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SS・RT企画・1 シルバー誕生

200RT記念SSです。


現在、ツイッターでRT企画中です。

出涸らし皇子公式アカウントの固定ツイートをRTしてください。

200RTごとにSSを公開します(・ω・)ノ


期間は一週間。

最大五個用意していますので、RTよろしくお願いしますm(__)m

 三年前。

 皇太子が亡くなり、混乱する帝国は失意のどん底にあった。

 治安は悪化し、帝都ですら危険な街と化した。

 何とかすべき帝国の上層部も混乱から抜け出せずにいた。

 皇太子に忠誠を尽くし、あとを追うように自害する者、夢の終わりに絶望し、国を離れる者。

 多くの権力を委譲されていた皇太子は、実質的に皇帝の半身といえた。

 その皇太子の側近たちが一気にいなくなったのだ。

 皇帝と宰相は必死に立て直しを図ったが、人材はすぐには発掘できない。

 混乱は長く続いた。

 そんな中、帝国に長く居座る古竜の活動が確認された。

 畳みかけるような凶報。

 今の帝国には古竜を相手にする余裕がなかった。

 そのため、古竜への対策は冒険者ギルドへ委託されたのだった。


「帝国は大変だな」


 責任者兼現場指揮を任されたのは副ギルド長のクライドだった。

 現役を引退したクライドが前線に出るのは珍しいことだった。それだけクライドが手柄を求めていたということだ。

 S級冒険者として活躍したクライドは、現役を引退したあとにギルド本部に入った。

 ギルドを変えるためだ。

 手柄をあげ続け、副ギルド長まで上り詰めた。だが、実権はギルド長の手にある。

 それを奪うには手柄が必要だった。


「情報を確認しておく」


 冒険者ギルドの本部。

 そこにはクライド率いる討伐隊がいた。

 S級二名、AAA級三名の討伐隊だ。


「討伐対象の名はファフニール。漆黒の古竜だ。幾度も帝国の討伐対象になりながら、しぶとく生き残っている。厄介なのはその知能。知恵を持つ古竜だ」


 古竜というのは単体としては大陸最強といってもいい。よほどのことがないかぎり、人間では勝ち目がない。

 そんな古竜が知恵を使って、戦う。この場に集められた冒険者たちは、すぐに危険性を認識した。


「一番大切なのは確実に討伐することだ。奴は逃げ上手。不利になれば飛んで逃げてしまう。そのため、今回はAAA級の魔導師、三名による結界で閉じ込める」


 その間にS級二名によって討伐。それが作戦だった。

 ファフニールは活動期に入ったばかり。まだ動きが鈍いはず。

 そこを突く。

 そういう作戦だった。

 できればSS級が欲しかった。

 それがクライドの本音だった。

 だが、混乱期にある帝国にSS級冒険者を派遣することにギルド本部は乗り気ではなかった。

 混乱に拍車を掛けかねないからだ。

 言いたいことはわかる。だが、古竜を放置しても同じこと。

 ゆえにクライドは動かせる戦力だけで討伐隊を編成した。


「民のために――俺たちはここで古竜を討伐する。行くぞ!」


 こうして、討伐隊がギルド本部を発ったのだった。




■■■




「くそっ!」


 竜の咆哮を浴びながら、クライドは悪態をついた。

 山で眠っていたファフニールは、高ランクの魔導師三名による結界をものともせず、山で暴れ回っている。

 ファフニールはとうの昔に活動期を迎えていた。

 それを隠し、休眠明けと思わせていたのだ。

 討伐にきた者たちを返り討ちにするために。


「やはり圧倒的な力が必要だったか……!」


 知恵ある古竜に小細工は通じない。

 力で叩き潰す以外に討伐法はなかった。

 S級二名は奮闘しているが、結界が役立たずでは空に逃げられてしまう。

 空から攻撃されては、決定打は与えられない。

 このまま留まれば空からの攻撃で全滅しかねない。

 だが、ここで撤退すれば帝国の混乱はさらに深まってしまう。


「なんて様だ……!」


 民のために。

 その合言葉のために全力を尽くすのが冒険者だ。

 最大戦力を出し渋った結果、民を苦しめることになったのでは、冒険者がいる意味はなんなのか。

 そんなクライドの視界に、空へ羽ばたくファフニールの姿が見えた。


「……撤退!」


 すぐにクライドは決断した。

 全滅は絶対に避けなければいけない。

 苦渋の決断だった。

 しかし。


「副ギルド長! ファフニールが!」


 空に飛んだ漆黒の古竜だったが、体に巻き付いた鎖によって上空に逃げることができなくなっていた。


「なんだ!? あの鎖は!?」

「わかりません……おそらく魔法だとしか……」


 AAA級冒険者の一人が茫然としながら呟く。

 鎖はファフニールをそのまま山まで引きずり落としてしまった。

 こんな魔法は見たことがなかった。

 何が起こっているのか?

 クライドの疑問に答えるように後ろから声が聞こえてきた。


「礼儀として聞いておこう。あの古竜を討伐しても構わないな?」

「お前は……何者だ……?」


 振り返ると銀色の仮面をかぶった魔導師らしき男がいた。

 クライドの問いに対して、男は冷たく言い放った。


「その質問が大事か? 撤退するのだろう? ならば、俺が討伐しても構わんな?」

「……構わん。やってくれ」

「承知した。山の冒険者は邪魔だから置いておくぞ」


 そう言って男は黒い穴を開く。

 そこから二人のS級冒険者が飛び出てきた。


「なっ!?」

「任せた以上、邪魔はしないでもらおう」


 言いながら男はゆっくりと空へ上っていく。

 その両手には銀色の光が集まっていた。


≪我は銀の理を知る者・我は真なる銀に選ばれし者≫


≪銀星は星海より来たりて・大地を照らし天を慄かせる≫


≪其の銀の輝きは神の真理・其の銀の煌きは天の加護≫


≪刹那の銀閃・無窮なる銀輝≫


≪銀光よ我が手に宿れ・不遜なる者を滅さんがために――シルヴァリー・レイ≫


 複数の光球が出現し、その照準をファフニールに合わせた。

 危険性を察知したファフニールは渾身の力でブレスを地面に放ち、山を吹き飛ばす。その衝撃で一時的に鎖から解放される。

 そして逃げることは不可能と察したのか、ブレスを溜めて撃ち合う覚悟を見せた。

 刹那の後。

 ファフニールのブレスと銀光が同時に発射されて、ぶつかり合う。

 だが、ぶつかり合いは一瞬。

 一点に集中させられた銀光はファフニールのブレスを打ち破って、ファフニールを飲み込んだのだった。

 ファフニールはわずかな残骸を残し、この世から消滅してしまう。


「なんだ……? 今の魔法は……?」


 AAA級冒険者の一人が戦慄しながら呟く。

 それに空から降りてきた男は答えた。


「銀滅魔法だ」

「そんな魔法……存在しないはず……」

「存在していた。かつては、な」


 その言い方でクライドは納得した。

 古竜すら簡単に討伐してしまう魔法。

 考えられるのは一つしかなかった。


「古代魔法か……」

「いかにも。俺は古代魔法を扱う」

「……使い手が存在したのか。しかも帝国とはな。皮肉なものだ」

「狂帝と一緒にするな。俺は魔法に溺れたりはしない」

「なるほど……それで? わざわざここに現れたのは何が目的だ?」


 クライドの質問に男は笑う。

 実際に笑ったところを見たわけではない。

 しかし、クライドは確かに男の笑みを感じた。

 そして。


「訳あって冒険者になろうと思ってな。あれは手土産だ。残骸くらい残っているだろう」

「そういうことか……いいだろう。俺は副ギルド長のクライドだ。俺の権限によってお前を冒険者ギルドに加えてやる。だが、お前のような規格外はランクを選べん」

「ほう?」

「人類の規格外が与えられるランクはただ一つ。SS級のみだ」

「ほう? 古竜のみでSS級になれるのか。もう少し手柄が必要だと思っていた」


 偉ぶるでもなく、淡々と男は告げた。

 本当にそう思っていたのだ。

 それを感じてクライドは頬を引きつらせる。

 人類の規格外、そして冒険者ギルドの問題児がまた一人増えることになると察したからだ。

 だが、同時に戦力でもある。


「近場の冒険者支部に行くぞ。討伐報告をしなければいけないしな。もちろん本部と連絡を取って、すぐにSS級冒険者に任命しよう」

「感謝する」

「だが、名無しでは困る。何か名前はないのか?」

「なんでもいい。好きにしろ」

「なら、お前はシルバーだ。銀の仮面に銀の魔法を使う。ぴったりだろ?」

「――悪くない」


 こうして混乱する帝国にSS級冒険者という希望が生まれたのだった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] ≫「ほう?」 ≫「人類の規格外が与えられるランクはただ一つ。SS級のみだ」 ≫「ほう? 古竜のみでSS級になれるのか。もう少し手柄が必要だと思っていた」 【ほう?】が連続続いてる点。…
[気になる点] 時系列はこれでいいのかな? 本編のスタートが皇太子の死後、3年後 シルバーがSS冒険者になったのも3年後 クロエが弟子になったのが本編の2年前 書籍版では見直して欲しいです。
[一言] >冒険者ギルドの問題児がまた一人増えることになる SS級冒険者への認識って…… まあ、分かりますけどw
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