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千人記念SS
エゴールとアルとレオ
深夜の帝剣城。
子供のアルとレオは騒がしい城内に気づき、目を覚ました。
「なんだろう?」
「珍しいな……」
若干寝ぼけつつ、明らかに様子が変なため、アルはベッドから出て服を着替えた。
普段ならこのまま寝ているところだが、どうにも気になったのだ。
そんなアルにレオも続く。
二人が部屋を出ると、近衛騎士が忙しそうに走り回っていた。
「いきなり来るなんて聞いてないぞ!?」
「とにかく警備を固めろ!」
どうやら誰か来たらしい。
近衛騎士たちが慌てるような誰かが。
「来客みたいだね」
「招いたわけではなさそうだけどな」
招かれてもいないのに、帝国の中枢ともいえる帝剣城に来られる者はそうはいない。
よほどの大物ということだ。
興味が出てきたアルは、レオと共に忙しそうに駆け回っている近衛騎士の目をかいくぐり、城の上層へと向かう。
深夜なため、そもそも城の警備についている近衛騎士は少ない。
ただ、そのうち増員されるだろう。
叩き起こされた近衛騎士たちが加わるからだ。
見つかれば部屋で寝ていろと言われてしまうため、アルとレオは慎重に進んでいく。
目的地は城の最上階である玉座の間。
来客の場合は、まずここに来るはず。
そんな考えがあっての行動だったが、それは間違っていなかった。
たしかに来客は玉座の間に向かっていた。
ただし。
玉座の間には入っていなかったが。
「どんな人かな?」
「王国か皇国の要人じゃないか? それか」
「それか?」
「SS級冒険者とかだな」
「なかなか聡い子じゃのぉ」
突然、声が後ろから聞こえてきた。
アルとレオは目を見開き、後ろを振り向く。
そこにはドワーフの老人がたっていた。
ボロボロの服に小汚い杖。とても帝剣城にふさわしい人物には見えなかった。
ただ、それでも二人は感じ取っていた。
この老人がただ者ではないということを。
二人が感じ取ったというよりは、アードラーの血が感じ取ったというべきか。
「怖がらなくてもよい。お主らの父に用があるだけじゃ」
そう言って老人は二人の頭を軽くなでると、笑みを浮かべながら歩き始めた。
目指す先は玉座の間。
本来なら皇帝が待っているため、緊張するはずの場所だが、老人はそういうものとは無縁だった。
そんな老人にアルは問いかける。
「あなたは……?」
「名乗るほどのものではない。儂が来たせいで、騒がしくしてしまったようじゃな。もう夜も遅い。帰って寝なさい、二人とも」
「気になって眠れません」
「面白い子じゃな。では、まず自分たちから名乗ったらどうじゃ?」
「……アルノルト・レークス・アードラー」
「レオナルト・レークス・アードラーです」
「アルノルトとレオナルトか。双子の皇子がいるとは聞いておったが、思った以上に似ておるのぉ」
愉快愉快とばかりに老人は笑う。
そして老人が自分の名を答えようとしたとき。
近衛騎士が割り込んできた。
「こちらでしたか! 突然いなくなるので、肝を冷やしました! さぁ、こちらへ。陛下がお待ちです!」
「おやおや、タイミングが悪いのぉ。では儂の自己紹介はまた今度じゃな」
「そんな!」
「こういうのはタイミングじゃ。それに気になるなら調べてみるのも一興じゃぞ? ヒントを与えるなら、アルノルト皇子。予想は間違ってはいない、と言っておこうかのぉ」
そう言って老人は笑いながら玉座の間に向かう。
後日、アルとレオは老人のことを調べて、答えを得た。
老人がSS級冒険者。
〝迷子の剣聖〟エゴールだという答えを。