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6-2-2.パートナー【椎名乃恵】

 見た所は高校生だ。赤鷺さんから次の任務の私のパートナーとして紹介された人物ではないのではないだろうか。

 となるとこの子は弟かしら。年齢も聞いていなかったのでよく分からない。しかし、同居人がいるとは聞いていなかったが……。


「あー、そう! こっちが江里さん! いやー、お姉さん間違えてたみたいっ」


 てへっ、とわざとらしく笑顔を向けるも、少年はあいも変わらず眠そうな顔で口を開くことなくこちらを見つめている。


「……」


「あ、あのね。えーっと、弟さんかな? お兄さんいる? 江里勘太って人に用があって来たんだけど……あー、えっと、椎名しいな乃恵のえが来たといってもらえれば分かるかな? ちょっと呼んできてもらえるかな?」


 私がそう言うと少年は、眠たそうな目で私のつま先から頭の先までを舐めるようにゆっくりと見上げた。いくら私が可愛いからって、あんまりそう言う態度を取るのは感心できないぞ、少年。すまないけど、私、年下とオッサンには興味ないのよね。

 そう思いつつも何とか笑顔を絶やさずに返事を待ちつつ少年を見ていると、相手もこちらの目を見つめ返してきた。

 見つめあう事数十秒。一つの恋心が芽生えるでもなく、ただ見つめあうだけ。一体何の時間なんだこれは。


「弟とかお兄さんとかちょっと言ってる意味が……江里勘太は俺っスけど」


「へっ?」


 私の中の妄想がどこかで音をたてて崩れていった。

 な、なに? このガキが?

 中学上がってまだ数ヶ月しか経って無いと思われる様なこんな乳臭ぇガキが、わわわわわ私のパートナー!?


「あ、ひょっとして赤鷺さんが言ってたシイナってアンタ……扱いが簡単でちょっと間が抜けてるって……」


「あぁ!?」


 何か今、聞き捨てならない台詞が耳にはいってきた気がする。

 色々な感情が入り交ざり、作っていた表情も崩れてしまった。


「あっ、いや」


 そこまで言うと、江里がハッとした顔で口を噤む。まるで口止めされていた事をうっかり言ってしまったような仕草。いや、まるでじゃない。恐らくそうなのだろう。


「ま、間抜け……!?」


「い、いや、キリッとした月紅石いしの能力だけはピカイチの、仕事の出来そうなお姉さんが来るからその人から仕事の内容をしっかり聞くようにと……!」


 私の顔を見て明らかに動揺している。今そんなに怖い顔をしているのだろうか。自分では分からない。だが、先ほどから募っていたイライラもあり、それが顔に出てしまっているのはあるかもしれない。


「間抜けって言ったわよね! 今確かに! そ、それに能力()()!?」


 しまったと言わんばかりに一歩後ずさる江里。

 きっとコイツは思っている事を口に出さずにはいられないタイプなのだ。私があまり好ましく思わないタイプのランキング上位に入る。


「いや、俺は初対面っスからそれは現時点では分からない訳で、赤鷺さ……い、いや、上の人が……」


「がぁ~~~~~っ!」


 なんと言う事だ、信頼していた赤鷺さんが私の事をそう言う風に思っていただなんて!

 ショック、かなりショック。大学で必須授業の単位落としそうになって嫌いな教授に頼み込みに行かなければ行けなくなったときくらいショック! しとめたと思って勝ち誇ってかっこつけてたらしとめ切れてなかった屍霊に膝カックンされて転ばされた時くらいショック!


「と、とりあえず、ここじゃ何なんで……部屋、入ります?」


 魂が抜けたように天を見上げてポカンと口を開ける私に対して、何処となく哀れむ視線が投げかけられる。

 少年よ、そんな目で私を見るな。

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