表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

転機


 電話は実家からのもので、祖母が癌で長くないらしいとのことだった。


 「三輪さん、今日もスキヤキか?」

 「うん。お好み焼きね」


 例によってキャベツだけが入ったお好み焼きを、フライパンで焼く。(こう)さんは、ガサゴソと紙袋を出した。


 「これ、モンゴルのチーズ。三輪さんにあげるよ」

 「おお、ありがとう」


 紙袋を受けとる。


 「けっこう硬いんだね」

 「そう。それに甘いよ」

 「そりゃ、有り難い」


 カネの無い独り暮らしで甘いものは贅沢品だ。小麦粉、野菜、調味料、本、米あたりの優先度が高いため滅多に買わない。本?精神が死なないために必要です。


 「ところで三輪さん、実は引っ越すことにしたんだ。安いところがあってね」

 「そうなんだ」

 「三輪さんもどう?」


 この下宿屋も、一月二万はいかないからまあまあ安いが……。


 「あー、ばあ様が病気でね。6月ぐらいにこの街を出て地元に戻ろうと思っているよ。何度も引っ越すのは大変だから、せっかくだけどやめておくよ」

 「そうか。寂しいね」


 フライパンのままお好み焼きを部屋に運び、食器を出すのが面倒だったのでそのままソースとマヨネーズをかけた。モシャモシャと食べていると、電話がまた鳴った。

 一日に複数回電話があるなんて珍しい、そう思いながら受話器を手に取った。


 「あ、もしもし。三輪くん?」

 「お、晴子さん」

 「卒業式の日は仕事が入っちゃって行けなかったよ」

 「ああ、そうだったんだね」

 「三輪くんは、何かあった?」

 「うん。6月ぐらいに地元に戻ろうかと思ってる」


 少し、間があいた。


 「……じゃあ、その前に飲みに行こうよ」


 また、会話に間があいた。


 「……うん。いいね。じゃあ5月の終わり頃でどうだろうか」

 「わかった。5月末の土曜日はどうかな?」

 「了解。また」

 「またね」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ