第16話「話し合い」
誰もいない廊下で一人、私は、生徒会室のドアからこっそりと覗いていた。
ドアの向こうには、会長と、純光女学院の会長が話し合いをしているようだ。
(一体、何を話してるんだろう? その前に、あの純光の会長が来るなんて、珍しいな)
中に入って内容を聞けばいいことなのだが、どうも、あの会長がいると入りづらいというか、入ってはいけない気がした。
静かに中の様子を窺っていると、背後から声をかけられた。
「こんな所で何をしているのよ。通行の邪魔よ」
「うわっ、夕陽。しぃー、声が大きい」
もう、空気を読んで欲しいな。
私の後ろにいたのは、夕陽と優芽だった。
「で、ここで何をしているの?」
今度は小さい声で話しかけてきた。
二人、私と同じ大勢で、しゃがみこんでいる。
「いや、純光の会長が中にいて」
「へぇ、珍しいわね」
「でしょ。それで、何かあったのかなと思って見てるんだけど」
真剣に覗いてる中、夕陽と優芽は見ようともせず、私の背後にいる。
何だか、前も気になって、後ろも気になるんですけど。
沈黙の状態だし、何か話しかけよう。
「夕陽は……」
そう言いかけようとすると、夕陽は口を開いた。
「麻友、あなたそういうのが好きなのね」
えっ!?
「ちょっ、何を言って……」
慌てて後ろを振り向いた。
すると、夕陽がまたあの笑みで私を見ていた。
「なんてね、冗談よ。まさか、麻友が覗きの趣味だったなんてって思ってないから」
「それ本当に思ってるでしょ」
「ふふふ、さあて、どうかしら。それより、いつまでここにいるつもり。私は先に入るわよ」
「え、あ、ちょっと」
私が止める声を無視し、夕陽は中に入っていった。
「失礼します」
同じように優芽も入っていき、二人の後ろ姿をやれやれといった感じで、私も入っていった。
中に入ると、純光の会長と会長は会話を中断し、私たちを見つめている。
気まずい空気が生徒会室の中に流れた。
「それじゃ、後のことはよろしくね」
純光の会長はそう会長にいうと、私たちの間を通り出て行ってしまった。
生徒会室にはいつものメンバーが集合している。
「純光の会長と何を話していたんですか? あの会長が私たちの学校に来るなんてないから、驚きました」
「今度転校生が来るからその話をしていたの。その転校生は、純光の生徒なんだけど、いろいろな都合で私たちの学校に変更することなったわ」
会長からそう伝えられた。
元純光の生徒か、何か企んでいそうな気もするけど、大丈夫なのかな?
「でも、純光の生徒となると、何か企んでいそうな気が……」
「そうよね、私も思ったわ。でもその方が楽しいじゃない」
手を合わせて会長は微笑んだ。
楽しいって、ほんと、会長は変わった人だ。
でも考えてみれば楽しいかもしれない。
そんな気がした。
転校生が来るのはどうやら明日らしい。
どんな生活が待っているのか、私たちも想像できない。