SS・PV公開記念
出涸らし皇子のPVが公開されました!
活動報告にリンクを張っているのでぜひ見てください!
アルとフィーネに声がつきましたよ!!( *´艸`)
五年前。
皇太子がまだ健在だった頃。
帝国東部の国境が皇国に脅かされる事件が起きた。
皇帝は主要な皇族を玉座の間に呼び寄せ、対策を練ることを決めた。
「また皇国か。しつこい国だ」
「兄上。やはり私が国境守備につくべきかと」
帝剣城にて皇太子ヴィルヘルムと第一皇女リーゼロッテが歩いていた。
目下、最大の脅威である皇国への備えとして、リーゼを東部国境守備に専念させるという案が出ていた。
しかし、東部国境守備につけば帝都にあまり帰っては来れない。
「クリスタはどうする?」
「ミツバ殿が見てくれています。それにアルとレオもいます」
「信頼しているのだな」
「はい。安心して妹を任せられます」
そんな話をしながら二人は玉座の間に向かう階段を上っていく。
しかし、二人を呼び止める声があった。
第三皇子ゴードンだった。
「ヴィルヘルム兄上! 皇国がまた動いたと聞いた! 今回は俺に出陣させてほしい!」
「ゴードン……まだ戦と決まったわけではないぞ?」
「そんなことを言って、またリーゼロッテを贔屓するのではないか? 俺は何度も頼んでいる。今回は譲らん」
「贔屓ではなく実力だ」
どうやってゴードンを宥めようかとヴィルヘルムが頭を悩ませていると、ヴィルヘルムの横でリーゼが当然のように告げた。
それを聞いたゴードンは頬を引きつらせる。
「それはどう言う意味だ? リーゼロッテ」
「そのままだが?」
「たまたま戦地に恵まれただけなのに調子に乗るな! 俺は国のためを思い、帝都に留まる機会が多いのだ!」
「そうだぞ、リーゼロッテ。ゴードンが中央にいるからお前は好きに動けるのだ」
「すみません。では、今回も私が出陣ということで」
「なぜそうなる!? 今回は譲らんと言ったはずだ!」
「ほう? では共に出陣するか? そんなことをすれば言い訳ができなくなるぞ?」
「面白い! お前は右翼、俺は左翼でどうだ!?」
「受けて立つ」
「何度言ったらわかる……戦になるとは決まっていない……」
呆れた様子でヴィルヘルムはため息を吐く。
皇族を代表する二人の将軍。どちらも戦功を競って、事あるごとに張り合う。
そのたびに仲介するのはヴィルヘルムの役割だ。
またかと思っていると、今回は違うというのを知らされた。
「ヴィルヘルムお兄様! 出陣の話をしているなら私にもチャンスを!」
割って入ったのは第二皇女ザンドラ。
二人のように将軍というわけではないが、皇族が出陣するというのは士気が上がる。
「ザンドラまで……」
「前線で起きているのは小競り合いだとか。二人が行くと大事になります。私で手を打つのが賢明だと思います。しかも相手は魔導大国の皇国。私が適任だわ」
「むっ……聞き捨てならんな。ザンドラ」
「そのままよ。二人が出たら即座に大戦になるに決まってるわ。血の気が多いもの」
「私をゴードンと一緒にするな!」
「どういう意味だ!? 俺はそこまで血の気は多くない!」
「真っ先に突っ込む癖に何言ってるのよ?」
「それしかできんのだ!」
言い合いをする三人にヴィルヘルムは首を横に振る。
このままでは皇帝の前でも言い合いをしかねない。
どうしたものかと思っていると、援軍が現れた。
「言い合いはそこまでにしろ。父上がお待ちだぞ」
あとから現れたのは第二皇子エリクだった。
手にはいくつもの資料が握られていた。
「エリク、その資料は?」
「現地の情報だ。地形、周りの村々。考えることはいくらでもあるのでな」
「用意がいいな?」
「出陣したいと言う弟妹が多いだろうと思ってな」
「戦を避けるという案はないのか……?」
「父上が舐められたままで終わるわけがない。小さな攻撃を許せば、そのうち大きな攻撃がやってくる。やるべき反撃はしたほうがいい」
「やれやれ……」
「それとトラウゴットは欠席だそうだ」
「トラウはそれでいい。トラウまで出陣したいと言い出したら頭がおかしくなってしまう」
そう苦笑しながらヴィルヘルムは階段を上り切る。
そして後ろに弟妹を引き連れて玉座の間の扉を開けたのだ。
「父上、お呼びに応じて参上いたしました」
「よく来た。我が子たち」
そう言って皇帝が子供たちを迎えた。
その後、皇太子ヴィルヘルムを総大将とし、第一皇女リーゼロッテ、第三皇子ゴードンが副将とした軍が帝都を発ったことを受け、皇国はあまりの本気度にすぐさま撤退したのだった。
そして皇国に備えて第一皇女リーゼロッテが東部国境の守備についたのだった。