表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/17

記念SS・ザンドラとアルノルト

タンバ、ユーチューブ始めました。その記念にSS書きましたーm(__)m


 アルノルトがまだ五歳のころ。

 皇帝ヨハネスによる大規模な狩りが行われていた。

 幼い子どもたちもそれに付き従い、狩りの雰囲気を楽しんでいた。

 そんな中、アルノルトは森の中へ逃げ込む狐を見て、一人で追いかけてしまっていた。


「しまった……迷った……」


 夢中で追っていたせいか、帰り道がわからなくなった。

 泣いたりせず、やってしまったと思うあたり、普通の子供ではないが、それでも所詮は子供。

 ここから戻れるわけではない。

 誰かお付きの者が探しに来るのを待つしかない。

 そう諦めて、アルノルトがその場に座り込んだとき。

 後ろからすっと手が差し出された。


「……ザンドラ姉上……?」

「まったく、しょうがないわね。何も考えずに森の中に入るなんて……」


 そこにいたのは呆れた様子のザンドラだった。

 アルノルトより幾分か年上とはいえ、ザンドラもまだ子供といえる年齢だ。

 それでも姉として、弟を追ってきたし、自分も迷うほど愚かでもなかった。


「ほら、手を出しなさい。帰るわよ」

「帰り道わかるの? 姉上」

「私はあんたとは違うわよ。魔法でちゃんと来た道を示してきたわ」


 自信満々に告げながら、ザンドラは残してきた光球を見せる。

 たしかに小さな光球がいくつも浮いていた。

 魔法が得意なザンドラならではの手法だった。

 しかし。


「わざわざ姉上が来なくても、騎士に頼めばよかったのでは?」

「私が来たのが不満みたいな言い方はやめなさい。素直にありがとうございます、姉上っていうのよ。こういうときは」

「……ありがとうございます。姉上」

「よろしい」


 可愛げのない弟の感謝を聞き、満足したザンドラはアルノルトの手を引きながら帰路につく。

 だが、森の中は一大狩猟場だ。

 子供は獣と大きさが似ている。

 勘違いした騎士の一団が、馬に乗ったまま二人のほうへ向かってくる。

 獣だと思って追い立てようとしているのだ。

 だが。


「無礼者!! 誰に弓を向けていると思っているの!?」

「ざ、ザンドラ皇女殿下!? それにアルノルト皇子殿下!? も、申し訳ありません!!」


 弓を向けてきた騎士たちに対して、ザンドラが一喝する。

 よもや皇女と皇子が森の中にいるとは思いもしていなかった騎士たちは、驚きながら馬を下りて頭を下げる。

 それを見ていたアルノルトがぽつりとつぶやく。


「怖いよ、ザンドラ姉上」

「誰のせいだと思っているのよ!? 誰のせいだと!」

「痛い……俺のせいです」

「わかればよろしい」


 頬をつねられたアルノルトは、素直に自分の非を認める。

 そんなアルノルトの手を再度握りなおし、ザンドラは歩き始める。


「ちょうどいいから護衛してちょうだい。あと、このことは内密よ? 父上に話したら承知しないんだから」

「は、はぁ……」

「黙ってるのは難しいんじゃ……」

「黙っててもらわないとあんたが怒られるでしょ!? あんだけ、森の中に入っちゃ駄目って言われたのに……」

「姉上も入ってますよね?」

「誰のせいかしら?」

「俺のせいです」

「じゃあ口を閉じなさい」


 ことごとく口答えする弟に呆れながら、ザンドラはアルノルトを引っ張り続ける。

 そして思い出したようにアルノルトに訊ねた。


「そうだ。怪我はない? アルノルト」

「はい、ありません」

「ならいいわ」


 軽く微笑み、ザンドラはアルノルトの手を強く握り直す。

 結局、その後、皇帝ヨハネスにバレることになり、二人一緒に怒られることとなるのだが。

 その時もザンドラの手はアルノルトの手を握っていたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 良いお姉ちゃんすぎる
[良い点] アルが一番懐いていたのは、ザンドラだったりして。 それはそれでイイなあ。
[一言] (*´’Д’):;*:;カハッ 尊い…(◜¬◝ )
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ