼でしょ。それに、相手に自分の気持ちを伝えないとだよ、麻友」
さつきに言われて、私は行く事にした。
午前の授業も午後の授業も終わり、ついに放課後となった。
さつきは、用事があるからと言って、帰ってしまった。
私は、あまり行ったことがない屋上の入り口のドアの前に着き、勇気を出してドアを開けた。
ドアを開けると、そこには夕暮れになりかけている空と屋上からしか見ることができない風景があった。
そして、そこには手紙の差出人だと思われる人が、景色を見ながら誰かを待っているようだった。
私はその人に近づいて行った。
その人の後ろ姿は、どこかでよく見かける姿だったので、私は考えた。
さらりとした長い髪、美しい立ち姿。
私は声をかけた。
「あ、あの。この手紙をくれた人ですか?」
私が言うと、その人は振り返り姿を見せた。
その人はここにいるとは思えない人だったので、私は驚いた。
「あっ!せ、生徒会長さん」
「ええ。ごめんね、こんなところに呼び出しちゃって」
「い、いえ。大丈夫です。でも、生徒会長さんがどうして?私、生徒会長さんみたいに美しくもないですし、何でもできない普通の生徒ですよ。それに、私生徒会長さんに興味ないですので、生徒会長さんとは付き合えません」
私はてっきりその時、生徒会長が私に好きと伝えるのかと思い、私から生徒会長に言った。
私は生徒会長に興味はないと。
だけど、それは私の勘違いだった。
「確かに、私みたいに何でもできないかもしれなけど、あなたしかできないこともあるんだけどな。それに、付き合う気はないってもしかして、私が告白するとでも思ってたの?」
「え、違うんですか?」
「違うわよ、私はちょっとあなたの力が必要だったからお願いしようと思って呼んだんだけど。ごめんね、私のやり方がいけなかったのかな」
生徒会長は謝った。
「い、いえ悪いのは私のほうです。私が勝手に思ってたことなんで」
「そう、でもごめんね。それで、あなたにお願いしたいことがあるんだけど、いいかな?」
「はい」
私は生徒会長からの頼みごとを聞いた。
それは、私が生徒会の役員になってくれないかのことであった。
どうして私なのかを聞くと、生徒会長は理由を言ってくれず「ただ、あなたしかできないことなの。あなたじゃなきゃダメなの」であった。
私は生徒会長に逆らうことはできず、OKをした。
OKをすると、生徒会長はいつもと違う表情でものすごく喜んでくれた。
そんなに喜ぶほど、私が入ったことでうれしかったのか、生徒会長は「それじゃ、また明日生徒会室で」と言って行ってしまった。
私もいろいろと頭の中で今日の出来事を整理しながら、帰った。
一つだけ分かったことは、昨日までとは違う生活を送るだけであった。